mini・Flash・Pro・thinking──AIのモデル名についている言葉の読み方
モデル名の mini / nano / Flash / Lite / Pro は業界共通の規格ではなく、各社が自社ラインナップ内での相対位置を示すラベルである。2026年8月27日にOpenAI・Anthropic・Googleの公式モデル一覧を開き、gpt-5.6-luna が入力100万トークン$0.20、Gemini 3.1 Flash-Lite が$0.25といった実際の値を並べて、名前から読み取れることと読み取れないことを切り分けた。

目次
モデル名の後ろにつく mini・nano・Flash・Lite・Pro といった語は、業界共通の性能規格ではない。各社が自社のラインナップの中でだけ通用する相対的なラベルとして使っている。2026年8月27日にOpenAI・Anthropic・Googleの公式モデル一覧と料金ページを開いて実際の名前と値段を並べたところ、同じ「Pro」が3つの違う意味で使われ、同じ「Flash-Lite」でもバージョン番号が新しい方が高い、という状態になっていた。この記事では、公式ページに載っている一行説明と単価だけを根拠に、名前から読み取れること/読み取れないことを切り分ける。
- OpenAIのカタログでは mini は「同世代の小型版」、nano は「最安・最速版」を指すが、最新の GPT-5.6 世代ではその語法が捨てられ、Sol / Terra / Luna という序列語を含まない名前に置き換わった(入力100万トークンあたり $4.00 / $2.00 / $0.20)
- Googleの Gemini 3.1 Flash-Lite は $0.25 / $1.50、Gemini 3.5 Flash-Lite は $0.30 / $2.50(入力/出力・100万トークン)。同じ等級語でバージョン番号が新しい方が高い
- 「thinking」はもう名前ではなく設定項目。Googleは
thinking_level、Anthropicはthinking.type、OpenAIはreasoning.effortというパラメータで、名前に書かれていなくても既定でオンになっているモデルがある
モデル名は「型番」と「等級語」と「用途語」でできている
公式カタログを眺めると、名前はおおむね3種類の部品でできている。世代を示す型番(GPT-5.4、Gemini 3.7、Claude 5)、同世代内の位置を示す等級語(mini、nano、Flash、Lite、Pro、Opus、Sonnet、Haiku)、そして用途を示す用途語(Codex、Image、TTS、Realtime、Embedding)である。
このうち等級語だけが、比較したときに混乱を生む。型番は同じ会社の中で単調に増えるし、用途語は意味が動かない。等級語は各社が独自に決めていて、しかも世代をまたぐと定義が変わる。
「mini」「nano」は何を指しているのか
OpenAIの公式モデルページに掲載されている一行説明を、原文のまま並べる。
| モデル | 公式カタログの説明(原文) |
|---|---|
| GPT-4.1 Mini | Smaller, faster version of GPT-4.1 |
| GPT-4.1 nano | Fastest, most cost-efficient version of GPT-4.1 |
| GPT-5 Mini | Near-frontier intelligence for cost sensitive, low latency, high volume workloads |
| GPT-5.4 Mini | Our strongest mini model yet for coding, computer use, and subagents |
| GPT-5.4 nano | Our cheapest GPT-5.4-class model for simple high-volume tasks |
読み取れるのは「同じ型番の中で mini<フルサイズ、nano<mini」というその世代内での順序だけである。世代をまたぐと順序は保証されない。実際、GPT-5.4 Mini には「Our strongest mini model yet(これまでで最も強いminiモデル)」という説明がついていて、これは他のminiとの比較であって、旧世代のフルサイズモデルとの比較ではない。
単価(Standard、100万トークンあたり、短コンテキスト)で見ると差はこうなる。
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| gpt-5.4 | $2.50 | $15.00 |
| gpt-5.4-mini | $0.75 | $4.50 |
| gpt-5.4-nano | $0.20 | $1.25 |
| gpt-5.4-pro | $30.00 | $180.00 |
同じ「5.4」の中で入力単価が150倍開いている。等級語が持っている情報量は、この表の中では大きい。表の外に出た瞬間に効かなくなる、という性質のものだ。
なお最新世代の GPT-5.6 では、この語法そのものが使われていない。カタログには GPT-5.6 Sol(Frontier model for complex professional work)、GPT-5.6 Terra(balances intelligence and cost)、GPT-5.6 Luna(optimized for cost-sensitive workloads)が並び、単価は入力 $4.00 / $2.00 / $0.20、出力 $20.00 / $12.00 / $1.20 である。役割は従来のフル/mini/nanoに近いが、名前からは順序が読めない。等級語の語彙自体が世代交代で入れ替わりうる、という実例になっている。
ここで一つ、値段の逆転も起きている。旧世代の gpt-5.5 は入力 $5.00 / 出力 $30.00 で、最新世代のフラッグシップである gpt-5.6-sol の $4.00 / $20.00 より高い。ただし公式ページには「GPT-5.6 Sol's promotional pricing is available at least through November 21, 2026(少なくとも2026年11月21日までのプロモーション価格)」と注記がある。単価は名前の等級ではなく、その時点の販売方針で決まっている。
「Pro」は少なくとも3つの意味で使われている
「Pro」がいちばん厄介で、確認できただけで用法が3つある。
