2026年8月28日 金曜日
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不登校35.4万人にAIが届いているのは3.7% — ICT出席扱いの現在地

不登校の小中学生は過去最多の35.4万人。ICT活用で出席扱いになっているのは1.3万人(3.7%)。すららの認定率70%、戸田市のAI予測モデルなど、数字で見る日本の不登校×AI。

不登校35.4万人にAIが届いているのは3.7% — ICT出席扱いの現在地
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目次

35万人と3.7%

文部科学省の令和6年度調査によると、日本の小中学校の不登校は35万3,970人。過去最多で、12年連続の増加

このうちICT(オンライン学習ツール等)を活用して出席扱いになっているのは1万3,261人。全体の3.7%

35万人のうち、テクノロジーが届いているのは3.7%しかいない。

小中別・学年別の内訳

出典は文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(令和7年10月29日公表、令和8年1月16日一部修正)。同資料には「小・中学校における不登校児童生徒数は353,970人(前年度346,482人)と過去最多となり、12年連続で増加した」と記載されている(2026年8月14日にPDFで確認)。

区分 不登校児童生徒数 うちICT出席扱い 割合
小学校 137,704人 4,828人 3.5%
中学校 216,266人 8,433人 3.9%
合計 353,970人 13,261人 3.7%

(人数は同資料の記載値。割合は本記事で算出した。)

学年別の不登校児童生徒数は次のとおり。中学2年・3年で急増し、小学1年と中学2年だけが前年度から減っている。

学年 令和5年度 令和6年度
小1 9,154人 8,738人
小2 13,694人 14,125人
小3 17,997人 19,460人
小4 23,090人 25,322人
小5 29,847人 31,979人
小6 36,588人 38,080人
中1 58,035人 58,736人
中2 77,768人 77,066人
中3 80,309人 80,464人

児童生徒1,000人当たりの不登校児童生徒数は38.6人(前年度37.2人)。

ICT出席扱いは6年で21.8倍になった

同資料には、ICT出席扱いの人数の推移も載っている。

年度 小学校 中学校 合計
令和元年度 434人 174人 608人
令和2年度 1,806人 820人 2,626人
令和3年度 4,752人 6,789人 11,541人
令和4年度 3,970人 6,439人 10,409人
令和5年度 3,785人 6,682人 10,467人
令和6年度 4,828人 8,433人 13,261人

令和元年度の608人から令和6年度の13,261人へ、6年で21.8倍(本記事で算出)。ただし令和3年度の11,541人から令和4年度は10,409人へ減り、令和5年度の10,467人まではほぼ横ばいだったが、令和6年度は13,261人へと前年度比26.7%増えている。この増減について、同資料に説明は書かれていない。

出席扱いになる条件は通知に明文化されている

「どうすれば出席扱いになるのか」の条件は、文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日、元文科初第698号)の別記2「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」に書かれている。

前提として、通知はこう定めている。

義務教育段階における不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行うとき,当該児童生徒が在籍する学校の長は,下記の要件を満たすとともに,その学習活動が,当該児童生徒が現在において登校を希望しているか否かにかかわらず,自ら登校を希望した際に,円滑な学校復帰が可能となるような学習活動であり,かつ,当該児童生徒の自立を助けるうえで有効・適切であると判断する場合に,指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができる。

その上で挙げられている要件は7つ。

# 要件 通知の記述(抜粋)
(1) 保護者と学校の連携 「保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること」
(2) ICT等の活用 「ICT(コンピュータやインターネット,遠隔教育システムなど)や郵送,FAXなどを活用して提供される学習活動であること」
(3) 訪問等による対面指導 「訪問等による対面指導が適切に行われることを前提とすること」。対面指導は学習支援や将来の自立に向けた支援などが「定期的かつ継続的に行われるもの」
(4) 計画的な学習プログラム 「当該児童生徒の学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること」。民間事業者が提供する場合は「民間施設についてのガイドライン(試案)」を参考に適否を判断する
(5) 校長による状況把握 校長が「対面指導に当たっている者から定期的な報告を受けたり,学級担任等の教職員や保護者などを含めた連絡会を実施したりするなどして,その状況を十分に把握すること」
(6) 学校外機関を使えない場合が基本 「基本的に当該児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けられないような場合に行う学習活動であること」
(7) 教育課程に照らして適切 成果を評価に反映する場合は「学校が把握した当該学習の計画や内容がその学校の教育課程に照らし適切と判断される場合であること」

