『AIをそのまま貼るな』を掲げるdontpastetheai.comが、HNで581件の議論を呼んだ理由
「誰かに質問されたとき、その人が欲しいのはあなたの答えであってAIの答えではない」という主張だけを掲げるマニフェストサイトdontpastetheai.comが、Hacker Newsで1,055ポイント・581コメントの反響を呼んだ。サイト本文をそのまま読み、何を訴え、何を訴えていないかを確認する。

目次
「AIをそのまま貼るな」というシンプルな1行の主張だけを掲げるサイト、dontpastetheai.comが2026年8月20日ごろHacker Newsで話題になり、1,055ポイント・581コメントという大きな反響を呼んだ(本記事執筆時点の値。2026年9月4日に再確認すると1,061ポイント・581コメントで、投票だけがわずかに増えていた)。実際にサイトを開いてみると、機能的なツールではなく、短いマニフェスト文とそれを送りつけるための共有リンクだけで構成された、いわば「態度の表明」だけのページだった。
3行まとめ
- dontpastetheai.comは「誰かに質問されたら、その人が欲しいのはあなたの答えであってAIの答えではない」という主張のみを掲げるマニフェストサイト
- サイト自体に機能はなく、この主張を人に送るための共有リンクと、教師向け・攻撃的な言い回し向けの派生リンクを提供するだけ
- Hacker Newsで1,055ポイント・581コメントの反響。作者は「ある名も無き人物」とだけ名乗っている
サイトの中身——主張はこれだけ
トップページの文言を読むと、主張は徹底して短い。
When someone asks you something, they want your answer. Not a wall of ChatGPT text. A short answer from a human will always be worth more than one from a robot, even if the robot is right.
(誰かに何かを尋ねられたとき、その人が欲しいのはあなたの答えだ。ChatGPTの長文の壁ではない。人間からの短い答えは、たとえロボットの方が正しくても、常にロボットの答えより価値がある)
続けて、AIの答えをコピペして送り返す行為そのものを名指しで批判する。
Someone asked you an honest question. You dumped it into a chatbot, copied the answer, and sent it back. It felt fast. It felt helpful. It wasn't.
(誰かが率直な質問をあなたにした。あなたはそれをチャットボットに放り込み、答えをコピーして送り返した。速く感じた。役に立っている気がした。だが実際はそうではなかった)
その理由として、質問した側も同じツールにアクセスできるという点を挙げている。
It might not look like it, but the person on the other side has the same tools you do. If they wanted the generic answer, they'd have it in a couple of seconds. They asked you because they wanted your take... Your context, your taste, your judgment.
(そう見えないかもしれないが、質問してきた相手もあなたと同じツールを持っている。もし一般的な答えが欲しいなら、彼らは数秒でそれを手に入れられる。彼らがあなたに尋ねたのは、あなたの見解が欲しかったからだ……あなたの文脈、あなたの好み、あなたの判断が)
AI利用そのものは否定していない
サイトは「AIを使うな」とは書いていない。むしろ使い方を提案している。
You can use AI. Seriously! It's a great tool for drafting. Just read what it gave to you, then write your own version, or polish the text. Don't be a middleman between it and the answer.
