2026年8月28日 金曜日
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研究· 約12

ChatGPT Plusは本当に赤字なのか──OpenAIの支出計画とAnthropicの評価額逆転を公開情報で確認する

OpenAIは2025年に約80億ドルの運営赤字を見込み、2029年までのキャッシュフロー黒字化を目指すと報じられています。Anthropicは2026年5月に評価額9,650億ドルに達し、Reutersは「OpenAIを上回った」と報じました。2026年8月27日時点で確認できた公開情報を整理し、月額課金1人あたりの赤字という報道は現時点で裏取りできなかった点も明記します。

ChatGPT Plusは本当に赤字なのか──OpenAIの支出計画とAnthropicの評価額逆転を公開情報で確認する
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目次

この記事の数字は2026年8月27日時点で確認できた公開情報にもとづきます。 OpenAI・Anthropicの評価額や損益見通しは今後の資金調達やIPOで変わる可能性が高く、本記事は特定時点のスナップショットです。この記事は2026年5月10日に公開した動画「月3000円のChatGPT、OpenAIはあなた1人で赤字を出してる」の内容を、公開後にあらためて一次情報にあたって記事にしたものです。

結論から言うと、OpenAIが2025年に大きな運営赤字を計上し、黒字化の目標を2029年に置いていること自体は、複数の報道を引用するWikipediaの記述と、そこに付いた出典から確認できました。一方、動画が紹介していた「月額課金ユーザー1人あたりの赤字額」「Altman CEOのXでの発言」「Plus加入者の急減予測」といった、より具体的で刺激的な数字については、本セッションでは一次ソースに到達できず、確認できていません。

  • OpenAIは2025年に約80億ドルの運営赤字を見込み、2026〜2028年の支出計画は170億ドル→350億ドル→450億ドルと拡大。2029年のキャッシュフロー黒字化、2030年に売上高約2,000億ドルを目標としていると報じられている
  • Anthropicは2026年5月、650億ドルの資金調達を経て評価額9,650億ドルに到達。Reutersは「OpenAIの評価額を上回った」と報じた(OpenAIは2026年4月時点で8,520億ドル)
  • 「ChatGPT Plus利用者1人あたりの赤字額」という具体的な数字は、本セッションで一次ソースを確認できなかった。会社全体の売上・支出は公開されていても、プラン別・ユーザー単位の原価は非公開のため

OpenAIの支出計画は何を語っているか

英語版Wikipedia「OpenAI」の記述と、そこに付けられたCNBC(2026年2月20日)・Fortune(2025年11月12日)への出典リンクを確認したところ、次のような数字が紹介されていました。

  • OpenAIは2025年に約80億ドルの運営赤字を見込んでいる
  • 2029年までの長期支出計画は総額約1,150億ドル。年間の支出は2026年170億ドル、2027年350億ドル、2028年450億ドルへと拡大する見通し
  • 支出の半分以上は、モデルの訓練・開発を支える計算資源(コンピュート)に充てられる計画
  • OpenAI自身の2025年時点の予測では、2029年にキャッシュフローが黒字化し、2030年には売上高が約2,000億ドルに達するという見通しを示している

これは動画が紹介していた「黒字化は2029年以降」という要点と、方向性としては一致します。ただし、この記事で確認できたのは「OpenAI自身が示した将来予測・支出計画」であり、動画にあった「累計損失4.4兆円」という確定的な数字そのものは、本セッションでは一次ソース(Wall Street Journalの報道とされるもの)に直接アクセスできず、裏取りできませんでした。

なお、2025年の実績として、OpenAIの年間売上高は131億ドル、純損益は約マイナス90億ドル(2025年推定)という数字もWikipediaの記述に見られました。運営赤字80億ドルという数字と純損益90億ドルという数字は出典が異なり、集計方法(運営損益か純損益か)が違う可能性があるため、両方を並記します。

評価額はどう動いたか(OpenAI vs Anthropic)

資金調達のたびに更新される評価額を、時系列で確認できた範囲だけ並べます。

時期 OpenAI評価額 Anthropic評価額
2025年4月 3,000億ドル
2025年9月 1,830億ドル
2025年10月 5,000億ドル(従業員株売却)
2025年12月〜2026年2月 3,500億ドル→3,800億ドル
2026年2〜4月 7,300億ドル→8,520億ドル
2026年5月 9,650億ドル

Reuters(2026年5月28日付、Wikipediaの出典リンク経由で書誌情報を確認)は、Anthropicが650億ドルを調達し評価額9,650億ドルに達したことについて「OpenAIの評価額を上回った(surpassing OpenAI)」と報じています。両社とも2026年6月にIPO(新規株式公開)に向けた申請を行ったことは、Anthropicの極秘IPO申請両社が1週間差で申請した経緯で既に記事化しています。評価額が赤字企業に対してこれだけ積み上がっている背景には、2026年のVC投資がAIブームで記録を更新しているという資金環境全体の動きもあります。