出席日数への換算方法は通知本文では定めておらず、留意事項では「学校や教育委員会が,例えば,対面指導の日数や学習活動の時間などを基準とした規程等を作成して判断することなどが考えられること」という例示にとどめている。

「自治体ごとに違う」のは制度がそう作られているから

判断基準について、文部科学省は同じページのQ&Aでこう書いている。

一人一人の児童生徒の状況や学校,地域の実態が違うため,文部科学省から一律の基準を示すことはしていません。しかし,児童生徒の努力を学校として評価し,将来的な社会的自立に向けた進路選択を支援するという趣旨から,学校や教育委員会において一定の基準を作成しておくことは必要であると考えます。

基準が自治体ごとに異なるのは運用のブレではなく、国が要件だけを示し、具体的な基準づくりを学校・教育委員会に委ねた結果ということになる。

出席扱いにならなかった事例も公開されている

同じQ&Aには、教育委員会への聞き取りで把握した「出席扱いと判断しなかった」事例が2つ挙がっている。

  • 学校が家庭訪問等による対面指導を設定したが、家庭の協力が得られず、当該児童の状況や学習状況の様子が十分確認できなかった
  • 無料のインターネット学習プログラムを利用していたが、当該プログラムにおける学習のねらいや内容が明確でなかった

前者は要件(1)と(3)、後者は要件(4)に対応する。文科省が挙げているのは「例えば次のような事例を把握しています」という2件の例示にとどまり、傾向を示す集計データではない。

ICTだけが出席扱いのルートではない

同じ調査には、ICT以外の出席扱いの数字も載っている。

区分 児童生徒数 不登校全体に占める割合
学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受け、指導要録上出席扱いとした 42,978人 12.1%
自宅におけるICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした 13,261人 3.7%

調査資料には「学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受け、指導要録上出席扱いとした児童生徒と、自宅におけるICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒は重複もあり得る」と注記があり、単純に足し合わせることはできない。

また令和6年度から新設された調査項目として、自宅や学校外の機関等で欠席期間中に行った学習の成果を指導要録に反映した児童生徒数は81,467人(小学校22,889人、中学校58,578人)。出席日数にはならなくても、学習の成果が評価に反映されるケースはこの規模で存在する。

相談・指導そのものは、より広く届いている。学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けた児童生徒は218,246人(61.7%)、担任等から週1回程度以上の継続的な相談・指導等を受けた児童生徒を含めると339,005人(95.8%)。届いていないのは「誰かが関わること」ではなく、「学習が出席として認められること」のほうである。

機能しているツールはある

すらら — 出席扱い認定率70%

AIを活用した学習プラットフォーム「すらら」は、不登校の児童生徒がICTで学習した際に学校の出席扱いとして認定される率が70%。20自治体に導入されている(PR TIMES / すらら, 2025)。

出席扱いの要件は文科省のガイドラインで定められているが、認定の判断は学校・教育委員会に委ねられており、基準は自治体ごとに異なる

戸田市 — AIで不登校を予測する

埼玉県戸田市では、PKSHA Technologyと連携してAIで不登校を予測するモデルを導入した。欠席・遅刻のパターン、学習態度の変化など複数の指標からリスクを予測し、早期に支援につなげる取り組み。

導入校の9割が「信頼性が高い」と評価した(東洋経済報道)。

予測できれば、不登校が長期化する前に手を打てる可能性がある。

なぜ3.7%しか届いていないのか

ツールはある。効果もデータで示されている。しかし35万人のうち96%以上に届いていない。

考えられる要因:

