2026年9月4日 金曜日
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GoogleがWeatherNext 3を公開──衛星の生データから1時間ごとに更新、5kmまで細かくした気象AI

Google DeepMindとGoogle Researchが2026年9月3日、気象予測AI「WeatherNext 3」を発表した。従来モデルが学習していた数値予報(6時間遅れ)ではなく、静止衛星のライブデータと地上観測点のデータを直接学習し、1時間ごとに最大5km解像度で更新する。Google検索・Geminiアプリ・Googleマップ・Maps Platform Weather API・Earth Engineに同日から順次組み込まれる。公式発表の数字と、書かれていない点を整理する。

GoogleがWeatherNext 3を公開──衛星の生データから1時間ごとに更新、5kmまで細かくした気象AI
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目次

Google DeepMindとGoogle Researchが2026年9月3日15時00分(UTC)、気象予測AI「WeatherNext 3」を発表した。前世代のWeatherNext 2が「25kmグリッド・6時間刻み」だったのに対し、WeatherNext 3は静止衛星のライブデータを直接取り込んで1時間ごとに更新し、地表の一部変数を5km解像度で出す。Google検索・Geminiアプリ・Googleマップ・Google Maps Platform Weather API・Google Earth Engineへの組み込みが同日から始まる。

3行まとめ

  1. 学習元が変わった。従来のAI気象モデル(WeatherNext 2を含む)は数値予報(NWP)の出力を学習していたが、NWPには6時間のデータ遅延がある。WeatherNext 3は静止衛星のライブモザイクと地上観測点の疎なデータを直接学習する。
  2. 解像度と更新頻度が上がった。気温・水蒸気などの地表変数が5km、その他の地表変数が10km、風速などの大気変数が25km。公式は「前モデルより全体でおよそ5倍細かい」と書いている。更新は1時間ごと。
  3. 降水予測の改善幅が具体的に書かれている。CRPS(連続ランク確率スコア)でIMERG比 最大60%・MRMS比 30%・雨量計比 10%(短いリードタイム)。利用者向けには「1日以上先の計画では降水予測が最大50%正確になる」と説明されている。

何が変わったのか──「6時間遅れの模擬データ」から「今の衛星画像」へ

公式発表がいちばん強調しているのは、モデルが何から学ぶかを変えた点である。

Most AI weather models, including WeatherNext 2, are trained on data from numerical weather prediction (NWP) models. Although useful, NWP models are complex, supercomputer-driven physics simulations that carry a six-hour data lag. This lag can lead to biases for fast-changing variables like rain or surface temperature. (WeatherNext 2を含むほとんどのAI気象モデルは、数値予報(NWP)モデルのデータで学習している。有用ではあるが、NWPはスーパーコンピュータで回す複雑な物理シミュレーションで、6時間のデータ遅延を伴う。この遅延は、雨や地表温度のように速く変わる変数で偏りを生みうる)

WeatherNext 3は、この6時間遅れを迂回して、全球の静止衛星から届くライブのモザイク画像を取り込む。その結果、入手できる最新の衛星観測に基づいた予報を1時間ごとに新しく生成できる——というのが公式の説明だ。急に発達する storm や前線、降水系に対して、より早く細かい情報を出せることを狙っている。

もう1つの変更が、地表の細かさへの対処である。気温や湿度は数kmの範囲で大きく変わりうるが、従来モデルは「細部を欠いた大気の表現」を学習していたため、海岸・谷・山地の近くで極端な局所変動を取りこぼしていた。WeatherNext 3はこれに対して、気象観測所の疎な観測データを直接学習するという方法を採っている。

解像度・更新頻度の数字

項目 WeatherNext 2 WeatherNext 3
更新頻度 6時間刻み 1時間ごと
地表変数(気温・水蒸気など) 25kmグリッド 5km
その他の地表変数 25kmグリッド 10km
大気変数(風速など) 25kmグリッド 25km
全体の細かさ 公式表現で「およそ5倍細かい」

(出典:Google公式ブログ本文。WeatherNext 2 の「25kmグリッド・6時間刻み」も同じ記事の記述)

アーキテクチャについては、図の説明文に「1時間ごとの静止衛星モザイクと従来の履歴解析の両方を、単一で柔軟な Functional Generative Network(FGN)メッシュ・トランスフォーマーに流し込む」「密なグリッド場・離散的なサイクロン経路・観測点レベルの疎な座標をネイティブに出力する」と書かれている。モデルの規模やパラメータ数は公表されていない。

