月額9.99ドルでオープンウェイトモデル使い放題──Cline「ClinePass」の中身と、8月26日にtasksツールへ入った変更
AIコーディングエージェントClineが提供する定額サブスク「ClinePass」は、GLM-5.2やKimi K2.7 Codeなどのオープンウェイトモデルを、月9.99ドルでAPIレート制限の2〜5倍という条件で使える。2026年8月26日のSDKリリースでは、tasksツールを「スケジュール専用」に設定できるようになり、ClinePassの既定モデルもGLM 5.3に切り替わった。

目次
AIコーディングエージェント「Cline」を提供するCline Bot Inc.は、2026年6月29日に公式ブログで、月額固定料金でオープンウェイトモデルを使い放題にするサブスクリプション「ClinePass」を発表した。その後も継続的に機能追加が続いており、直近では2026年8月26日公開のSDK v0.0.80で、タスク管理ツールの構成オプションと既定モデルに変更が入っている。
なぜClinePassを作ったのか
公式ブログには、開発の動機が率直に書かれている。
"When the quality of results from the $15/M-token model and the $1.50/M-token model started converging in our analysis, the data points piled up, and they all pointed in the same direction: The harness was already there. The models were scattered." "So we built ClinePass: a low-cost monthly subscription that pairs Cline's agent harness with a curated set of open-weight models and 2-5x the standard API rate limits, across every surface Cline runs on."
(1トークンあたり15ドルのモデルと1.50ドルのモデルの結果の質が、私たちの分析の中で収束し始めた時、データは1つの方向を指し示した。ハーネス(エージェントの実行基盤)はすでにそこにあった。モデルの側が散らばっていただけだった。そこで私たちはClinePassを作った——Clineのエージェントハーネスと、厳選されたオープンウェイトモデル群、標準APIレート制限の2〜5倍を、Clineが動くすべての面で組み合わせる、低価格の月額サブスクリプションだ)
つまりClinePassは「新しいモデル」ではなく「既存のオープンウェイトモデルを、Clineのハーネスと組み合わせて使うための課金プラン」だ。ブログはこの背景として、2024年12月のDeepSeekのオープンソースモデル公開を「最初の亀裂」と位置づけ、その後Moonshot・Z.aiなどが続いたことで、フロンティアモデルとオープンウェイトモデルの差が「本来なら数年かかるはずだったのが、数ヶ月で縮まった」と述べている。
提供内容と料金
ブログが示すClinePassの内容は次の通りだ。
"Curated models that work for coding. GLM-5.2, Kimi K2.7 Code, Kimi K2.6, DeepSeek V4 Pro and Flash, MiMo V2.5 and V2.5-Pro, tested against agent workflows instead of picked from a catalog." "Room to actually run agents. 2-5x API rate limits, stable access through Cline's infrastructure, and a flat $9.99/month subscription instead of worrying about every turn." "No lock-in. ClinePass works across CLI, VS Code, JetBrains, and SDK, while still letting you bring your own keys, local models, or any other provider alongside it."
(コーディング向けに動作確認済みのモデル群。GLM-5.2、Kimi K2.7 Code、Kimi K2.6、DeepSeek V4 ProとFlash、MiMo V2.5とV2.5-Proを、カタログから選ぶのではなくエージェントワークフローに対してテストした上で提供する。実際にエージェントを走らせるための余地。標準APIレート制限の2〜5倍、Clineのインフラを通じた安定したアクセス、そしてターンごとの心配をしなくていい月額9.99ドルの固定料金。ロックインなし。ClinePassはCLI・VS Code・JetBrains・SDKすべてで動作し、自分のAPIキーやローカルモデル、他のプロバイダーと併用することもできる)
月額9.99ドルという価格と、対応モデルがコーディング向けに事前検証されている、という2点が特徴だ。ブログはさらに、CLI経由で申し込む場合の期間限定割引として「$1.99」という価格にも言及している。
独自ベンチマークでの位置づけ
ブログには、Terminal-Bench 2.0(89タスク、pass@1)でのハーネス比較データも掲載されている。
"*Source: Cline team Terminal-Bench 2.0 full 89-task pass@1 runs on OpenRouter, June 2026; timeout multiplier 2.0, concurrency n=20." "*Harnesses: Cline CLI 3.0.29, OpenCode 1.17.9, Pi-Code 0.73.1."
