2026年9月4日 金曜日
AI時短ラボ
プロダクト· 約12

OpenEvidenceとは──米国の医師が診察室で使う医療AI、月間1,800万件の臨床相談

OpenEvidenceは米国の検証済み医師を対象にした無料・広告収入型の医療AIプラットフォームで、NEJM・JAMA・Nature・NCCN・Cochraneと公式コンテンツ提携を結んでいる。2026年1月にはThrive Capital主導のシリーズDで25億ドルを調達し評価額120億ドルに到達、月間の臨床相談件数は前年の月300万件から1,800万件へ増加したと運営会社は公表している。

OpenEvidenceとは──米国の医師が診察室で使う医療AI、月間1,800万件の臨床相談
執筆・編集:
目次

OpenEvidenceは、米国の検証済み臨床医(doctor・nurse practitioner等)を対象にした医療特化型のAIプラットフォームだ。診察の合間に薬剤の相互作用やガイドラインを確認する用途で使われており、運営会社は自社サイトで「今年、1億人を超える米国人がOpenEvidenceを使う臨床医の診療を受けることになる」と説明している。

3行まとめ

  • OpenEvidenceは米国の検証済み臨床医向け医療AIで、2026年1月にThrive Capital・DST主導のシリーズDで2.5億ドルを調達し評価額120億ドルに到達。月間の臨床相談件数は2025年初頭の約300万件から2025年12月には1,800万件に増加したとTechCrunchが報じている
  • NEJM・JAMA・Nature・NCCN・Cochraneとの公式コンテンツ提携に加え、2026年7〜8月だけでもAMSSM(スポーツ医学)・OneOncology(腫瘍)・Springer Nature・LA郡公衆衛生局との提携を相次いで発表しており、提携ペースは加速している
  • 2026年7月には、GRADE手法(Cochrane・WHO等が使う医療エビデンス評価の枠組み)に基づき回答の根拠の強さをA〜Dおよび判定不能(U)の5段階でリアルタイム評価する「EvidenceGrade」機能を公開。約4,500件のユーザー質問を無作為抽出したところ、平均グレードはBのやや上だったという

何をしているサービスか

OpenEvidence公式サイトの説明によると、同社は主要医学誌との公式コンテンツ提携を結んでいる。

  • **The New England Journal of Medicine(NEJM)**の公式AIパートナー
  • JAMAおよびJAMA Network専門誌の公式AIパートナー
  • **National Comprehensive Cancer Network(NCCN)**との公式AI協業(NCCNガイドライン治療アルゴリズムを含む)
  • NatureおよびNature Portfolioの公式AIパートナー
  • Cochrane Systematic Reviewsの公式AIパートナー

これらの提携により、図表・データ・マルチメディア・全文の臨床知見をOpenEvidenceのコンテンツに組み込んでいる、と説明されている。同社は「検証済み米国臨床医の間で最も広く使われている医療AI」だと自称しており、これまでに2億件を超えるAI活用型の臨床相談を米国の医師・最前線の臨床従事者に提供してきたとしている。

資金調達と評価額の推移

TechCrunchの2026年1月21日付記事によると、OpenEvidenceは同日、Thrive CapitalとDSTが共同主導するシリーズDで2億5,000万ドルを追加調達し、評価額は120億ドルに達したと発表した。これは2025年10月の前回調達(GV主導、2億ドル、評価額60億ドル)から約2倍への上昇にあたる。

同記事によると、これまでの累計調達額は7億ドルに達しており、出資者にはSequoia・Nvidia・Kleiner Perkins・Blackstone・Bond・Craft Ventures・Mayo Clinicなどが名を連ねている。

同記事はOpenEvidenceの事業規模についても具体的な数字を伝えている。

  • 無料・広告収入型のプラットフォームが、2025年12月単月だけで1,800万件の臨床相談を米国の検証済み医療従事者から受けた
  • 1年前(2025年初頭頃)は月間約300万件の検索規模だった
  • 売上高は1億ドルを突破した

TechCrunchは、OpenEvidenceを「前のインターネット世代におけるWebMDの、医師向け版」と位置づけつつ、Anthropicの「Claude for Healthcare」(患者・保険者・医療提供者向け)やOpenAIの新しい医療系プロダクト(より消費者向け)とは異なる、医師特化のポジションだと整理している。同記事はまた、OpenEvidenceを支援するVC陣が、OpenAI・Anthropicという2大AI企業が相次いで医療情報分野に参入してきたことを特段懸念していない様子だとも書いている。

提携ラッシュ──2026年7〜8月だけで6件

公式サイトの「News」ページ(告知・ブログの一覧)を確認すると、本記事が参照した「About」ページの5大提携(NEJM・JAMA・NCCN・Nature・Cochrane)以降も、提携・新機能の発表が途切れずに続いていることが分かる。直近の一覧は次の通り。

日付 内容
2026年8月27日 American Medical Society for Sports Medicine(AMSSM)とのパートナーシップ発表。スポーツ医学領域のAI教育リソースを共同開発
2026年8月19日 「Patient Take-Homes」機能をローンチ(患者向けに要約を提供する機能とみられる)
2026年8月10日 「OpenEvidence Games」ローンチ(MedMini・Synapsesという2つのコンテンツ)
2026年8月6日 OneOncologyとのパートナーシップ発表(腫瘍領域でのケア改善)
2026年8月5日 Springer Natureとの提携発表。あわせて継続教育(CE)・専門医資格更新(MOC)の単位が取得できる教育プラットフォームをローンチ
2026年7月23日 ロサンゼルス郡公衆衛生局との提携発表