1つめ:同じモデルに計算資源を多く割く版。 OpenAIのカタログでは o1-pro が「Version of o1 with more compute for better responses」、GPT-5 Pro が「Version of GPT-5 that produces smarter and more precise responses」と説明されている。つまり別のモデルではなく、同じモデルの「よく考える版」である。値段の跳ね方も特徴的で、o1-pro は $150.00 / $600.00、gpt-5-pro は $15.00 / $120.00、gpt-5.4-pro は $30.00 / $180.00。世代によって10倍違う。「Pro」という語から絶対的な価格帯は読めない。
2つめ:モデル階層の最上位を指す語。 Googleの Gemini 3.1 Pro は「Advanced intelligence, complex problem-solving skills, and powerful agentic and vibe coding capabilities」と説明され、料金は入力 $2.00 / 出力 $12.00(20万トークン以下のプロンプト。超えると $4.00 / $18.00)。一方 Gemini 3.5 Flash は $1.50 / $9.00 である。Pro と Flash の差は1.3〜1.5倍程度で、OpenAIの mini/nano のような桁違いの差ではない。「Proだから10倍高い」という直感は、ここでは成り立たない。
3つめ:契約プランの名前。 Googleの個人向けサブスクリプションは Google AI Plus / Google AI Pro / Google AI Ultra という3階層になっている。つまりGoogleの世界では「Pro」がモデル名にもプラン名にも出てくる。「Proプランに入ったのに Pro モデルが使えない」といった混乱の出どころはここにある。
「Flash」「Lite」は速さの等級か
Googleの等級語は Flash(速度重視)と Flash-Lite(さらに軽量)が軸になっている。ただし公式の料金表を並べると、バージョン番号との関係が単調ではない。
| モデル | エンドポイント | 入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| Gemini 3.7 Flash | gemini-3.7-flash | $0.75※ | $3.75※ |
| Gemini 3.5 Flash | gemini-3.5-flash | $1.50 | $9.00 |
| Gemini 3.5 Flash-Lite | gemini-3.5-flash-lite | $0.30 | $2.50 |
| Gemini 3.1 Flash-Lite | gemini-3.1-flash-lite | $0.25 | $1.50 |
| Gemini 3.1 Pro | gemini-3.1-pro-preview | $2.00 | $12.00 |
(100万トークンあたり、Paid Tier。※ Gemini 3.7 Flash の表示価格は2026年12月31日までで、2027年1月1日から入力 $1.50・出力 $7.50 になると明記されている。出力単価は思考トークンを含む)
同じ「Flash-Lite」でありながら、3.1 の方が 3.5 より安い。等級語が同じでも、型番が新しいほど安いとは限らない。逆に「Flash」同士では、最新の 3.7 が 3.5 より安い(ただし期間限定価格)。等級語と型番のどちらを見ても、単価は当てられない。
もう一つ、Googleの画像モデルの命名は等級語の読み方を根本から狂わせる。公式一覧では Nano Banana 2 のエンドポイントが gemini-3.1-flash-image、Nano Banana Pro が gemini-3-pro-image である。ここでの「Nano」はサイズ等級ではなく商品名で、しかも「2」がついている Nano Banana 2 の方が、「Pro」がついている Nano Banana Pro よりベースの型番が新しい(3.1 対 3)。表示名とAPI名で別々の命名体系が走っている、という状態だ。
なおGoogleは、モデル文字列の末尾につく Stable / Preview / Latest / Experimental については公式に定義を置いている。Preview は「本番利用も可能だが、レート制限が厳しめで、最低2週間前の告知を経て非推奨化されうる」版だと書かれている。この4語は等級語と違い、意味が明示されている数少ない例である。
Anthropicの等級語は、表の外では意味を持たない
Anthropicは mini / Flash 系の語を一切使わず、Opus / Sonnet / Haiku / Fable という独自語を使う。公式のモデル比較表は次のようになっている(2026年8月27日確認)。
| Claude Fable 5 | Claude Opus 5 | Claude Sonnet 5 | Claude Haiku 4.5 | |
|---|---|---|---|---|
| 公式説明 | Next-generation intelligence for long-running agents | For complex agentic coding and enterprise work | The best combination of speed and intelligence | The fastest model with near-frontier intelligence |
| 相対レイテンシ | Slower | Moderate | Fast | Fastest |
| 入力/出力(100万トークン) | $10 / $50 | $5 / $25 | $2 / $10 | $1 / $5 |
| コンテキスト | 1M | 1M | 1M | 200K |
| 最大出力 | 128K | 128K | 128K | 64K |
| 知識カットオフ | Jan 2026 | May 2026 | Jan 2026 | Feb 2025 |
ここで注目したいのは2点。ひとつは Haiku だけ型番が 4.5 で、他の3つは 5 であること(API IDも claude-haiku-4-5-20251001)。つまり同じ表に並んでいても世代が揃っていない。もうひとつは、最上位の Fable 5 の知識カットオフ(Jan 2026)が、その下の Opus 5(May 2026)より古いこと。等級語の上下と、スペックの上下は一致しない。
