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AIに記事を書かせたら、複利計算を間違えていた──CNETの2023年1月、3つの誤りを原文で確認する

2022年11月からCNETは「CNET Money Staff」名義でAI生成の金融解説記事を公開していた。2023年1月、Futurismがその中の複利・ローン・CDに関する説明で少なくとも3つの明確な誤りを発見し、CNETは編集長名で謝罪と訂正を行った。誤りの中身をFuturismの原文で確認した。

AIに記事を書かせたら、複利計算を間違えていた──CNETの2023年1月、3つの誤りを原文で確認する
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「AIにライターの仕事を任せたらどうなるか」を早い段階で示した実例のひとつが、2023年1月に発覚したCNETの騒動だ。この記事では、この件を最初に報じたFuturismの記事(2023年1月17日付)をcurlで取得し、AIが書いた記事の中身と、CNET側の対応を確認した。

3行まとめ

  1. CNETは2022年11月から、「CNET Money Staff」という人間のような名義で、正体を明かさないままAI生成の金融解説記事を公開していた
  2. 2023年1月、Futurismの調査により、複利計算・自動車ローンの利息計算・CD(定期預金)の複利頻度について少なくとも3つの明確な誤りが見つかり、さらに数日後の続報では他媒体の記事との「深い構造的・言い回しの類似」=盗用の証拠も報じられた
  3. 親会社Red Venturesは、CNETだけでなく姉妹サイトBankrateでもAI記事の投稿を一時停止。CNET編集長は「AIツールと編集プロセスへの確信が持てるまで一時停止し、その後再開する」と述べ、完全撤退ではなく再開前提の一時停止だと表明した

「CNET Money Staff」という名義

Futurismの記事によれば、CNETは2022年11月から「CNET Money Staff」という、あたかも人間のスタッフであるかのような名義で、AI生成の金融解説記事を公開していた。この取り組みは公式には発表されておらず、AI生成であることの開示は、バイライン部分にカーソルを合わせないと見えない場所に隠されていたとFuturismは指摘している。

見つかった誤り:複利計算

Futurismが具体的に指摘した誤りのひとつが、複利に関する説明だ。記事は、AI生成記事の該当箇所をこう引用している。

"'To calculate compound interest, use the following formula: Initial balance (1+ interest rate / number of compounding periods) ^ number of compoundings per period x number of periods. For example, if you deposit $10,000 into a savings account that earns 3% interest compounding annually, you'll earn $10,300 at the end of the first year.'"

「10,000ドルを年3%の複利で預金すれば、1年後には10,300ドルを『稼ぐ』」という記述だが、実際に稼いだ(増えた)のは300ドルであり、10,300ドルは元本と利息の合計額である。Futurismはダブリン大学ビジネススクールの金融学准教授Michael Dowling氏のコメントを引用し、「元本と利息の両方を『稼いだ』と言うのは、単純に不正確であり、一般的な言い方でもない」と指摘している。

見つかった誤り:自動車ローンの利息

もうひとつの誤りは、自動車ローンの利息計算に関するものだ。

"'With mortgages, car loans and personal loans, interest is usually calculated in simple terms. For example, if you take out a car loan for $25,000, and your interest rate is 4%, you'll pay a flat $1,000 in interest per year.'"

25,000ドルの自動車ローンを金利4%で組むと「毎年一律1,000ドルの利息を払う」という記述だが、実際の住宅ローン・自動車ローンは、各回の支払いごとに残高に対してのみ利息が計算される仕組みであり、ローン序盤ほど利息の割合が多く元本部分が少なく、返済が進むにつれてこの比率が徐々に逆転していく。Futurismが実際にこの条件をローン償却計算機に入力して確認したところ、「一律1,000ドル」になる年は一度も存在しなかったという。Dowling氏はこの記述について「絶対に」間違っていると述べている。

見つかった誤り:CD(定期預金)の複利頻度

3つ目の誤りは、CD(Certificate of Deposit、日本の定期預金に近い金融商品)の複利頻度に関する記述だ。

"'Note that a high-yield savings account or money market account may offer interest that compounds daily, weekly or monthly. But a one-year certificate of deposit only compounds once, after the initial deposit reaches maturity.'"