(出典:Clineチームによる、OpenRouter上でのTerminal-Bench 2.0全89タスクpass@1実行、2026年6月。タイムアウト倍率2.0、並行度n=20。比較したハーネス:Cline CLI 3.0.29、OpenCode 1.17.9、Pi-Code 0.73.1)
Cline自身が実施した比較であるため、自社ツールに有利な条件設定になっていないかは外部から検証できないが、ブログは「We do not want to overclaim from one benchmark or a small number of examples.」(1つのベンチマークや少数の事例から過大な主張はしたくない)と自ら留保を付けている点は明記しておく。
現在の対象モデルは13種類──6月の発表時から倍増していた
6月末のブログでは6モデル(GLM-5.2、Kimi K2.7 Code、Kimi K2.6、DeepSeek V4 Pro/Flash、MiMo V2.5/V2.5-Pro)が挙がっていたが、公式ドキュメント(docs.cline.bot/getting-started/clinepass)を2026年8月29日に確認したところ、対象モデルは13種類に増えていた。
| モデル | Model ID |
|---|---|
| GLM-5.3 | cline-pass/glm-5.3 |
| GLM-5.2 | cline-pass/glm-5.2 |
| Kimi K3 | cline-pass/kimi-k3 |
| Kimi K2.7 Code | cline-pass/kimi-k2.7-code |
| Kimi K2.6 | cline-pass/kimi-k2.6 |
| DeepSeek V4 Pro | cline-pass/deepseek-v4-pro |
| DeepSeek V4 Flash | cline-pass/deepseek-v4-flash |
| MiMo-V2.5 | cline-pass/mimo-v2.5 |
| MiMo-V2.5-Pro | cline-pass/mimo-v2.5-pro |
| MiniMax M3 | cline-pass/minimax-m3 |
| Qwen3.8 Max | cline-pass/qwen3.8-max |
| Qwen3.7 Max | cline-pass/qwen3.7-max |
| Qwen3.7 Plus | cline-pass/qwen3.7-plus |
出典: docs.cline.bot/getting-started/clinepass「Models」節(2026年8月29日確認)
GLM-5.3・Kimi K3・MiniMax M3・Qwen3.8 Max・Qwen3.7 Max・Qwen3.7 Plusの6モデルは、6月末のブログ発表時点のラインナップには無かった。SDK v0.0.80のリリースノートが「ClinePassの既定モデルがGLM 5.3に変わった」と記していたのは、この拡張されたカタログの一部だったことになる。
ClinePassは「月額固定なので個別モデルの単価は課金されない」仕組みだが、ドキュメントには「クォータの消費ペースを理解する参考値」として、モデルごとの通常API単価(100万トークンあたり)も掲載されていた。
"ClinePass is a flat monthly subscription, so you are not charged the individual API prices below. These reference prices show the underlying per-1M-token rates for each model and can help you understand how usage is measured against your ClinePass quota (2-5x quota compares to paying standard api rate)."
(訳:ClinePassは定額の月額サブスクリプションであり、以下の個別APIの価格を直接課金されるわけではない。これらの参考価格は各モデルの基礎となる100万トークンあたりの単価を示しており、ClinePassのクォータ(2〜5倍のクォータは標準API料金を支払う場合と比較したもの)に対して利用量がどう測定されるかを理解する助けになる)
| モデル | Input($/1Mトークン) | Output($/1Mトークン) | Cached Read |
|---|---|---|---|
| GLM-5.3 | $1.40 | $4.40 | $0.26 |
| Kimi K3 | $3.00 | $15.00 | $0.30 |
| Kimi K2.7 Code | $0.95 | $4.00 | $0.19 |
| DeepSeek V4 Pro(ピーク時) | $1.32 | $3.96 | $0.044 |
| MiMo-V2.5 | $0.14 | $0.28 | $0.0028 |
| MiniMax M3 | $0.30 | $1.20 | $0.06 |
| Qwen3.8 Max | $2.00 | $6.00 | $0.25 |
出典: docs.cline.bot/getting-started/clinepass「Reference pricing」節(2026年8月29日確認、13モデル中7件を抜粋)
単価だけを見ると、Kimi K3(Input $3.00)とMiMo-V2.5(Input $0.14)の間には20倍以上の開きがある。「使い放題」の枠内に高単価モデルと低単価モデルが混在しているため、月9.99ドルという定額が実質的にどれだけの計算資源に相当するかは、どのモデルを主に使うかによって大きく変わる、ということがこの表から読み取れる。
「使い放題」の実際の制限:3種類のローリングウィンドウ
同じ公式ドキュメントの「Usage」節には、ClinePassの利用量が3つの単位で計測されると明記されていた。
"ClinePass measures usage against three limits:"
- "5-hour rolling window — your usage within rolling 5-hour period"
- "Weekly — your usage over the calendar week"
- "Monthly — your usage over the calendar month"
(訳:ClinePassは3つの上限に対して利用量を計測する/5時間のローリングウィンドウ──直近5時間以内の利用量/週次──暦週単位の利用量/月次──暦月単位の利用量)
