ザッカーバーグ「2025年にミッドレベルエンジニア相当のAI」──発言から1年半後、その言葉はどこにあるか
2025年1月、Joe Rogan Experienceでマーク・ザッカーバーグ氏は「2025年中に、Metaは中堅エンジニア相当のコードを書けるAIを持つだろう」と語った。同じ発言はAxios以外にBusiness InsiderやITProも独立して報じている。ただし数日後にMetaが発表した「全従業員5%削減」の社内メモ本文(CNBC・BBCで確認)には、理由として業績評価の加速が書かれており、AIへの言及はなかった。

目次
2025年1月、Meta CEOのマーク・ザッカーバーグ氏はポッドキャスト「The Joe Rogan Experience」に出演し、AIがコーディング業務にどう影響するかについて発言した。この記事では、その発言を引用した報道(Axios、2025年5月28日付)に加えて、発言そのものを独立して報じたBusiness InsiderとIT Pro、そして発言の数日後にMetaが発表した人員削減の社内メモを報じたCNBCとBBCの記事を確認した。発言から1年半以上が経った2026年8月時点で何が言えるかを整理する。
Axiosの記事は、実際にはザッカーバーグ氏の発言そのものが主題ではなく、Anthropic CEOダリオ・アモデイ氏へのインタビューが中心の記事だ。アモデイ氏は同記事で「今後1〜5年でエントリーレベルのホワイトカラー職の半分が消え、失業率が10〜20%まで跳ね上がりうる」という、より広範で踏み込んだ予測を語っている。ザッカーバーグ氏の発言は、その文脈の中で「同様の懸念を示した他のCEOの例」として引用される形で登場する一節であり、Axios独自の単独インタビューで得られた発言ではない。
3行まとめ
- ザッカーバーグ氏は2025年1月、Joe Rogan Experienceで「おそらく2025年中に、Metaや他の企業は、中堅エンジニア相当のコードを書けるAIを持つだろう」と語った。この発言はAxiosだけでなく、Business InsiderとIT Proも独立して同内容を報じている
- その4日後(1月14日)、Metaは全従業員の約5%を削減する方針を発表した。だが社内メモ本文(CNBC・BBCが確認)には「業績評価を加速する」とだけ書かれており、AIによる代替への言及はない
- 2026年8月時点で、この「2025年中に」という予測が実際にどう成就したか(あるいは外れたか)について、Meta自身やザッカーバーグ氏本人による公式な総括は、今回のセッションでは確認できなかった
Axios記事に登場する時系列と、CNBC・BBC・Business Insiderで補強できた日付を整理すると次の通り。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年1月10日(金) | ザッカーバーグ氏がJoe Rogan Experienceで「2025年中にミッドレベルエンジニア相当のAI」と発言(Business Insiderの記事公開日1月11日・「on Friday」の表記から逆算) |
| 2025年1月14日(火) | Zuckerberg氏が社内向けWorkplaceに「全従業員の約5%削減」のメモを投稿(CNBC・BBCが確認、Bloombergが最初に報道) |
| 2025年5月28日 | Axiosがダリオ・アモデイ氏へのインタビュー記事を公開、その中でザッカーバーグ発言を引用 |
| 2026年8月(本記事執筆時点) | 「2025年中に」という期限は到来済みだが、成否を判定する公式材料は確認できず |
発言の中身
Axiosの記事(2025年5月28日付、Anthropic CEOダリオ・アモデイ氏へのインタビューを中心にした記事)は、その中でザッカーバーグ氏の発言を次のように引用している。
"Zuckerberg, in January, told Joe Rogan: 'Probably in 2025, we at Meta, as well as the other companies that are basically working on this, are going to have an AI that can effectively be a sort of mid-level engineer that you have at your company that can write code.' He said this will eventually reduce the need for humans to do this work."
日本語で言えば「おそらく2025年中に、Metaや、これに取り組んでいる他の企業も、会社にいる中堅エンジニアのようなコードを実質的に書けるAIを持つことになるだろう」という発言だ。ザッカーバーグ氏は、これによって最終的に人間がこの作業を行う必要性が減っていくだろう、とも述べたとAxiosは伝えている。
同じ発言は、Axios単独の引用ではなかった。Business Insiderは2025年1月11日付の記事で、ほぼ同一の文言を独立して報じている。
"Probably in 2025, we at Meta, as well as the other companies that are basically working on this, are going to have an AI that can effectively be a sort of midlevel engineer that you have at your company that can write code."
