2026年8月28日 金曜日
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年率66%のAIファンドMedallion Fund — なぜ外に出すと「普通以下」になるのか

Renaissance TechnologiesのMedallion Fundは手数料前で年率66%。だが外部投資家向けファンドは2020年に-22.62%。年率66%を出したチームの、外向けの成績から読める教訓。

年率66%のAIファンドMedallion Fund — なぜ外に出すと「普通以下」になるのか
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目次

Medallion Fund — 史上最高のリターン

Renaissance Technologiesが運営するMedallion Fundは、1988年から2018年の間に手数料前で年率66%のリターンを記録した。手数料後でも39%。手数料構造は管理報酬2% + 成功報酬44%で、利益の約半分が手数料として差し引かれる。

これは投資ファンドの歴史上、最も高い長期リターンの一つ。創設者のジム・サイモンズは数学者であり、統計的手法とアルゴリズムで市場の非効率性を突く戦略をとった。

外部に出したら普通以下

ここからが教訓。

Medallion Fundは1993年以降、社員と元社員のみに限定されている。外部投資家は参加できない。

代わりにRenaissance Technologiesが外部投資家向けに運用したファンドがある。RIEF(Institutional Equities Fund)

RIEFの実績:2020年は-22.62%(12月25日時点)。S&P500を大幅に下回る年もある。

手数料前で年率66%という記録を残したチームが、外に出したバージョンでは普通以下の成績しか出せなかった。

2020年、Medallionは+76%、外部向けは-22%と-33%

ファンド 外部投資家 2020年のリターン
Medallion 不可(社員・元社員のみ) +76%
RIEF(Institutional Equities Fund) -22.62%(12月25日時点)
RIDA(Institutional Diversified Alpha) -33.58%(同時点)

出典はInstitutional Investor「Renaissance's Medallion Fund Surged 76% in 2020. But Funds Open to Outsiders Tanked.」(Michelle Celarier、2021年1月13日)。2026年8月14日に確認した。

同誌が2020年4月21日に出した記事(Amy Whyte)では、年初来リターンがMedallion +24%(4月14日時点)に対し、外部向けの3本は「年初来で7〜9%のマイナス」。内訳はRIEFが-7%、RIDAが-9%、RIDGEも4月17日時点でマイナス圏と書かれている。同記事はこの開きを「17〜19パーセントポイントの差」と表現した(原文: "a performance difference of some 17 to 19 percentage points"、生HTMLで確認)。ただし24%と-7〜-9%を単純に引くと開きは31〜33ptになり、17〜19ptとは一致しない。出典の原文でも17〜19ptが具体的にどの2つの数字の差を指すかは明記されておらず、この点は検算が合わないまま残る。

年率66%という数字の出どころも同じ記事で、期間は「1988年から2018年、手数料前」となっている。

なぜ差が生まれるのか

報道・分析から推測される要因:

  1. Medallionは容量制約がある: 戦略がワークするのは運用額が一定以下の場合のみ。大きくすると市場インパクトで自分の注文が自分を不利にする
  2. 最良の戦略は社内向けに温存される: 外部ファンドには二番手の戦略が回る
  3. 高頻度・短期戦略はスケールしない: Medallionの主力戦略は短期のアノマリー利用とされ、これは運用額を増やすほど効果が薄まる

AIヘッジファンドの墓場

Medallionの成功を再現しようとした試みもある。

Sentient Technologiesは2016年にAIヘッジファンドを開始。数千台のコンピュータで遺伝的アルゴリズムを走らせ、数兆の仮想トレーダーを生成・淘汰するアプローチをとった。

  • 2017年: +4%
  • 2018年: マイナス
  • 2018年9月: 2年未満で清算(Bloomberg報道)
  • 2019年: Sentient Technologies自体が解散、IP売却

個人が買えるAI運用ETFは、指数に何ポイント負けているのか

Medallionは買えないが、「AIが銘柄を選ぶ」と名乗る商品なら個人でも買える。代表例がAIEQ(Amplify AI Powered Equity ETF)。運用会社Amplify ETFsの公式ページによると、2017年10月17日設定、NYSE Arca上場、経費率0.75%、純資産は1億2,365万5,742ドル(2026年8月12日時点)。

同ページが載せる2026年7月31日(月末)基準のリターンと、State Street Global Advisorsの公式ページが同じ2026年7月31日基準で載せているS&P500指数のリターンを並べる。3年・5年はいずれも年率。

期間 AIEQ(基準価額ベース) S&P500指数
1年 15.79% 19.56% -3.77pt
3年(年率) 14.46% 19.32% -4.86pt
5年(年率) 4.55% 12.86% -8.31pt

差の列は左2列からの筆者計算。AIEQの設定来(2017年10月17日〜)は年率9.96%だが、まったく同じ期間のS&P500の数字はどちらの公式ページにも載っていないため、ここでは並べていない。

