Google×HHMI Janeliaがオスのショウジョウバエの脳と中枢神経系の完全な配線図を公開──16万6,000超のニューロン・1億2,500万のシナプス結合で「ニューロン数で史上最大の脳地図」。AIが電子顕微鏡画像を3D再構成し、人が校正。メスの地図と比べて求愛・攻撃の回路を調べられる。次は魚の脳全体
Google Researchは2026年9月3日、HHMI Janelia研究キャンパス主導の共同研究として、オスのショウジョウバエの脳と中枢神経系の完全な配線図(コネクトーム)を公開したと発表した。論文はCell誌で、10年に及ぶ提携の成果。16万6,000超のニューロンと1億2,500万のシナプス結合を含み、ニューロン数で史上最大の脳地図。脊髄にあたる腹側神経索も含むため、感覚の入力から運動出力までをつなげられる。Googleの役割はAI(flood-filling networks・PATHFINDER)で電子顕微鏡の平面画像を3D再構成すること。校正と注釈はJaneliaの専門家が担い、オープンソースのNeuroglancerで閲覧・ダウンロードできる。既存のメスの地図と合わせて求愛・攻撃の回路や個体差を調べられる。同時に関連論文3本、象鼻魚の後脳(Nature)、幼生ゼブラフィッシュの全脳データも。人の脳の860億ニューロンはまだ届かない。

2026年9月18日・日本時間時点の情報です。 Google Researchのブログ(9月3日)を9月18日に一覧を見直して読んだ(当サイトは扱っていなかった)。AIが「脳の地図を作る道具」として使われた成果で、AnthropicがModel Hardware StandardをHHMI Janeliaと共同開発したのと同じ研究所が主導している。
3行まとめ
- 何が公開されたか。 オスのショウジョウバエの脳と中枢神経系の完全な配線図。Cell誌の論文「Sexual dimorphism in the complete connectome of the Drosophila male central nervous system」で、HHMI Janelia研究キャンパス主導の10年に及ぶ提携の成果。16万6,000超のニューロン・1億2,500万のシナプス結合で、ニューロン数で史上最大の脳地図。脊髄にあたる腹側神経索も含むので、「脳が体をどう制御するか」に踏み出し、聴覚・視覚・嗅覚の入力から運動出力までをつなげられる。
- AIの役割と人の役割。 脳を数百万枚の薄片に切って電子顕微鏡で撮り、AIで画像をつないで3Dにする。Googleのツールはflood-filling networks(1画素から同じ物体に属する画素をすべてたどる畳み込みネットワーク)と、合成ニューロンを訓練データに入れて速度と精度を上げた最新の再構成システムPATHFINDER。校正(プルーフリード)と注釈はJaneliaの専門家が担い、Googleのオープンソースの可視化ツールNeuroglancerで閲覧・探索・ダウンロードできる。2019年にメスの全自動再構成、2020年にメスの半分(2万5,000ニューロン・2,100万結合。当時の記録)、そして今回オスの完全版。
- 何に使えるか・次。 既存のメスの地図と比較して、雌雄で異なるニューロンから求愛と攻撃の生物学的な仕組みを、同じ部位からは個体差を調べられる。同時に3本の関連論文(視覚系・味覚・社会行動)。脊椎動物へも進み、コロンビア大主導の象鼻魚の後脳(Nature。コネクトームと他の情報を組み合わせて学習と可塑性を扱った初の例)、ハーバードとの幼生ゼブラフィッシュの全脳データ(構造と分子型を脳全体で含む脊椎動物初のデータ)、活動と構造を同じ個体で合わせたFish Fire&Wireの予備版。人の脳の860億ニューロンはまだ届かないが、アルツハイマー・うつ・統合失調症の理解につなげたい、と書く。
数字の一覧
| 項目 | 値 |
|---|---|
| ニューロン | 16万6,000超 |
| シナプス結合 | 1億2,500万 |
| 提携期間 | 10年 |
| 2020年のメスの半脳 | 2万5,000ニューロン・2,100万結合 |
| 人の脳(参考) | 860億ニューロン(未到達) |
読み方
- AIが「作業を年単位で減らす」道具になっている。 ブログは「現在、ハエの脳の地図には神経の形の検証と注釈だけで年単位の人手が要る。手作業の誤り訂正を減らせば、より大きな脳を現実的な予算と期間で扱える」と書く。当サイトがAlphaGenomeのATLASや研究室のエージェントで見た「AIで科学の下処理を圧縮する」流れの、神経科学版
- オープンソースと公開データ(Neuroglancer・データセット)で、Googleのブログにも「Open Source Models & Datasets」のラベルが付く。Googleが9月のATLASで「科学者」を前面に出したのと同じ時期の発表
- 成果の主体はJaneliaと共同研究者で、Googleは再構成AIと可視化ツールの提供。ブログはGoogleの視点で書かれており、論文の著者構成は本記事では確認していない
筆者が確かめた点
この記事の下調べで、筆者は9月18日にGoogle Researchのブログを取得し、数字・論文誌・ツール名・関連研究の記述がその原文にあることを確認した。Cell誌の論文本文とデータセットは開いていない。
書かれていないこと
- 論文の著者と、Janelia側の発表文
- データセットの容量とライセンス
- 校正にかかった人数と期間
出典はGoogle Researchのブログ
- Google Research「A connectomics milestone: Mapping the complete male fruit fly brain」(2026年9月3日)
- 本記事は論文本文やJanelia側の発表を確認したら追記する
出典・参照資料
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