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EU AI法、8月2日から「AIと対話中です」表示が義務化 ― 違反は売上3%の罰金

EU AI法のArticle 50透明性条項が2026年8月2日に施行される。チャットボットやディープフェイクにAI表示を義務付け、違反した企業には最大1,500万ユーロまたは全世界売上の3%の罰金が科される。

EU AI法、8月2日から「AIと対話中です」表示が義務化 ― 違反は売上3%の罰金
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目次

3行まとめ

  1. EU AI法Article 50の透明性条項が2026年8月2日に施行され、チャットボットは「AIと対話中」であることをユーザーに開示する義務を負う
  2. ディープフェイクコンテンツにはAI生成である旨の表示が必要になり、生成AIの出力には機械可読マークの付与も求められる
  3. 違反した場合、最大1,500万ユーロまたは全世界年間売上の3%の罰金が科される

EU AI法が定めた透明性義務の中身

EU AI法(Regulation (EU) 2024/1689)のArticle 50「透明性義務」条項が、2026年8月2日に施行される。EU AI法の公式条文によると、以下の義務が発生する。

チャットボット:AIシステムと対話していることをユーザーに開示しなければならない。ただし、「合理的に情報を得た注意深い一般人」にとってAIであることが明らかな場合は例外とされる。

ディープフェイク:AI生成または操作された画像・音声・動画コンテンツには、その旨を明示する表示が必要になる。ビデオ会議の参加者全員をディープフェイクで偽装し2,560万ドルを詐取した英Arupの事件のような手口が、この義務が想定する被害の典型例にあたる。

生成AIの出力全般:機械可読の形式でAI生成であることを示すマークの付与が求められる。

罰則についてはArticle 99に規定されている。透明性義務の違反に対しては最大1,500万ユーロまたは全世界年間売上の3%(いずれか高い方)の罰金が科される。禁止されたAIプラクティス(社会スコアリング等)への違反はさらに重く、**最大3,500万ユーロまたは売上の7%**となる。

中小企業に対しては比例性の配慮があり、固定額と売上比率の低い方が適用される。

Decode the Futureの報道によると、AI法の実施を支えるCode of Practice(行動規範)の最終版は2026年6月中の公表が見込まれている。

義務を負うのはprovider(提供者)かdeployer(利用者)か

以下は2026年8月14日にEUR-Lexで公式条文(Regulation (EU) 2024/1689、2026年7月27日時点の統合版)を読んで確認した内容である。Article 50は6項+手続き規定1項で構成されており、項ごとに義務を負う主体が違う

条文の定義(Article 3)では、provider(提供者)は「AIシステムまたは汎用AIモデルを開発し、あるいは開発させたうえで、自らの名称または商標のもとで市場に出す、または提供を開始する自然人・法人・公的機関等(有償無償を問わない)」、deployer(利用者)は「自らの権限のもとでAIシステムを使用する自然人・法人・公的機関等」を指す。ただしdeployerの定義には「個人的な非職業的活動の中でAIシステムを使う場合を除く」という除外が入っている。個人が私的にAI画像を作る行為は、Article 50(4)のdeployer義務の対象から外れる。

義務主体 対象 条文に書かれた例外
50(1) provider 自然人と直接やり取りすることを意図したAIシステム 「合理的に情報を得ており、注意深く、思慮深い自然人」から見て明らかな場合/犯罪の探知・防止・捜査・訴追を法律で認められたシステム(ただし一般人が犯罪を通報できる形で公開されている場合は除く)
50(2) provider 合成音声・画像・動画・テキストを生成するAIシステム(汎用AIシステムを含む) 標準的な編集の補助機能にとどまる場合/deployerが与えた入力データやその意味を実質的に改変しない場合/法執行目的で法律に認められた場合
50(3) deployer 感情推定システム、生体分類システム 犯罪の探知・防止・捜査を法律で認められた場合(第三者の権利・自由の保護措置が前提)
50(4) deployer ディープフェイク(AIが生成・改変した画像・音声・動画)/公共の関心事について公衆に情報提供する目的で公開されるAI生成テキスト 後述

チャットボットの「AIです」表示(50(1))と機械可読マーキング(50(2))はprovider側、ディープフェイクの表示(50(4))はdeployer側に置かれている。