わずか1か月あまりの間にこれだけの発表が続いていることから、OpenEvidenceは医学誌との提携だけでなく、専門医学会・地域公衆衛生機関・オンコロジー系医療機関など、提携先の種類を急速に広げている段階にあると見られる。

EvidenceGrade──回答の根拠の強さをA〜Dで評価する機能

2026年7月9日、OpenEvidenceは医師2名(Sam Finlayson氏・Travis Zack氏、いずれもMD・PhD)の署名で、回答の背後にあるエビデンスの強さをリアルタイムで評価する新機能「EvidenceGrade」を公式ブログで発表した。同ブログによれば、この手法はCochrane・WHO・主要な臨床ガイドラインの多くが採用する「GRADEフレームワーク」の主要原則を組み合わせたものだという。評価は5段階で構成される。

グレード 意味
A(強い根拠) RCTや厳密なシステマティックレビュー、質の高い前向きコホート等に裏付けられ、追加研究で結論が覆る可能性が最も低い
B(中程度の根拠) 妥当な研究デザインだが、サンプルサイズや代理アウトカムなどに一定の限界がある
C(限定的な根拠) ナラティブレビューや専門家意見など弱いデザインに依拠している
D(最小限の根拠) 症例報告・前臨床データ・機序からの推論などにとどまる
U(評価不能) 判断に足る根拠が不十分、または評価になじまない質問(用量の事実確認など)

同ブログは、OpenEvidence上のユーザーの質問約4,500件を無作為抽出して評価した結果も公開しており、平均グレードは「Bをわずかに上回る水準」で、腫瘍学・薬学・内分泌学・循環器学・一般内科などの領域では強い根拠に基づく回答が多い一方、老年医学・遺伝学・皮膚科など手技系・専門性の高い領域では根拠がやや弱い傾向にあったとしている。医療AIが「もっともらしい答え」ではなく「根拠の強さそのもの」を可視化しようとしている点は、他の分野の生成AIサービスとの比較でも参考になる取り組みだ。

チームの構成

公式サイトの「About」ページには、共同創業者Daniel Nadler氏(PhD、Harvard、TIME100 Most Influential People in Health選出)を筆頭に、多数のチームメンバーのプロフィールが列挙されている。目立つのは、MIT・Harvard・Stanford等の博士号・修士号を持つ機械学習系の研究者・エンジニアが多いこと、そしてAmaro・Vocodeという2つのスタートアップがOpenEvidenceに買収され、その創業メンバーがそのままチームに合流している点だ。医療知識そのものよりも、機械学習・プロダクト開発の専門性を中心にチームが構成されている様子がうかがえる。

日本の医師は使えるのか

OpenEvidence公式サイトの自己紹介文は「検証済み米国臨床医の間で最も広く使われている医療AI」と、対象をはっきり米国に限定した表現になっている。サインアップページは自動化ブロック(ボット対策)がかかっており、本記事の取得作業では日本の医師が登録可能かどうか・NPI番号(米国の医療従事者識別番号)以外の本人確認手段が用意されているかどうかを、公式ページから直接確認することはできなかった。

「全米医師の◯割」という数字は一次資料に見当たらなかった

  • 本記事はOpenEvidence公式サイトの「About」ページ、「News」一覧ページ、EvidenceGrade公式ブログ、TechCrunchの2026年1月21日付記事の4つを一次資料としている。2026年1月のシリーズD調達に関するOpenEvidence自身のプレスリリース原文は、Newsページの告知一覧が2026年7月以降のものに限られていたため見当たらず、直接確認できていない
  • 「Patient Take-Homes」「OpenEvidence Games(MedMini・Synapses)」の2機能は、Newsページの見出しから存在を確認したのみで、各機能の詳細な中身(何を患者に見せるのか、Gamesが何のためのコンテンツか)までは個別記事を開いて確認していない
  • EvidenceGradeの「約4,500件を無作為抽出」という評価結果は、OpenEvidence自身が公開した内部分析であり、第三者による再現・検証は確認できていない。GRADEフレームワークとの厳密な整合性についても、方法論の詳細(アルゴリズムの実装)までは公開ブログの範囲では分からなかった
  • 「全米医師の◯割が使っている」という具体的な普及率(パーセンテージ)の主張は、本記事で参照した2つの一次資料には数値として明記されておらず、確認できなかった。公式サイトが述べているのは「今年100万人を超える医師がOpenEvidenceを使う」ではなく「100万人を超える米国人がOpenEvidenceを使う臨床医の治療を受ける」という患者側からの表現である点に注意したい
  • 日本の医師の具体的な登録手順・利用可否は、公式サインアップページがボット対策で取得できず、本記事では確認できなかった

関連記事

シェア: ポスト はてブ

出典・参照資料

AIニュースの解説を動画でも

YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。

コメント

まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?

AIについて聞きたいことはありますか?

質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。

質問箱を見る →

新しい記事をメールで受け取る

AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。

関連記事