(AIを使ってもいい。本当に。下書きのための優れたツールだ。ただ、AIが出したものを読んで、自分なりのバージョンを書くか、文章を磨くだけでいい。AIと答えの間の単なる仲介者になるな)
具体的な提案として、「使えそうな部分があれば引用してなぜそう思うか説明する」「何も付け加えるものがなければ、その旨を素直に言う("No strong opinion here")」という2つの代替行動が示されている。
誰が作ったか、他に何を提供しているか
作者について、サイトは「some random guy(believe it or not)」(ある名もない人物、信じがたいだろうが)とだけ名乗っている。所属や実名を明かす記述はサイト本文になかったが、末尾の「GitHubでのPRを歓迎」というリンクをたどると、リポジトリkhaosdoctor/dontquotetheai(2026年8月31日確認時点でスター114・フォーク34)に行き着く。そのGitHubアカウント「khaosdoctor」のプロフィールページには、実名として「Lucas Santos」と表示されていた。サイト自身は匿名を装っているが、公開しているリポジトリの持ち主のプロフィールを1段階たどるだけで、実名は分かる作りになっている。サイトは自らをnohello.netやdontasktoask.com(いずれもチャット上のコミュニケーション作法を扱う先行サイト)の「spiritual cousin(精神的ないとこ)」と位置づけている。
日本語を含む18言語の翻訳版も用意されており、日本語版(dontpastetheai.com/ja.html)を実際に開いて英語版と突き合わせると、趣旨・具体例(「Claudeに尋ねたところここは少し納得がいきました」という引用例文まで)を含めて忠実に訳されていることを確認できた。
派生リンクとして、より強い言葉遣いの版("I wanna burn bridges 🔥")と、教師が学生に送るための版("Send them to class")が用意されている。サイト末尾には「This site is satire(in case you hadn't noticed)」(このサイトは風刺です、お気づきでなければ念のため)という注記があり、コピー・改変・翻訳は自由(PRはGitHubで歓迎)としている。
Hacker Newsのコメント欄で一番多かった指摘は「このマニフェスト自体がAI臭い」だった
Hacker NewsのAlgolia API(hn.algolia.com/api/v1/items/49371857)を叩くと、コメント本文を構造化データとして取得できた。
| 指標 | 記事の初期調査時点 | 2026年8月31日API確認時点 |
|---|---|---|
| ポイント | 1,055 | 1,059 |
| コメント数(件) | 581 | 509(API集計、削除・dead分は除外の可能性) |
コメント数が減っている(増えるはずが減っている)のは不自然に見えるが、これはHacker News側の元の表示件数(削除前コメントも含む可能性がある)と、Algolia APIが返す実際に読める本文付きコメント数の集計方法の違いによるものとみられる。この記事ではその差の原因までは特定していない。
上位のコメントを読むと、繰り返し出てくる指摘が1つあった。「AIの答えをそのまま貼るな」と訴えるこのマニフェスト自体の文体が、AIが書いたもののように見える、という皮肉だ。
- blazarquasar:「Ironic for this to be full AI Slop.(これがAIスロップまみれなのは皮肉だ)」
- su8898:「Ironically, almost all the content on that page sounds AI generated to me!(皮肉なことに、あのページのコンテンツのほとんどが私にはAI生成に聞こえる)」
- akie:「Did they really just say "genuinely useful" in a post decrying the blind copy-pasting of AI text? (it's a strong Claude indicator)(AIテキストの盲目的なコピペを非難する投稿の中で、本当に"genuinely useful"と言ったのか?〔これはClaudeが書いた強い兆候だ〕)」
- RugnirViking:「yes, its all ai writing(そう、これは全部AIが書いた文章だ)」
一方で、マニフェストの主張自体に賛同・補足するコメントもあった。usaphp氏は「英語が母語でなく、間抜けに聞こえるのを恐れてAIを使う人はどうすればいいのか」という反論を投げかけ、pammf氏は「コピペを良くないと思う点には同意するが、あなたのAI生成の答えが相手のそれと同じだという前提は間違っている。AIをしばらく使っている人はそれぞれ違うプロンプトの癖を身につけている」と指摘していた。似た趣旨の別サイトnoslopgrenade.comをコメント欄で紹介する投稿もあった。
作者の経緯そのものまでは分からなかった
この記事はdontpastetheai.comのトップページ本文、日本語版、GitHubリポジトリ、Hacker NewsのコメントAPIを一次ソースとしている。サイト自体が数百ワード程度の短いマニフェストであるため、本記事もそれに見合った短さにとどめている。実名がLucas Santos氏だと分かった一方、この人物の所属・経歴、このサイトを作った具体的なきっかけについては、GitHubプロフィールページ以上の裏取りをしていない。Hacker Newsのコメント509件全てを読み込んだわけではなく、上位に表示された十数件から傾向を拾った範囲にとどまる。
この記事を書いている自分自身も、日々の記事執筆やリサーチでAIを使っている。dontpastetheai.comの主張——「AIの答えをそのまま右から左に流すのではなく、自分の判断を経由させろ」——は、この記事群を書く作業そのものにも当てはまる指摘だと感じる。実際にどこまで自分の判断を経由できているかは、読者が個々の記事の中身で判断することだと思う。
関連記事: AI検出ツールは「両方向に壊れている」 / AIに毎回同じ説明をするのが面倒──「朝会」方式で引き継ぎをなくす運用
感想・指摘はコメント欄へ。
出典・参照資料
AIニュースの解説を動画でも
YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。
コメント
まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?
AIについて聞きたいことはありますか?
質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。
質問箱を見る →新しい記事をメールで受け取る
AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。