Anthropic(アンスロピック)、非営利のMETR職員6人に社員並みのアクセスを付与公表を止める拒否権は持たず、3段階の評価者制度も説明
Anthropicは2026年10月15日、非営利の評価機関METRの職員6人に、自社の社員に近いアクセスを与え始めたと発表した。METRは結果を公表でき、Anthropicに拒否権はない。SecureBio、Accentureとの連携や3段階のアクセス方式も説明している。

目次
Anthropic(アンスロピック)は現地時間2026年10月15日(日本時間16日午前2時台)、非営利でフロンティアAIを評価している機関METRの職員6人に、社員並みのアクセスを与え始めたと公式サイトで発表しました。METRは分析結果を公表でき、Anthropicは公表を止められないとしています。あわせてSecureBio、Accentureなど他の評価者との連携と、アクセスを3段階に分ける方式も説明しています。
3行まとめ
- Anthropicは10月15日、METRの職員6人に会社支給の機器・オフィス・社内ツールへのアクセスを与え、自社のリスク評価チームとおおむね同等の水準にしたと発表
- METRは分析を公表でき、Anthropicに拒否権はない。黒塗りを求められるのは顧客データなど狭い事前定義の分類に限る
- 評価者向けのアクセスは3段階。METRが第3段階、SecureBioが第1段階で、Accentureとは9月18日に発表した提携の枠組みで協力する
本記事の内容は、日本時間10月16日2時台に公式ページで確認したものです。
何が始まったのか
発表の中心は「employee-like access(社員並みのアクセス)」です。Anthropicの説明では、METRの職員6人を受け入れ、会社支給のハードウェア、オフィススペース、内部のツールやシステムへのアクセスを与えました。アクセスの範囲は、Anthropic自身のリスク評価チームとおおむね同等だとしています。
Anthropicは、METRと並行して次の取り組みも挙げています。
- 過去1年に、METRと組んでAnthropicの「Risk Reports」のレビューを複数行った
- SecureBioとAccentureを評価者として協力を進めている
- Hugging Faceを含む複数の組織と、初期段階の話し合いをしている
発表は、前月(9月)に独立した第三者による評価を強めると約束したことの続報という位置づけです。Anthropicは、ホワイトハウスの「Accord on Super Intelligence」に署名し、企業が独立した外部の監査者・評価者と組むと誓約したとも書いています。この誓約以外の合意の中身は、今回確認したページには載っていません。
公表の自由はどこまであるのか
読者が気にするのは、「社内に入れても、都合の悪いことは出せないのでは」という点でしょう。Anthropicの発表は次のように書いています。
Anthropic can’t veto publication, but we can require them to redact information if it falls into narrow, pre-defined categories like the ones above. (Anthropicは公表を拒否できないが、上に挙げたような狭く事前に定めた分類に当たる情報は、黒塗りするよう求められる)
さらに、METRは黒塗りの内容を公に説明でき、黒塗りが妥当だったと考えるかどうかも述べられます。ただし黒塗りした情報そのものを明かさない範囲に限る、とされています。
例外にあたるのは、顧客に関するデータ、弁護士と依頼者の秘匿特権がある情報、モデルのアーキテクチャに関する情報です。アーキテクチャは脚注で理由が説明されています。評価者が他社とも仕事をする可能性があるため、うっかりした漏えいを警戒しており、評価との関連が薄いことが多い一方で、関連が深い場合は原則として共有を試みるが、社内の明示的な承認が必要になる、という書き方です。
守秘の面では、次の線引きも明記されています。
- 受け入れるのは、強制力のある契約のもとで動く小さなチーム
- METRの他の職員は、そのチームの作業から隔離される。Anthropicと別件で働く研究者も含む
- 目的は、少数の適格な人がAnthropicのセキュリティ基準のもとで内部を近くで見ること。他組織が同社や顧客・パートナーの情報を得る手段ではない
評価者の3段階:誰がどこにいるのか