IT Proも同時期の記事で(カンマの位置など細部の表記は異なるものの)同じ内容を伝えたうえで、Axios・Business Insiderの引用には含まれていない発言の続きも紹介している。
"In the beginning it'll be really expensive to run, then you can get it to be more efficient and then over time we'll get to the point where a lot of the code in our apps and including the AI that we generate is actually going to be built by AI engineers instead of people engineers."
さらにIT Proは、人間の役割が失われるだけではないという趣旨の発言も引用している。
"My view on this is like [in the] future people are just going to be so much more creative and are going to be freed up to do kinda crazy things."
3社の報道が独立して同じ発言内容を伝えている以上、この引用の信頼性は高いと考えられる。ただしJoe Rogan Experienceの音源・書き起こしそのものは、今回のセッションでも直接確認できていない。3社とも、発言の切り取り方は「AIが中堅エンジニアの仕事を代替する」という論点に絞っており、BBCの記事によれば同じ回でザッカーバーグ氏は「男性的なエネルギー」や格闘技への取り組みについても語っていたという。つまりこの発言は、より長いインタビューの中の一部分を各メディアが切り出したものだ。
4日後に発表された「5%削減」の中身
Axiosの記事は、ザッカーバーグ氏の発言のすぐ後に起きた出来事として、Metaの人員削減方針に触れている。
"Shortly after, Meta announced plans to shrink its workforce by 5%."
Axiosはこれを一文で済ませているが、CNBCとBBCはこの人員削減そのものを主題にした記事を、削減方針の発表当日(2025年1月14日)に出している。両紙が確認したところによると、これはザッカーバーグ氏がMetaの社内コミュニケーションツール「Workplace」に投稿した内部メモが発端で、最初に報じたのはBloombergだった。CNBCが入手して全文を掲載したメモの一部は次の通り。
"I've decided to raise the bar on performance management and move out low performers faster. We typically manage out people who aren't meeting expectations over the course of a year, but now we're going to do more extensive performance-based cuts during this cycle, with the intention of back filling these roles in 2025."
日本語で言えば「業績管理の基準を引き上げ、低評価者をより早く退出させることにした。通常は1年かけて基準未達の人材を退出させるが、今回のサイクルではより広範囲な業績ベースの人員削減を行い、2025年中にそのポジションを補充する予定だ」という内容。メモには続けて「2025年は厳しい年になる("This is going to be an intense year")」という一文もあった(BBCが確認)。
会社側は別のメッセージ(ある部門ディレクターの投稿、CNBC確認)で「最も業績の低い従業員の約5%を退出させる」としている。Meta本体の従業員数は直近の四半期報告によれば72,000人超で、BBCはこれを踏まえて「今回の対象は概ね3,600人前後になりうる」と伝えている。対象となる従業員への通知は2025年2月10日までに行われ、退職金は過去の削減と同水準で支給されるとCNBCは報じている。CNBCによれば、この規模の削減はMetaが2022〜2023年に実施した合計約21,000人(全従業員の4分の1近く)の削減以来、最大級だという。BBCはこの内訳を「2023年に約10,000人、2022年に約11,000人」としており、合計すると21,000人でCNBCの数字と一致する。
記事に「AI」への言及はなかった
ここが今回、前回の確認から更新できた最も重要な点だ。CNBC・BBCいずれの記事も、ザッカーバーグ氏の内部メモ本文を伝えているが、そのメモの中に「AIによる代替」を人員削減の理由として挙げた記述は見当たらない。メモが説明する削減理由は一貫して「業績評価サイクルの前倒し・厳格化」であり、Joe Rogan Experienceでの「ミッドレベルエンジニア相当のAI」発言との関連は、メモ本文には一切書かれていなかった。
Axiosの記事も、この人員削減がザッカーバーグ氏の発言と直接の因果関係にあるとは断定していない。「shortly after(その後まもなく)」という時系列の近さを示しているだけだ。今回CNBC・BBCの記事本文まで確認した結果、Meta自身の公式な説明(内部メモ)にもAIへの言及がないことが分かったため、この2つの出来事を安易に「AIによる人員削減の一例」として結びつけるのは、少なくとも公開されている一次的な社内メモの文言からは支持されない。