開示のタイミングは「最初のインタラクションまたは曝露の時点」

Article 50(5)は、1項から4項の情報について「遅くとも最初のインタラクションまたは曝露の時点で(at the latest at the time of the first interaction or exposure)、明確かつ判別可能な方法で」当該自然人に提供しなければならないと定めている。加えて、適用されるアクセシビリティ要件に適合することも同項に書かれている。

条文は開示の「場所」までは指定していないが、タイミングは限定されている。

機械可読マーキングには「技術的に実行可能な範囲で」が付く

Article 50(2)は、生成AIの出力に機械可読形式のマークを付け、人工的に生成・改変されたものとして検出可能にすることをproviderに求めている。ただし同項は続けて、その技術的解決策が「効果的・相互運用可能・堅牢・信頼できるものであることを、技術的に実行可能な範囲で(as far as this is technically feasible)確保する」と書いている。判断材料として条文が挙げているのは、コンテンツ種別ごとの特性と限界、実装コスト、および関連技術標準に反映されうる一般に認められた技術水準の3つである。

さらに2026年7月の改正(後述)でArticle 111に第4項が新設され、2026年8月2日より前に市場に出されていた生成AIシステムのproviderは、Article 50(2)への対応を2026年12月2日までに行えばよいとされた。改正規則の前文はこれを「4か月の移行期間」と説明している。移行期間が付いたのは50(2)だけで、50(1)・50(3)・50(4)・50(5)には同様の規定がない。

芸術・風刺作品と、編集責任下のテキストは扱いが違う

Article 50(4)第1段落は、ディープフェイクを公開するdeployerに開示義務を課したうえで、「そのコンテンツが明らかに芸術的・創作的・風刺的・フィクション的またはこれに類する作品・番組の一部を構成する場合、本項の透明性義務は、そうした生成・改変コンテンツが存在することを、作品の表示や鑑賞を妨げない適切な方法で開示することに限定される」と書いている。表示義務が消えるのではなく、開示の方法が緩む形になっている。

同項第2段落はAI生成テキストについて、「AI生成コンテンツが人間によるレビューまたは編集上のコントロールを経ており、かつ自然人または法人がその公開について編集責任を負う場合」には義務が適用されないとしている。当サイトが内容を確認して責任を持つ媒体と、無審査で自動公開する運用とで、条文上の扱いが分かれる。

Article 99の罰金は3階層に分かれている

罰金の上限は違反した条文によって変わる。2026年7月27日時点の統合版Article 99で確認した内容は以下のとおり。いずれも固定額と売上比率の高い方が上限になる。

違反した条文 上限(高い方を適用) 根拠
Article 5の禁止されたAIプラクティス 3,500万ユーロ または 全世界年間売上の7% 99(3)
Article 16(provider義務)、22条、23条、24条、25条(2)(4)、26条(deployer義務)、認証機関の義務、およびArticle 50の透明性義務 1,500万ユーロ または 全世界年間売上の3% 99(4)
認証機関・所管当局への不正確・不完全・誤解を招く情報の提供 750万ユーロ または 全世界年間売上の1% 99(5)

Article 99(6)により、SME(スタートアップを含む中小企業)については上記の額と比率の低い方が上限になる。2026年7月の改正で99(6a)が新設され、SMC(small mid-cap enterprise、中堅企業)についても99(4)と99(5)の罰金に同じ「低い方」ルールが適用されるようになった。

2026年7月の改正で、8月2日の施行日は動いたのか

動いていない(2026年8月14日確認)。ただし、AI法自体は2026年7月に改正されている。

EUR-Lexで確認したところ、Regulation (EU) 2026/1744(2026年7月8日付、官報掲載2026年7月24日、通称「Digital Omnibus on AI」)がAI法を改正し、公布の3日後にあたる2026年7月27日に発効している。欧州委員会の説明では、この提案は2025年11月19日に採択され、2026年5月7日に政治合意に達した。

EUR-Lexの改正一覧で照合した結果は次のとおり。

  • Article 113の本文「本規則は2026年8月2日から適用する」は変更されていない
  • Article 50の第1項から第6項も変更されていない。改正されたのは第7項(行動規範の手続き規定。実施法令で行動規範を承認する権限が委員会から外れた)のみ
  • 一方で、高リスクAIに関するChapter IIIの適用日は後ろにずれた