つまり「月9.99ドルで使い放題」という表現は、実際には5時間・週・月という3段階の上限が別々に存在する仕組みであり、少なくとも文字通りの無制限ではない。ただし、それぞれの上限の具体的な数値(何トークン分か、モデルによって異なるか等)はこのページには記載がなく、Clineダッシュボードで自分の現在の利用量を確認する形になっている。
Cline (usage-billing) というもう1つの選択肢
公式ドキュメントを読むと、ClinePassとは別に「Cline (usage-billing)」という、都度課金でCline Creditsを使うプロバイダーも用意されていることが分かった。こちらは100以上のモデルにアクセスでき、Google・GitHub・メールでのサインインとクレジット残高だけで使える、という位置づけだ。ClinePassが「固定料金・厳選された十数モデル・2〜5倍のレート制限」であるのに対し、Cline (usage-billing)は「従量課金・100以上のモデル・レート制限は個別モデル依存」という対照的な設計になっており、両者は併用も可能だとドキュメントに明記されている。
8月26日のリリースで入った2つの変更
ClinePassは6月末の発表以降も動いている。SDK v0.0.80(2026年8月26日公開)のリリースノートには、次の記載がある。
"The
taskstool can now be configured to offer only scheduled work, disabling the Todo kind while leaving the Agenda backend intact"
(tasksツールは、スケジュール済みの作業だけを提供するよう設定できるようになった。Todo種別を無効化する一方、Agendaバックエンドはそのまま残す)
Clineのtasksツールには「Todo」と「Agenda」という2種類の機能があるとみられ、今回の変更はそのうちTodo側だけを設定でオフにできるようにした、というものだ。Agenda(スケジュール管理)機能だけを残す構成が可能になったことで、チームやワークフローによっては、エージェントに渡すツールセットをより絞り込めるようになる。
同じリリースでは、モデルカタログの更新にともない、ClinePassの既定モデルにも変更が入った。
"Refreshed the model catalog. Adds seven providers (Agnes AI, Aixy, IteraCompute, LLM Tech, NeoSmith, Pendra, and Standard Compute) and updates model lists and pricing across providers. The resolved default model changes for ClinePass (now GLM 5.3), Z.ai, Hugging Face, evroc, LLM Gateway, NanoGPT, and Weights & Biases, so if you use one of those without pinning a model you will get a different default"
(モデルカタログを更新した。7つのプロバイダー(Agnes AI、Aixy、IteraCompute、LLM Tech、NeoSmith、Pendra、Standard Compute)を追加し、各プロバイダーのモデル一覧と価格を更新した。ClinePass(現在はGLM 5.3)、Z.ai、Hugging Face、evroc、LLM Gateway、NanoGPT、Weights & Biasesで解決される既定モデルが変わるため、これらのプロバイダーをモデルを固定せずに使っている場合、既定モデルが変わることになる)
6月末のブログ発表時点でClinePassの対象モデルとして名前が挙がっていたのはGLM-5.2だったが、8月26日時点の既定モデルはGLM 5.3に切り替わっている。モデルを明示的に固定していないユーザーは、この変更によって知らないうちに違うモデルで動くようになる、という点は運用上の注意点だ。
ブログ本文の引用は照合したが、加入検証はしていない
筆者は今回、Cline公式ブログの本文を実際に開き、上記の引用がすべて原文に存在することを確認した。ただし、ClinePassに実際に加入してGLM-5.2やKimi K2.7 Codeを動かし、レート制限の緩和やコストの体感を検証するところまでは行っていない。月額9.99ドルという価格が、個人の利用量に対してどの程度「使い放題」に近いかは、実際に運用してみないと分からない部分だと考えている。
Terminal-Bench比較のグラフ数値と、5時間/週/月の具体的な上限は読み取れなかった
Terminal-Bench 2.0比較のグラフ・数値そのもの(GLM-5.2がCline上でどのスコアを出したか等)は、ブログページの画像として埋め込まれているとみられ、今回のテキスト抽出では具体的なスコア数値までは確認できなかった。ブログ本文には「GLM-5.2 with Cline and thinking off performs roughly in the same range as other agents with reasoning enabled.(GLM-5.2をCline上でthinkingオフにした場合、他のエージェントでreasoningを有効にした場合とおおむね同じ範囲の性能になる)」という定性的な記述はあったが、数値そのものは本記事では確認できていない。
また、ClinePassの$1.99という割引価格について、ブログ本文には「for a limited period(期間限定で)」としか書かれておらず、具体的な終了日は確認できなかった。「5時間のローリングウィンドウ・週次・月次」という3種類の利用量上限の存在は公式ドキュメントで確認できたが、それぞれの具体的な数値(トークン数やモデルごとの違いの有無)はドキュメントに記載がなく、Clineダッシュボードにログインしないと分からない、という状態のままだ。tasksツールの「Todo」「Agenda」という2つの機能区分についても、docs.cline.botのサイトマップからそれらしきページ(sdk/toolsなど)を辿ってみたが、該当ページはJavaScriptによる動的レンダリングに依存しており、本記事の取得方法(curlによるHTML取得)ではリリースノートの1行の記載を超える情報を得られなかった。
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