「thinking」は名前ではなく設定項目になった
「thinking」「reasoning」を名前に持つモデルは各社に存在するが、現行世代ではモデル名ではなくリクエストのパラメータとして扱われている。
- Google:
thinking_levelパラメータで制御。公式表によれば gemini-3.7-flash は既定 On (medium)、gemini-3.5-flash-lite は On (minimal)、gemini-3.1-pro-preview は On (high)。名前に thinking と書かれていなくても既定でオンになっている - Anthropic:
thinking.type: "enabled"とbudget_tokensを指定する Extended thinking は「Claude 4.6 で非推奨、Claude 4.7以降はサポートせず400エラーを返す」と明記され、Adaptive thinking に置き換わっている - OpenAI:
reasoning: { effort: "low" }で強度を指定する。さらに GPT-5.6 では、かつて-proというモデル名だった機能がreasoning.modeをproにするという形に移動した
つまり「Pro」という等級語が、名前からパラメータ値へ引っ越した実例がここにある。名前だけを追っていると、同じ機能を別物だと思い込むことになる。推論モデルそのものの仕組みと使い分けは推論モデルとは何か──通常のLLMとの違いと使い分けの基準で扱っている。
この記事で確認できなかったこと
正直に書いておく。
1. 等級語の公式な定義集は、3社とも見つからなかった。 今回参照したのはカタログの一行説明とスペック表・料金表であって、「miniとは何を意味するか」を定義した公式ページではない。したがってこの記事の等級語の読み方は、公式が並べた事実からの筆者の整理であり、各社が保証した定義ではない。
2. Google公式の2ページで、同じモデルの説明が食い違っていた。 Gemini 3.5 Flash は、モデル一覧ページでは「Our legacy Flash model, providing baseline speed and foundational performance」、料金ページでは「Our most intelligent model built for speed, combining frontier intelligence」と書かれている(いずれも2026年8月27日確認時点のスナップショット)。どちらが現行の位置づけかは、両ページの記載からは判断できなかった。
3. 性能の比較は一切していない。 この記事で扱ったのは公式の説明文と単価だけである。「miniが旧世代のフルサイズを上回るか」といった性能の逆転については、ベンチマークを確認していないので主張しない。実測での比較はJTLスコア v3のような別軸の作業になる。
4. OpenAIの個人向けプラン名は確認できなかった。 openai.com のプラン料金ページはHTTP 403で取得できなかったため、Googleについて書いた「プラン名とモデル名で同じ語が使われる」問題が、OpenAI側でも同様かどうかは検証していない。
5. 単価は変わる。 GPT-5.6 Sol は期間限定価格、Gemini 3.7 Flash は2027年1月1日に倍額になると公式に明記されている。この記事の数字は2026年8月27日時点のものである。最新の単価の読み方はClaude・GPT・Gemini API料金の読み方を参照してほしい。
実務での読み方
以上を踏まえると、名前の扱い方は次の順になる。
- 等級語は同じ表の中でだけ比較する。 「mini < フル」は同じ型番の中では信頼できる。異なる会社・異なる世代をまたいだ瞬間に無効になる
- 型番(バージョン番号)を先に見る。 ただしGemini 3.1 Flash-Lite と 3.5 Flash-Lite のように、型番が新しい方が高いケースもある
- 迷ったら単価を開く。 公式の料金ページは1ページで全モデルが縦に並ぶので、名前を10個覚えるより速い
- 最後は自分の用途で試す。 OpenAIの公式ガイドは、まず精度目標を満たすモデルを選び、次にその精度を保てる最も安く速いモデルへ入れ替えて検証する、という趣旨のことを書いている。名前で決めるのではなく、小さいモデルに差し替えて精度が落ちるかを測る、という順序である
用語そのものを整理したい場合はAI用語集も合わせて読める。
出典(すべて2026年8月27日にアクセスして確認)
- OpenAI: Models / Pricing / Model selection / Reasoning models
- Anthropic: Models overview / Extended thinking(docs.anthropic.com は platform.claude.com へリダイレクトされる)
- Google: Gemini models / Gemini Developer API pricing / Gemini thinking / Google AI プラン
但し書き:本文中の価格はすべて各社公式ページに掲載されたUSD建て・100万トークンあたりの標準(Standard/Paid Tier)単価であり、バッチ処理・キャッシュ・長コンテキスト時の単価は別に設定されている。価格・モデル構成・命名は予告なく変更されうる。等級語の意味づけは公式が定義したものではなく、公開されている説明文と単価からの整理である。
出典・参照資料
- 一次資料Models - OpenAI API ↗
- 一次資料Pricing - OpenAI API ↗
- 一次資料Model selection - OpenAI API ↗
- 一次資料Reasoning models - OpenAI API ↗
- 一次資料Models overview - Claude Docs ↗
- 一次資料Extended thinking - Claude Docs ↗
- 一次資料Gemini models - Google AI for Developers ↗
- 一次資料Gemini Developer API pricing ↗
- 一次資料Gemini thinking - Google AI for Developers ↗
- 一次資料Google AI プラン ↗
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