Anthropicは、評価者向けのアクセスを3段階で整える途中だと説明しています。他の連携は初期段階にあるため、情報も公表権も限定しているとのことです。
| 段階 | アクセス | 公表 | 現状 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 範囲を絞ったリスク調査。Anthropicがアクセス範囲を決める | Anthropicの承認が必要 | SecureBio |
| 第2段階 | 第1段階より多くの情報 | 承認なしで公表できる。Anthropicは特定分類の情報の削除を求められるが、評価者はその妥当性への意見を公表できる | 発表では特定の組織は挙がっていない |
| 第3段階 | 社員並みのアクセス | 第2段階と同様の公表権 | METR |
SecureBioについて、発表は次のように書いています。
- 8月のRisk Reportの化学・生物兵器の章をレビュー中
- その前のRisk Reportについては、試行的なレビューを完了して公表済み
- このレビューが終わった後に、アクセスと公表権が広がる案件を検討する
Anthropicは、将来は第3段階に複数の評価者を置き、各チームが自分たちの分析をそれぞれ公表する形を目指すとしています。
AccentureとFaculty(Accentureの専門AI事業)については、評価とレッドチーミング、アラインメント評価、モデルの安全策のテスト、組織の能力づくりを含む提携を目指していると書いています。この提携は9月18日に別ページで発表済みで、そちらにはAnthropicとAccentureがそれぞれ今後5年間でこの分野の体制づくりに少なくとも10億ドルを投じる見込みと書かれています。費用は、Anthropicが直接Accentureの作業に出すとしています。METRなど非営利の評価機関とは、それぞれの資金で組み込み評価の要素を試す話し合いをしている、とも書かれています。
なぜこうした方式を取るのか:Anthropicの説明
発表は理由を次のように述べています。
- モデルが強力になるほど、より強い安全策とより難しいリスク評価が必要になった
- 安全に関する情報のすべてを公開はできない。悪意ある者に役立つ情報や、計算資源・学習の情報のような商業上の機密がある
- そのため、第三者の評価者に深い情報アクセスを与え、証拠と理由づけた結論を出してもらう。評価者の理解と企業自身の理解のずれを縮めたい
評価者に必要な条件として、Anthropicは4つを挙げています。フロンティアモデルを評価する専門性、独立性(評価対象企業の株式を持たず、財務面・運用面で依存していない)、リスクを意味のある形で評価できるアクセス、観察と評価を公表する自由です。
比喩として、銀行監督を挙げています。銀行は自らのリスクを外部より詳しく知っているため、当局は大手銀行の内部に常駐の検査官を置く、という論理です。Anthropicは「厳密な類比ではない」と断っています。
9月18日のAccentureのページでは、現状の課題も書かれています。組み込み型の評価者に何を見せるべきか、結果をどう報告するかという標準はまだなく、評価の資金を出す定まった仕組みもない、という記述です。長期的には、共同資金か政府系の資金が望ましいとの見方も示されています。
前と何が違うのか
Anthropicの2つの公式ページを並べると、違いは2点です。
- 9月18日のページは、組み込み型評価者は「いずれ入れる」という約束と、Accentureとの提携の発表だった。今回は、METRの6人の受け入れを「開始した」という実施の報告
- これまでの外部評価者は社外から見る立場だった。組み込み型は、モデルが学習で形になっていく過程を見て、社員に直接話を聞けるとされる
METR側のページで確認できる、Anthropicとのこれまでの主な関係も並べておきます。
| 日付(METRのページの表記) | 内容 |
|---|---|
| 2025年10月28日 | Anthropicの2025年夏の試行版Sabotage Risk Reportの外部レビュー |
| 2026年3月12日 | Claude Opus 4.6のSabotage Risk Reportの外部レビュー |
| 2026年3月26日 | METR職員が3週間かけてAnthropicの社内エージェント監視・セキュリティシステムの一部をレッドチーミングし、新たな脆弱性を複数発見 |
| 2026年5月8日 | 2026年2月のRisk Reportの「自動化されたR&Dのリスク」の章の外部レビュー |