「1人あたりの赤字」は検証できるのか

動画のタイトルにある「あなた1人で赤字を出してる」という主張は、直感的で分かりやすい一方、検証には注意が必要です。OpenAIが公開しているのは会社全体の売上高・支出額・資金調達額であり、ChatGPT Plus(月額固定)・API課金・エンタープライズ契約など収益源ごとの原価内訳や、プラン別の粗利率は公表されていません。「Plusユーザー1人あたりいくらの赤字か」という数字を導くには、少なくとも(1)推論にかかる1クエリあたりのコンピュートコスト、(2)ユーザーごとの利用量分布、(3)研究開発費をどう配分するか、という非公開の内部データが必要です。

動画が引用元として挙げていたSam Altman CEO本人のX投稿や、OpenAIのNick Turley氏(ChatGPT担当VP)の発言についても、本セッションでは投稿・発言の原文には到達できず、内容を確認できませんでした。したがって本記事では、これらの発言を事実として扱っていません。

推論コストはどれだけ下がっているか

AI企業が値上げに踏み切りにくい背景として、動画は推論(inference)コストの急落を挙げていました。AI研究機関Epoch AIが2025年3月12日に公開したデータ分析記事「LLM inference prices have fallen rapidly but unequally across tasks」を直接確認したところ、次のように書かれていました。

The price to achieve GPT-4's performance on a set of PhD-level science questions fell by 40x per year. The rate of decline varies dramatically depending on the performance milestone, ranging from 9x to 900x per year. (GPT-4水準の性能を、博士課程レベルの科学問題で達成するのに必要な価格は、年間40倍のペースで下落した。下落率は評価基準によって大きく異なり、年間9倍から900倍の幅がある)

Epoch AIはこれを6つのベンチマークで計測しており、直近1年でとくに下落が急だったため「その速度が今後も続くとは限らない」とも付け加えています。動画にあった「2ヶ月で半減」という表現は、年40倍という数字を単純換算するとおおむね近い値になりますが、Epoch AI自身がその表現を使っているわけではありません。またこのデータは2025年3月時点のもので、2026年8月時点での最新の下落率を示すものではありません。

Epoch AIの別記事「Most of OpenAI's 2024 compute went to experiments」(Josh You, 2025年10月10日)を直接確認したところ、OpenAIの2024年のクラウドコンピュート支出は合計で約68億ドルと推計されており、内訳は最終的なモデル訓練(final training)が30億ドル、研究(research、複数年で償却される支出を2年で按分した推計値)が20億ドル、推論(サービス提供)が18億ドルでした。推論の割合はこの内訳で約26%にとどまり、残り約74%(訓練+研究)がまだ「次のモデルを作るための投資」に向いていたことになります。ただしこれは2024年単年・Epoch AIの推計であり、2026年時点の実際の内訳ではありません。

正直に書いておきたいこと(限界・不確実性)

  • 「累計損失4.4兆円」は未確認: 動画が参照していたWall Street Journalの報道とされる数字には、本セッションでは(paywallのため)直接アクセスできませんでした。近い性質の数字として、Fortune(2025年11月12日)を出典とする「2028年まで巨額の赤字が続き、その2年後に黒字化する」という報道の存在はWikipedia経由で確認していますが、具体的な累計損失額はこの記事に含めていません。
  • Altman氏・Turley氏の発言は未確認: X投稿や社内発言として動画が紹介していた引用は、原文に到達できず、本記事では使用していません。
  • 「1人あたりの赤字」「Plus加入者80%減予測」は未確認: いずれも内部データや有料調査レポート(The Information)に基づくとみられる数字で、無料でアクセスできる一次ソースが見つかりませんでした。
  • Epoch AIの推論価格下落データは2025年3月時点: 2026年8月時点の最新の下落率ではありません。
  • 推論コスト内訳の「約26%」は2024年単年のEpoch AI推計: 実測の会計数値ではなく、報道(The Information・New York Times経由)をもとにしたEpoch AI独自の按分推計です。2026年時点の実際の内訳ではありません。
  • 本記事で使った数字の多くは、報道機関の一次記事そのものではなく、その報道を引用するWikipediaの記述経由で確認したものです。Wikipediaの各記述には元記事(Reuters・CNBC・Fortuneなど)へのリンクが付いており、書誌情報(社名・日付・見出し)は確認していますが、元記事本文への直接アクセスはしていません。

典拠にしたWikipediaとEpoch AIの記述

  • 英語版Wikipedia「OpenAI」「Anthropic」を本セッションでcurl直接確認(2026年8月時点の版)。各数字はページ内に明記された出典(Reuters・CNBC・Fortuneなど)の書誌情報とあわせて確認。
  • Epoch AI「LLM inference prices have fallen rapidly but unequally across tasks」(2025年3月12日)をepoch.aiで直接確認。
  • Epoch AI「Most of OpenAI's 2024 compute went to experiments」(Josh You, 2025年10月10日)をepoch.aiで直接確認。
  • 本記事で紹介した評価額・支出計画は、いずれも今後の資金調達や決算で更新される可能性が高い数字です。閲覧時点の最新情報は各社の公式発表を確認してください。
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