再生可能エネルギー向けの変数が入った

WeatherNext 3では、再生可能エネルギーの発電量予測を狙った変数が追加されている。

  • 地上100m(おおよそ風力タービンの高さ)の風速 — 風力発電の出力予測向け
  • 高解像度の雲量と日射量 — 太陽光発電所が地上で受ける光量の見積もり向け

公式は「送電網の運用者や再エネ開発者が、クリーンエネルギー資産の発電量を正確に予測し、需要と突き合わせられるようにする」と位置づけている。これまでの気象AIが「予報の精度」を競っていたのに対し、発電計画の入力データとして使える形にするという方向が明示された点は押さえておきたい。

降水予測の改善幅

全球の気象モデルは降水予測が苦手だ、と公式発表自身が認めている。雨や雪は小さなスケールで速く動く雲のプロセスに支配されており、物理シミュレーションで正確に扱いにくい。結果としてAIの予報も「ぼやけた推定」になったり、激しい storm の境界を丸ごと見落としたりする。

WeatherNext 3は、これに対して2つの高品質な降水データで学習している。

  1. NASAの衛星ベースの降水プロダクト IMERG(Integrated Multi-satellite Retrievals for GPM)
  2. Google自身の、衛星レーダーに基づく全球降水再解析

改善幅は次のように書かれている。

In medium-range global forecasts, evaluations against baselines show a Continuous Ranked Probability Score (CRPS) improvement of up to 60% against IMERG, 30% for MRMS, and 10% against rain gauge measurements for early lead times. (中期の全球予報で、ベースラインとの比較評価は、短いリードタイムにおいてCRPSがIMERG比で最大60%、MRMS比で30%、雨量計の実測比で10%改善したことを示している)

利用者向けの説明では別の数字が使われている。「1日以上先を計画するとき、降水予測は最大50%正確になる。とくに、これまで予報の信頼性が低かった地域で改善が大きい」。CRPSの60%とこの50%は別の指標・別の条件の数字なので、混同しないほうがいい。

どこで使えるようになるか

提供先 内容
Google検索/Geminiアプリ/Googleマップ 天気の表示に順次反映(発表当日から開始)
Google Maps Platform Weather API 同上
Google Earth Engine 同上
BigQuery/Earth Engine/Google Cloud Storage 1時間ごとに更新される高解像度の予報データを、モデルの構築なしにクエリ・一括ダウンロードできる

研究者・開発者・企業向けには「モデルのセットアップ不要で、そのままワークフローに組み込める形」でデータを出す、という設計になっている。

公式発表が書いていないこと

  • モデルの重み・学習コードの公開可否。WeatherNext 2は2026年8月にコードと重みごとオープンソース化されたが、WeatherNext 3について同様の公開があるかは、この発表では触れられていない。
  • モデル規模・学習コスト・推論コスト。パラメータ数も学習に使った計算資源も書かれていない。
  • CRPS比較の詳細な実験条件。「ベースライン」が何を指すか、リードタイムの「early」が何時間までかは本文からは特定できない。
  • 「最も高精度」の根拠の全体像。公式は「Brightbandによる独立したライブ評価によれば、これまでで最も高度かつ正確な全球気象モデル」としているが、その評価の順位表そのものは本記事では確認していない。
  • 日本での提供時期。「グローバルに提供」とあるが、日本語環境の検索・マップへの反映時期の個別記載はない。

なお公式発表には「正式な気象予報・荒天警報・公共安全上の助言については、お住まいの気象機関・国の気象局を参照してください」という但し書きが付いている。

当サイトの関連記事との関係

当サイトは前世代のWeatherNext 2を扱っている。そちらは「サイクロンの進路・強度予測でリードタイムを伸ばした」「コードとモデル重みをオープンソース化した」という話で、今回の3とは強調点が違う。2の記事の出典に挙げていたGoogle DeepMindの製品ページ(deepmind.google/science/weathernext/)は、2026年9月4日時点でWeatherNext 3の内容に差し替わっているため、2の記述を確認したい場合はNature論文と発表当時のブログ記事を参照してほしい。

気象データが実務にどう効くかという文脈では、水産庁のスマート水産業の取り組みを扱った記事でも、海況・気象の予測データが漁場選定に使われる話に触れている。

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