「1年物のCDは満期時に一度だけ複利計算される」という記述だが、Futurismは実在するChase銀行の1年物CD(毎日複利)とCapital One銀行の1年物CD(毎月複利)を例に挙げ、この記述が単純に誤りだと指摘している。

もう1つの問題:盗用(プレイジャリズム)

事実誤認の報道から数日後の2023年1月23日、Futurismは同じ記者Jon Christian氏による続報で、CNETのAI生成記事が「他所で先に公開された記事と、構造や言い回しが深いレベルで酷似している」証拠を新たに見つけたと報じた。この記事のArticleBody(JSON-LD構造化データ内の本文)を取得して確認すると、「CNETのAIは、Red Venturesの競合他社や、Bankrateの人間ライター、さらにはCNET自身の過去記事の文章を、直接的に盗用しているように見える」と書かれている。

ワシントン・アンド・リー大学の教授Jeff Schatten氏がFuturismの求めに応じて提供された事例を検証し、それらは「明確に(clearly)」盗用の水準に達していると述べたことも、同記事は伝えている。

親会社Red Venturesは、CNETとBankrate両方で一時停止した

Futurismの記事によれば、事実誤認の報道の数日後、CNETの親会社Red Venturesは社内会議で、CNETだけでなく姉妹サイトのBankrateでもAI生成記事の投稿を一時的に停止すると発表した。批判が沈静化するまでの措置だったとFuturismは書いている。

さらにその2日後(1月25日)、CNET編集長Connie Guglielmo氏がこの件について公式に声明を出した。Futurismの記事「News Site Admits AI Journalist Plagiarized and Made Stuff Up, Announces Plans to Continue Publishing Its Work Anyway」(記事タイトルを直訳すると「盗用と事実誤認を認めつつ、それでも運用継続を発表」)によると、声明の要点は次の通り。

  • 盗用については「一部の記事で、盗用チェックツールが編集者に正しく使われなかった、またはツールが類似文を検知できなかった」と述べ、責任をツールの運用側に置いた
  • 事実誤認については「AI生成記事が事実誤認で指摘されたのを受け、CNET Money編集チームは全記事の監査を行った」とし、「大幅な訂正を要する少数の記事」と「社名の表記漏れ・数字の入れ替わり・曖昧な言い回しなど軽微な問題」の両方が追加で見つかったと明かした
  • 「AIツールと編集プロセスが人間・AI双方の誤りを防げると確信できるまで一時停止し、その後再開する」と、運用の完全停止ではなく再開を前提とした一時停止であることを明言した

3つの誤りを一覧にする

誤りの内容 AI生成記事の記述 実際
複利の説明 「$10,000を年3%複利で預ければ、1年後に$10,300を『稼ぐ』」 稼いだ(増えた)のは$300。$10,300は元本+利息の合計
自動車ローンの利息 「$25,000のローン・金利4%なら、毎年一律$1,000の利息を払う」 実際は残高に対して都度利息計算され、「一律$1,000」になる年は存在しない(Futurismがローン償却計算機で確認)
CDの複利頻度 「1年物CDは満期時に一度だけ複利計算される」 Chase銀行の1年物CD(毎日複利)、Capital One銀行の1年物CD(毎月複利)が実在し、この記述は誤り

CNET側の対応

Gizmodoの記事(同じく2023年1月17日付)によれば、この報道を受けてCNET編集長Connie Guglielmo氏は声明を出し、AI生成記事のバイラインを「CNET Money Staff」から「CNET Money」へ変更し、AI生成であることの開示をより明確にすると発表した。同氏は、公開済みの各記事は「公開前に、その分野の専門知識を持つ編集者によってレビュー・ファクトチェック・編集されている」とも主張していたが、Futurismが指摘した複利計算の記事は、Guglielmo氏自身が声明の中で「透明性」の実例として名指しした記事のひとつだったと、Futurismは皮肉を込めて書いている。

確認できたのはFuturismが指摘した記事1本の誤りだけ

まず、この記事で確認できたのは、Futurismが指摘した1本の記事(複利計算に関する解説記事)に含まれていた具体的な誤り3件と、CNETの対応の一部である。CNETが2022年11月から公開していたAI生成記事が全部で何本あり、そのうち何本に誤りが見つかったかという網羅的な集計は、今回のセッションでは確認できていない(この点についてメディア横断でしばしば言及される具体的な本数・割合の数字は、今回確認した一次記事群の中では見当たらなかった)。

次に、この記事はCNETが使用していたAIツールの名称・開発元について、Futurism・Gizmodoいずれの記事も具体的には明記していなかったことを確認している。CNET自身も「未特定のAIエンジン」という表現にとどめていたとされる。

また、この一連の出来事は2023年1月時点のものであり、CNETがその後AI生成記事の運用方針をどう変えていったか(完全に停止したのか、修正を経て継続したのか)については、今回のセッションでは追跡していない。

最後に、Dowling氏・Schatten氏のコメントはいずれもFuturismの取材に応じたものであり、この記事はそのコメントをそのまま引用している。金融学・盗用判定の専門家としての見解の妥当性そのものを、この記事は独自に検証していない。盗用の具体的な該当箇所(どの記事とどの記事がどう似ていたか)についても、Futurism記事の要約レベルの確認にとどまり、原文同士を並べての独自の一致率確認は行っていない。

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