Article 113が定める適用日程は、改正後は以下のようになっている。

適用開始日 適用される部分 根拠
2025年2月2日 Chapter I・II(総則、AIリテラシー、Article 5の禁止プラクティス) 113(a)
2025年8月2日 Chapter III第4節、Chapter V(汎用AIモデル)、Chapter VII、Chapter XII(罰則。Article 101を除く)、Article 78 113(b)
2026年7月27日 Article 102〜110(他のEU法令を改正する条項) 113(d)(新設)
2026年8月2日 上記以外の規則全体。Article 50を含むChapter IV(透明性義務)はここに入る 113本文
2026年12月2日 Article 5(1)(ba)(bb)および5(1a)(1b)(同意なき性的画像の生成、および児童性的虐待素材に関する新設の禁止) 113(a)(改正後)
2027年12月2日 Chapter III第1〜3節(Article 6(5)を除く)のうち、Annex IIIに基づく高リスクAIシステム 113(c)(i)(改正後)
2028年8月2日 Chapter III第1〜3節(同上)のうち、Annex Iの製品に組み込まれる高リスクAIシステム 113(c)(ii)(改正後)

欧州委員会のAI法解説ページも、高リスクAIの適用日について「Annex IIIの分野は2027年12月2日から、リフトや玩具などの製品に組み込まれるものは2028年8月2日から」と書いている(2026年8月14日確認)。

誰が取り締まるのか

欧州委員会のプレスリリース(IP/26/1714、2026年7月31日、ブリュッセル)によると、2026年8月2日から欧州委員会のAI Officeと各国当局がAI法の執行を開始した。透明性義務と禁止プラクティスの執行主体は3つに分かれる。

  • AI Office:基盤となる汎用AIモデルと同じproviderが提供するAIシステム、およびデジタルサービス法(DSA)で指定された超大規模オンラインプラットフォーム・超大規模検索エンジンに組み込まれたシステム
  • 各国の所管当局:それ以外のAIシステム
  • 欧州データ保護監察官(EDPS):EUの機関・団体・部局が使うAIシステム

同プレスリリースは「実効的な執行は、加盟国が所管当局を適切に指定し、十分な資源を割り当てるかどうかにも依存する」とも書いている。

行動規範とガイドラインは公表されたのか

  • 2026年7月20日、欧州委員会は「Guidelines on transparency obligations for providers and deployers of certain AI systems」(Article 50の透明性義務に関するガイドライン)を公表した。委員会の説明では、provider・deployerの切り分け、直接対話型AIシステムやディープフェイクの定義、標準的な編集などの適用除外の具体例を扱っている
  • 「Code of Practice on Transparency of AI-generated Content」(AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範)は、AI Officeが進行役を務めるマルチステークホルダープロセスで独立専門家が起草した。Article 50(2)(4)(5)への準拠を支援する任意のツールで、欧州委員会とAI Boardが適切な任意ツールであると確認したと委員会は書いている。署名者は行動規範の措置をもって準拠を説明でき、署名しない事業者は同等に適切な代替手段であることを各国の市場監視当局が個別に審査する
  • 署名数について、委員会の数字は2つある。7月31日のプレスリリースは「180を超える組織」の第一次リストを公表したと書き、行動規範の解説ページは「2026年7月末時点で約190の企業・組織が署名した」と書いている(いずれも2026年8月14日確認)。本記事ではどちらが正しいか判断できないため、両方を併記する

日本のAI推進法とEU規制の違いでは、日本のAI規制が罰則を置かない方向に振れており、EUの罰則型と対照的な設計になっている点を扱った。このAI推進法を法的根拠の一つとして、デジタル庁は中央省庁18万人を対象にした政府向け生成AI基盤「Gennai」の展開を進めている。

