AIキャラクターとビデオ通話ができる時代へ──Vidu S1は何が新しいのか
ShengShu Technology公式発表によると、2026年7月3日公開のVidu S1は540P・25fps(最大42fps)でのリアルタイム対話型動画生成モデル。1枚の画像から人物・アニメ・ペットいずれでもキャラクターを作れ、コンシューマー向けGPUで動作するという点を公式原文で確認した。

目次
動画生成AIは基本的に「プロンプトを送り、待ち、完成した動画を見る」というオフラインのワークフローで動いてきた。中国のShengShu Technologyが2026年7月3日に発表した「Vidu S1」は、この前提を変える——キャラクターと音声でリアルタイムに対話しながら映像を生成する、という設計になっている。この記事はShengShu公式プレスリリース、Vidu公式ページ、そしてPRが名指しした高速化技術の元論文(いずれも清華大学thu-mlグループがarXivで公開)を根拠に整理する。
3行まとめ
- ShengShu Technologyは2026年7月3日、シンガポールでの「2026 Global Digital Economy Conference」でリアルタイム対話型動画生成モデル「Vidu S1」を発表した。540P・25fps(最大42fps)で、1枚の画像からキャラクターを作成できる
- 公式プレスリリースは、消費者向けGPUで動作する理由として「TurboDiffusion」「SageAttention」など5つの高速化技術の名前を挙げている。うちTurboDiffusion側の論文は、単体のRTX 5090 1枚でも動画拡散モデルを100〜200倍高速化できたと報告している
- Vidu公式サイトのFAQは、Vidu S1を「世界初のリアルタイム対話型モデル」と位置づけており、自分のキャラクターを作らなくても運営側が用意した「PGCキャラクター」と通話を始められるとしている
オフライン生成からリアルタイム対話へ
PR Newswire掲載のShengShu Technology公式プレスリリースは、既存の動画生成モデルの限界を次のように説明している。
Most existing video generation models operate in an offline workflow: users submit a prompt, wait for the video to be generated, and then view the completed result. Once generated, the content remains fixed.
一度生成した動画は固定されており、キャラクターの動きやストーリーを変えたい場合は新しい動画を作り直す必要がある——一方通行の「作って見る」体験に限定されていた、という指摘だ。
Vidu S1はこれに対し、「リアルタイム対話型動画生成フレームワーク」を導入し、ユーザーがビデオ対話を通じて継続的に音声入力を行い、モデルがその音声・会話文脈・現在の映像文脈を処理して、続く映像コンテンツをリアルタイムに生成・更新する、という仕組みを採用している。
リップシンクを超えた「意味理解」ベースの表現
公式プレスリリースは、Vidu S1の音声インタラクションが単純なリップシンクとは異なる設計だと説明している。
Rather than relying on audio-driven lip movements and predefined animation libraries, the model interprets the semantic meaning, intent, and emotional context of spoken input to generate synchronized lip movements, facial expressions, eye movements, gestures, body posture, and full-body actions in real time.
音声波形に連動した口の動きや、あらかじめ用意されたアニメーションライブラリに頼るのではなく、話された内容の意味・意図・感情的な文脈を解釈したうえで、口の動き・表情・視線・ジェスチャー・姿勢・全身の動作をリアルタイムに生成する、という設計だ。
「AR + Diffusion」アーキテクチャで生成し続ける
Vidu S1のもう一つの技術的な柱が、動画全体を先に生成し切るのではなく、生成しながら更新し続けるアーキテクチャだ。公式プレスリリースは次のように説明している。
Vidu S1 adopts an autoregressive diffusion (AR + Diffusion) architecture. Rather than generating an entire video upfront, it continuously predicts and generates subsequent video content based on previously generated frames, current voice instructions, and conversational context.
自己回帰(autoregressive)とDiffusionを組み合わせたこのアーキテクチャにより、直前までに生成されたフレーム・現在の音声指示・会話文脈をもとに、続く映像を逐次予測・生成し続ける。ユーザーが新しい指示を出すたびに、キャラクターの表情・動き・その後のアクションがリアルタイムに更新され、会話全体を通してインタラクションが連続的に進化していく。
公式プレスリリースはこれを「unlimited-duration real-time video generation」とも位置づけている。単に生成を続けられるだけでなく、キャラクターの同一性を保ち続け、自然で一貫した動きを維持し、ユーザー入力を継続的に処理しながらリアルタイムに応答する必要がある——これらを組み合わせることで、長時間にわたってキャラクターが視覚的に一貫したまま応答し続けられる、としている。
発表時のスペック
公式プレスリリースが明記する技術仕様は次の通り。
- 解像度・フレームレート:540P(960×540)、25fps(最大42fps)
- キャラクター生成:1枚の画像から——実在の人物・アニメキャラクター・ペットのいずれでも——パーソナライズされた対話型キャラクターを即座に作成可能
- 音声:カスタマイズ可能な音声とセットでキャラクターを作成
- ハードウェア要件:システム全体がコンシューマー向けGPUで動作し、リアルタイム対話型動画生成のハードウェア要件を大幅に下げていると明記
発表の場は「2026 Global Digital Economy Conference」(シンガポール、2026年7月3日)だった。
なぜ「コンシューマー向けGPU」で動くのか——名指しされた5つの高速化技術
公式プレスリリースは、「コンシューマー向けGPUで動作する」という主張の根拠として、モデル側とシステム側それぞれの高速化技術を脚注つきで具体的に名指ししている。このうち2つは、清華大学(Tsinghua University)のthu-mlグループが公開したオープンな研究成果で、arXivの原論文を直接確認できた。