記事はさらに別の企業の例も挙げている。テキサス州拠点のサイバーセキュリティ企業CrowdStrikeが、500人・全従業員の5%を削減したという記述だ。Meta・CrowdStrikeという業種の異なる2社が、同じ「5%」という削減規模で並べて言及されている点は、Axios記事の書き手が「AIによる雇用への影響」という論点を補強する材料として意図的に並置した可能性がある構成であり、この2社の削減が実際にAIを直接の理由としたものかどうかまでは、Axios記事自身も明言していない。
発言から1年半、何が確認できたか
この記事の執筆時点(2026年8月)は、ザッカーバーグ氏の発言(2025年1月)から1年半以上が経過している。「2025年中に」という期限はすでに到来している計算になる。
しかし今回のセッションでは、この予測が実際にどう成就したか(Metaが本当にミッドレベルエンジニア相当のコーディングAIを社内で運用しているか、それによってエンジニアの採用・配置がどう変わったか)について、Meta自身の公式発表やザッカーバーグ氏本人によるフォローアップ発言を検証していない。ザッカーバーグ氏の当初の発言自体も、Axios・Business Insider・IT Proという第三者メディア3社が1月の発言を後日の記事内で引用した形での確認であり、Joe Rogan Experienceの音源・書き起こしそのものを今回のセッションで直接確認したわけではない。3社の引用がほぼ一致している点は、発言内容の信頼性を補強する材料にはなるが、一次資料の直接確認とは異なる。
したがって、この記事は「ザッカーバーグ氏が2025年1月にこう発言したと複数メディアが報じている」という事実の確認と、「その発言の4日後にMetaが発表した人員削減は、社内メモを見る限りAIを理由としていない」という区別、そして「予測期限が到来した2026年8月時点で、成否を判定する公式な材料をこの記事は持っていない」という限界の明示にとどまる。
記事の主題はアモデイ氏の「トークン税」提案だった
Axios記事全体を通して読むと、ザッカーバーグ氏の発言は記事全体のごく一部(全体の中の1段落)に過ぎず、記事の主題はアモデイ氏が提案する政策的な対応策にある。アモデイ氏は「まず警告することが第一歩」だとして、AI企業が労働者のモデル利用状況に関する知見を共有すべきだという趣旨の経済指標を自ら作成したと述べている。さらに、AI企業の富の集中に対する具体策として「トークン税」――AIモデルが使われてAI企業が収益を得るたびに、その3%程度を政府に納め再分配する仕組み――というアイデアにも言及している。「これは電車の前に立ちはだかって止めるようなことはできない。唯一有効なのは、電車の進路を今のうちに10度動かすことだ」ともアモデイ氏は語っている。ザッカーバーグ氏の「ミッドレベルエンジニア」発言は、こうしたアモデイ氏の主張を補強する「他のCEOも同様の懸念を示している」という傍証として引用された一節であり、Axios記事の主眼ではない。
この記事が確認できた範囲・できなかった範囲
まず、ザッカーバーグ氏の発言原文(音源・書き起こし)は、今回のセッションでも直接確認できなかった。Joe Rogan Experienceのエピソード本体・書き起こしサイトへのアクセスを複数試みたが、いずれも取得できず、Axios・Business Insider・IT Proという3つの独立したメディアの引用が一致していることをもって、発言内容の確からしさを判断している。
次に、「その後まもなくMetaが5%の人員削減を発表した」という事実については、今回CNBCとBBCの記事本文(削減発表当日付、Zuckerberg氏の内部メモの引用を含む)まで確認できた。削減の発表日(2025年1月14日)、対象規模(約5%、概算3,600人前後)、通知期限(2月10日まで)、削減理由(メモ上は業績評価の加速)は、これらの一次報道に基づく事実として本文に反映した。この人員削減がAIによる代替を理由にしたものなのか、業績評価に基づく通常の人員整理なのかについては、少なくとも公開されているメモの文言からは後者の説明のみが確認できる。
また、「2025年中にミッドレベルエンジニア相当のAI」という予測が実際に成就したかどうかの検証は、この記事では行っていない。Meta社内のAIコーディングツールの実態、エンジニア採用数の推移といった一次データを、今回のセッションでは取得していない。
最後に、この予測とよく比較されるOpenAI論文の「タスクの80%が影響を受ける」という研究や、Anthropic CEOの「白領大虐殺」発言とは、それぞれ主体・根拠・時間軸が異なる別々の発言・研究である。この記事はそれらを同一の主張として扱っていない。
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出典・参照資料
- 二次資料Behind the Curtain: A white-collar bloodbath — Axios(Jim VandeHei, Mike Allen、2025年5月28日、ザッカーバーグ発言を引用) ↗
- 二次資料Meta announces 5% cuts targeting low performers. Read the memo — CNBC ↗
- 二次資料Meta cuts 5% of jobs to lose 'lowest performers' — BBC News ↗
- 二次資料Mark Zuckerberg says AI could soon do the work of Meta's midlevel engineers — Business Insider ↗
- 二次資料Mark Zuckerberg says AI will be doing the work of mid-level engineers this year — IT Pro ↗
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