手数料の側も見ておく。経費率はAIEQが0.75%、SPY(S&P500連動ETF)が0.0945%で、約8倍の開き。純資産はSPYが8,127億2,606万ドル、AIEQが1億2,366万ドルで(いずれもSSGA・Amplify両公式ページで2026年8月12日時点と確認)、桁でいえば約6,600倍の差がある。指数に連動するだけの商品に資金が集まり、「AIが選ぶ」商品は規模が小さいまま、というのがこの2つの数字の示す状態。

手が届く側の代表的な商品(AIEQ)は、直近3期間ではS&P500に届いていない。上の表の3期間についての事実であって、AI運用一般の優劣を決める材料ではない。

AI運用を名乗る商品の「表示」そのものが問題になった例としては、SECがAI-washingの摘発を始めた件を別記事で扱っている。

教訓

  1. 「AIで投資」は魔法ではない。年率66%を出したチームですら、外部向けには普通以下
  2. 個人投資家がアクセスできるAI投資商品は、定義上「最良の戦略ではない」
  3. AIの投資における真の価値は「魔法の杖」ではなく「優秀な調査助手」の可能性が高い

RIEFの-22.62%は2020年単年、非公開ファンドで全容は不明

  • Medallion Fundの運用詳細は非公開。数字はInstitutional Investor等の報道ベース
  • RIEFの年次リターンの全容は公開されておらず、-22.62%は2020年単年(12月25日時点)の数字
  • Sentient Technologiesの2018年マイナスの具体額は非公開
  • 記事中の数字はすべて2026年6月時点

2026年8月14日の追記で確認したこと・できなかったこと

  • 訂正(本文に反映済み):本文の「RIEFの実績:2020年は-19%」は出典と一致していなかったため、Institutional Investor(2021年1月13日)に基づき**-22.62%(12月25日時点)に修正した。「17〜19」は同誌2020年4月21日記事にあるMedallionと外部向けファンドの開き(パーセントポイント)**であって、RIEF単年の騰落率ではない。ただしこの17〜19ptという数字自体、本文中のMedallion +24%(4/14時点)と外部向け-7〜-9%(4/17時点)からは検算が合わない(詳しくは本文「17〜19パーセントポイントの差」の段落を参照)
  • 年率66%の期間(本文に反映済み):本文は「1988年から2021年」としていたが、出典の2020年4月21日記事の記述は「1988年から2018年」だったため、出典の期間に修正した
  • 手数料後39%、および手数料構造(管理報酬2%+成功報酬44%)は、今回の確認では出典に当たれていない
  • RIDGEの2020年通年リターンは、確認した2本の記事のどちらにも載っていない
  • 同じAIEQでも集計基準日が違えば数字は動く。stockanalysis.comでは純資産1億957万ドル、直近1年18.39%、設定来の年率10.27%(2026年8月14日確認)。本文の表はAmplify公式の2026年7月31日基準に揃えた
  • 訂正(本文に反映済み):「AIEQとS&P500の比較は基準日を2026年7月31日に揃えたが、AIEQの純資産だけは2026年8月12日時点の値」としていたが誤り。SSGA公式ページでSPYの純資産表示を確認したところ「as of Aug 12 2026」であり、7月31日はリターン表(1年・3年・5年)の基準日であって純資産の基準日ではない。AIEQ(Amplify公式)・SPY(SSGA公式)とも純資産は2026年8月12日時点で一致しており、基準日のずれは無い。1年/3年/5年のリターン比較は両方とも2026年7月31日(月末)基準で揃っている
  • Sentient Technologies(Bloomberg, 2018-09-07)のsources欄URLはトップページ(https://www.bloomberg.com)のままで、個別記事URLを特定できていない。当該記事の再取得・再検証はできていない
  • AIEQの数値は過去の実績であり、将来の成績を示すものではない。この記事は特定の商品の売買を勧めるものではない
  • Sentient Technologiesの数字は今回の確認対象に含めていない。この点があるため verified: false を維持する
  • 2026-08-14: 「世界最強」という形容(excerpt・本文2箇所)は出典に無い評価表現だったため、記事内で裏の取れている事実(手数料前で年率66%)に置き換えた

更新履歴

  • 2026-08-14(2回目): RIEFの2020年実績を本文で-19%→-22.62%に修正(excerptも同様)。年率66%の対象期間を本文で「1988年から2021年」→「1988年から2018年」に修正。SPY純資産の基準日について「2026年7月31日時点」「基準日がずれているため概算」としていた誤りを削除し、AIEQ・SPYとも純資産は2026年8月12日時点で一致していることを明記(SSGA公式ページを直接取得し "as of Aug 12 2026" を確認)。但し書きから出典に無い「Wikipedia」表記を削除。「17〜19パーセントポイント」の出典引用について、本文の数値と検算が合わない旨の注記を追加。Institutional Investorの帰属を二重に述べていた1文、および直前の表を言い換えるだけの1文を削除
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