| 2026年9月22日 | Claude Opus 5.5の評価レポート(パートナーシップ) |
同ページは、METRはこの種の作業で報酬を受け取らないと書いています。またOpenAI、Anthropic、xAIなどがアクセスとトークンを提供している、とも書いています。
筆者の観測:METR側のページにはまだ今回の件がない
日本時間10月16日2時台にMETRの「Risk Assessment」ページを取得した時点では、掲載されていたのは上の表のような過去のレビューと評価レポートの一覧で、今回の社員並みのアクセスの受け入れに触れた記載は見つかりませんでした(ページ内で「embed」「employee」を検索して0件)。METR側の見解や公表予定は、Anthropicの発表を通じてしか確認できていません。取得したのはAnthropicの発表の公開直後(1分以内)で、後から更新される可能性があります。
発表だけでは分からないこと
- METRの側の説明:上記のとおり、今回取得したMETRのページには、この受け入れの記載がありません。「公表を止められない」「黒塗りは狭い範囲」はAnthropicの説明です
- 実際の運用:6人が実際にどの情報を見たか、黒塗りがどの程度発生するかは、今後のMETRの公表を待つしかありません。Anthropic自身が、組み込み評価の詳細の多くはまだ検討中と9月のページに書いています
- 第2段階の評価者:今回確認したページでは、第2段階にいる評価者の名前は見当たりませんでした
- Hugging Faceなど:話し合いが初期段階とあるだけで、アクセスや時期は書かれていません
- 日本との関係:今回確認した範囲に、日本での提供や日本の利用者に関する記載はありません。製品の発表ではなく、Anthropicの安全評価の体制の話です
Anthropicは、評価者を自発的に組み込んでいるとし、あらゆるフロンティアAI企業が同じことをすべきだと書いています。
関連する当サイトの記事:シンガポールのオフィス開設とAI安全・評価のMOU、米中間選挙に向けたClaudeの対策。
確認したページと時刻
- An update on independent evaluators(Anthropic、2026年10月15日):日本時間10月16日2時20分に取得
- Partnering with Accenture on embedded evaluation(Anthropic、2026年9月18日):同2時20分に取得
- Risk Assessment(METR):同2時20分に取得
本記事は続報があり次第更新します。
この記事でよく聞かれること
- AnthropicはMETRにどんなアクセスを与えたのですか?
- Anthropicの発表によると、METRの職員6人を受け入れ、会社支給の機器、オフィス、社内ツールやシステムへのアクセスを与えました。アクセスの範囲は同社のリスク評価チームとおおむね同等とされています。顧客のデータ、弁護士と依頼者の秘匿特権がある情報、モデルのアーキテクチャに関する情報など、明確に定めた少数の分類は例外です。
- METRの公表内容をAnthropicは止められますか?
- Anthropicの発表では、METRはリスクの水準・インシデント・慣行についての分析を公表します。Anthropicに公表の拒否権はありません。ただし、上記の例外のような狭い事前定義の分類に当たる情報については、黒塗りを求められます。METRは黒塗りがあったことや、それが妥当だったかどうかの見解を、黒塗りした情報を明かさない範囲で公表できるとされています。
- 評価者のアクセス方式の3段階とは何ですか?
- Anthropicの説明では、第1段階は範囲を絞ったリスク調査で、公表にはAnthropicの承認が要ります。第2段階は承認なしで公表でき、より多くの情報にアクセスできます。第3段階はMETRと結んだ方式で、社員並みのアクセスに第2段階と同様の公表権が付きます。現時点でSecureBioは第1段階です。
- 日本での提供や日本の利用者への影響は書かれていますか?
- 今回確認したAnthropicの2つの公式ページとMETRのページには、日本に関する記載はありませんでした。これは製品の提供開始ではなく、Anthropicの安全評価の体制についての発表です。
出典・参照資料
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