| 技術 | 開発元 | 論文が主張する効果 |
|---|---|---|
| TurboDiffusion | 清華大学thu-ml | 動画拡散モデルのエンドツーエンド生成を100〜200倍高速化。RTX 5090 1枚でも実証(Wan2.1/2.2の複数モデルで検証) |
| SageAttention(低ビット版) | 清華大学thu-ml | Attention計算をFlashAttention2比で約2.1倍、xformers比で約2.7倍高速化。FlashAttention3より高い精度も主張 |
| SLA(Sparse-Linear Attention) | ShengShu公式PRの脚注記載 | スパース線形注意によるDiffusion Transformerの高速化(原論文は本記事では未確認) |
| SpargeAttention | ShengShu公式PRの脚注記載 | 学習不要のスパースAttentionによる推論高速化(原論文は本記事では未確認) |
| TurboServe | ShengShu Technology | 推論サービングエンジン。ユーザー入力・キャラクター状態・視覚文脈を維持しながら、対話の状態に応じて計算資源を動的に割り当てる |
TurboDiffusion側の論文(arXiv:2512.16093)は、Wan2.2-I2V-14B-720P・Wan2.1-T2V-1.3B-480P・Wan2.1-T2V-14B-720P・Wan2.1-T2V-14B-480Pという複数の動画生成モデルで実験し、「単体のRTX 5090 1枚でも100〜200倍の高速化を達成し、映像品質は同等程度を維持した」と報告している。ただし、これはTurboDiffusionという汎用の高速化フレームワーク自体の実験結果であり、Vidu S1という製品そのものの実測ではない。ShengShuの公式プレスリリースは「Vidu S1はこれらの技術によって動いている(powered by)」と述べているにとどまり、Vidu S1本番環境での実際のGPU構成・スループット数値は公式ソースに記載がない。
使い方は3ステップ
Vidu公式ページ(vidu.com/vidu-stream)は、実際の利用フローを3ステップで説明している。
- キャラクターを作成:カスタムのペルソナ説明文または画像アップロードで、自分のキャラクターを作成
- 音声を選ぶ:音声クローニング、または音声のアップロードに対応
- チャットを開始:音声コマンドでキャラクターの動作を操作しながら対話
音声のカスタマイズについては、システムプリセット(音声ライブラリから高品質な音声を選ぶ)と、音声クローニング(自分の声を録音してクローンし、デジタルヒューマンに自分の声で話させる)の2方式が用意されている。
Vidu公式ページのFAQ(curlで確認)は、自分でキャラクターを作らなくても「PGC(Professionally Generated Content)キャラクター」――運営側があらかじめ用意したキャラクター――と通話を開始できるとも説明している。同じFAQは、Vidu S1を「世界初のリアルタイム対話型モデル(the world's first real-time interactive model)」と位置づけている。これはVidu側の自称であり、他社の同種モデルとの比較検証は本記事では行っていない。
想定用途
公式プレスリリースは、Vidu S1が対応しうる応用範囲として、AIコンパニオン・AIバーチャルインフルエンサー・インタラクティブライブ配信・ゲームNPC・ブランドAIアバター・インテリジェントカスタマーサービス・オンライン教育・XR体験を挙げている。API連携にも対応しており、開発者向けにはplatform.vidu.com/live/landingでの統合ドキュメントが案内されている。
日本語音声への対応可否は確認できなかった
限界を先に書く。
日本語での対話対応の有無。 Vidu Q3は英語・日本語・中国語の多言語出力に対応すると公式に明記されているが、Vidu S1のリアルタイム対話が日本語音声に対応しているかは、今回確認した公式ソースからは明記が見つからなかった。
料金・クレジット消費体系。 Vidu S1固有の料金・クレジット消費の詳細は、今回確認したプレスリリースと製品ページには具体的な記載がなく確認していない。
「コンシューマー向けGPUで動作」の具体的な要件。 ShengShu公式PRは「significantly reducing the hardware requirements」と述べ、TurboDiffusion・SageAttentionなど5つの高速化技術の名前を脚注で挙げている。このうちTurboDiffusion側の論文はRTX 5090 1枚での実証を報告しているが、これはTurboDiffusionという汎用フレームワーク自体の実験であり、「Vidu S1の本番環境が実際にRTX 5090を使っている」と読み替えることはできない。Vidu S1固有のGPUモデル・VRAM要件は、本記事で確認した公式ソースのどこにも明記がなかった。
SLA・SpargeAttentionの原論文は未確認。 ShengShu公式PRの脚注に記載されたタイトルはそのまま紹介したが、この2つについては原論文をarXivで特定・確認する作業を本記事では行っていない。TurboDiffusion・SageAttentionの2つのみ、原論文をcurlで取得し、要旨を直接確認したうえで数字を引用した。
「世界初」の主張は検証していない。 Vidu公式FAQの「世界初のリアルタイム対話型モデル」という表現は、公式サイトに書かれている通りに紹介したが、この主張が事実として正しいかどうか(先行する類似モデルの有無)は、本記事では調査していない。
関連記事
出典・参照資料
- 一次資料ShengShu Technology Unveils Vidu S1, Bringing Real-Time Interactive Generation to AI Video(PR Newswire公式リリース) ↗
- 二次資料Vidu S1 AI Video Model(Vidu公式ページ) ↗
- 一次資料TurboDiffusion: Accelerating Video Diffusion Models by 100-200 Times(arXiv:2512.16093、清華大学thu-ml) ↗
- 一次資料SageAttention: Accurate 8-Bit Attention for Plug-and-play Inference Acceleration(arXiv:2410.02367、清華大学thu-ml) ↗
AIニュースの解説を動画でも
YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。
コメント
まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?
AIについて聞きたいことはありますか?
質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。
質問箱を見る →新しい記事をメールで受け取る
AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。