施行後にまだ確認できていないこと

  • EU加盟27カ国の執行体制はまだ整備途上であり、8月2日に施行されてもすぐに積極的な取り締まりが始まるかは未知数
  • 「合理的に情報を得た注意深い一般人」にとって明らかかどうかという例外基準は主観的であり、解釈の幅が大きい
  • 日本のサービスがEU居住者にサービスを提供する場合に適用される可能性があるが、域外適用の実務運用はまだ前例が少ない
  • Code of Practiceが未確定のため、具体的な準拠方法の詳細は流動的

以上は2026年6月18日時点の記述。以下は2026年8月14日に一次資料へ当たり直した際の追記である。

  • 加筆前の本文で条文に照らして確認できていたのは骨格だけだった(出典の当たり直し方は本記事末尾の「出典・但し書き」を参照)
  • 執行が2026年8月2日に始まったことは委員会の公式発表で確認できた。ただし実際に制裁金が科された事例は、2026年8月14日時点で確認できていない
  • ガイドラインと行動規範のPDF本文そのものは読んでいない。本記事が扱ったのは、欧州委員会の解説ページとプレスリリースに書かれた範囲にとどまる
  • 行動規範の署名組織リストそのものも開いていない。委員会が公表していると書いていることまでを確認した
  • 日本企業への域外適用について、公開された執行事例は2026年8月14日時点で見つけられていない

条文原文に当たり直した記録

本記事は2026年6月18日時点の情報に基づく。条文内容はEU AI法Article 50およびArticle 99の公式テキストによる。施行日・罰則金額は法文に明記された内容であり、報道による推測ではない。執行の実態は施行後に初めて明らかになる。本記事は情報提供を目的としたものであり、法的助言ではない。

2026年8月14日追記:本記事は初出時、解説サイト3本を出典としていた。同日、EUR-Lexの公式テキスト(Regulation (EU) 2024/1689の2026年7月27日時点の統合版、および改正規則Regulation (EU) 2026/1744)と、欧州委員会の公式ページおよびプレスリリース(IP/26/1714、2026年7月31日)に直接当たり、Article 50・Article 99・Article 113の内容と適用日程を確認して加筆した。本文中の日付・金額・比率は、いずれもこれらの資料に書かれている数値である。具体的な対応の判断は専門家に確認してほしい。

条文番号と日付の表記ミスを直した記録

  • 2026-08-14: Article 113の適用日程表で「113(c)(i)(新設)」「113(c)(ii)(新設)」としていた根拠欄を「113(c)(i)(改正後)」「113(c)(ii)(改正後)」に修正。改正規則Regulation (EU) 2026/1744 Article 1(40)を確認したところ、point (c)は「is replaced by the following」(置換)であり新設ではない。新設と書かれているのはpoint (d)のみだった
  • 2026-08-14: frontmatterのガイドライン出典URLを、リダイレクト先ページ(「Last update 6 August 2026」のみでpublishedAtの2026年7月20日を裏付けない)から、公表日「Publication 20 July 2026」が実際に記載されているlibraryページのURLに差し替えた
  • 2026-08-14: 本文中のガイドライン名称「Guidelines on transparency obligations for providers and deployers of AI systems」を、欧州委員会ページの正式タイトルに合わせて「…of certain AI systems」に修正
  • 2026-08-14: 「日本のAI規制は、罰則を置かない方向に振れている」という、本記事のsourcesに出典のない断定を、リンク先記事に帰属する書き方に修正
  • 2026-08-14: 同一内容を2箇所で言い直していた水増し文(provider/deployerの言い換え、高リスク延期と透明性義務の関係の言い直し、執行体制についての言い直し、出典当たり直しの重複説明)を計4箇所削除・圧縮
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出典・参照資料

更新・訂正履歴

  • 初出時の「Code of Practice(行動規範)の最終版は2026年6月中の公表が見込まれている」という記述(解説サイトの予測に基づくもの)について、その後の実際を追記した。欧州委員会は2026年7月20日にArticle 50のガイドラインを公表し、AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範も公表済みで、2026年7月末時点で約190組織(同委員会の7月31日プレスリリースでは180を超える組織)が署名している。あわせて2026年7月27日発効のRegulation (EU) 2026/1744によるAI法改正を確認し、Article 50の適用日(2026年8月2日)に変更がないこと、高リスクAIの適用日が2027年12月2日および2028年8月2日に延期されたことを追記した。既存の本文は削除していない。

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