  • 出席扱いの判断が学校・教育委員会に分散しており、統一基準がない
  • ICTツール導入の意思決定は学校単位のため、管理職の理解度に左右されるスタディポケットが約500万件の教員AI利用ログを分析した結果では、AIを深く活用している学校はヘビーユーザー教員が22.4%、AI未利用の学校は13.8%)
  • 不登校の原因は多様であり、ICTだけでは対応できないケースも多い
  • 機器・通信環境の整備状況にばらつきがある

これらに加えて、通知の条文そのものが対象範囲を絞っている。要件(3)は訪問等による対面指導が「定期的かつ継続的に」行われることを前提としており、家庭訪問の体制がなければ要件を満たせない。要件(6)は、ICT出席扱いを「基本的に当該児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けられないような場合」に限定している。自宅でのICT学習は、制度上、学校外の機関につながれない場合の受け皿として位置づけられている。

すららと戸田市の数字は一次資料で再確認できていない

  • 「ICT出席扱い」の基準・運用は自治体ごとに異なる
  • すららの「認定率70%」はすらら利用者を対象としたデータであり、全不登校児童生徒に対する数字ではない
  • 戸田市のAI予測モデルの精度(感度・特異度)の数値は報道では非開示
  • 不登校の原因は学業不振、人間関係、家庭環境など多岐にわたり、AIやICTで解決できる範囲は限定的
  • 文部科学省の数値は2026年8月14日に一次資料のPDFで確認した。参照したのは令和7年10月29日公表・令和8年1月16日一部修正版で、初出時(2026年6月26日)に記載した35万3,970人・1万3,261人に変更はなかった。学年別内訳・ICT出席扱いの推移・42,978人・81,467人などの数字は、この8月14日の確認時に同じ資料から追加したものである
  • 本文中の3.5%・3.7%・3.9%・12.1%・21.8倍は、調査資料に記載された実数から本記事で算出したもの。資料に直接記載があるのは実数と、1,000人当たりの人数(38.6人)
  • 「学校外の機関等で出席扱い」と「ICT出席扱い」は重複があり得ると調査資料に注記されているため、合算した「出席扱いの総数」は本調査からは分からない
  • 引用した通知は令和元年10月25日付で、別記2の対象は義務教育段階(小・中学校)。高等学校の遠隔授業等の取扱いは別の枠組みになる
  • すららの「認定率70%」「20自治体」および戸田市の「9割が信頼性が高いと評価」は、今回一次資料での再確認ができていない。PR TIMES・東洋経済の報道ベースの数字である

一次資料の再確認で見つかった訂正6件

  • 2026-08-14: 「令和3年度の11,541人から令和4年度は10,409人へ減っており、その後3年間は横ばいに近い」という記述を訂正。令和5年度は10,467人(令和4年度比+0.6%)だが令和6年度は13,261人(前年度比+26.7%)で、直近1年は横ばいではなかった
  • 2026-08-14: 通知の留意事項の引用「…規程等を作成して判断すること」から欠落していた「などが考えられること」(例示・任意を示す語句)を復元
  • 2026-08-14: 通知本文の引用冒頭で省略記号なしに落としていた「義務教育段階における不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行うとき,」を復元
  • 2026-08-14: 「教材の質そのものより、対面指導の体制と学習計画の明確さで判断が分かれていることが読み取れる」という一般化を削除。出典は「例えば次のような事例を把握しています」という2件の例示であり、傾向を示す集計データではなかった
  • 2026-08-14: 「管理職がAIを使う学校はヘビーユーザー教員が22.4%、使わない学校は13.8%」を「AIを深く活用している学校はヘビーユーザー教員が22.4%、AI未利用の学校は13.8%」に修正。リンク先記事が同じ数値について「管理職がAIを使う学校」全般の数字ではないと訂正済みで、本記事の表現がそれと矛盾していた
  • 2026-08-14: 「記事中の数字はすべて2026年6月時点」と、直後の2026年8月14日再確認の記述が矛盾していたため統合。学年別内訳・推移などの数字が8月14日の確認で追加されたものであることを明記した
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