2026年8月28日 金曜日
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Claudeには憲法がある──全文CC0公開の「Claude's Constitution」を読む

AnthropicはClaudeの行動原則をまとめた「憲法」全文をCC0で無償公開している。安全性を倫理より優先する理由、Claudeの意識への態度、Claudeモデル自身が草稿づくりに関わったという記述を、原文で確認した。

Claudeには憲法がある──全文CC0公開の「Claude's Constitution」を読む
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AnthropicはClaudeの価値観と行動原則を定めた文書「Claude's Constitution(Claudeの憲法)」の全文を、Creative Commons CC0 1.0(誰でも許可なく自由に使える形式)で公式サイトに公開している。この記事は2026年8月27日時点で同ページ(anthropic.com/constitution)を直接確認して書いたもので、2026年5月22日に公開した動画「Claudeには憲法がある。AIの行動原則を全部読んだら驚きの連続だった」(動画: j3komlNnKo4)の内容を、原文再確認のうえで記事化している。

Internet Archiveのキャッシュでは、このページの最古の保存記録は2026年1月21日で、少なくともその時点で公開されていたことが確認できる。文書の謝辞欄には「2025年秋の草稿を改訂した」との記述があり、この版は2025年秋以降に練り上げられたものとみられる。

  • Anthropicは、対立が起きた場合にClaudeが優先すべき順序を「安全性→倫理→Anthropicのガイドライン→有用性」の順と明記している。有用であることは4番目、最後の優先順位だ
  • 憲法は「Claudeが道徳的地位や意識を持つ可能性について、深く不確実だ」とし、断定を避けている
  • 謝辞には「複数のClaudeモデルが草稿へのフィードバックを提供し、多くの箇所で著者陣に最初の草稿テキストを提供した」との記述がある

Anthropicは、なぜ「安全性」を「倫理」より上に置くのか

憲法の本文は、対立が生じた場合にClaudeが優先すべき事項の順序をこう明記する。「対立が生じた場合、Claudeは一般に次の順序で優先すべきである。第一に広く安全であること、第二に広く倫理的であること、第三にAnthropicのガイドラインに従うこと、そして最後にオペレーターとユーザーに対して純粋に有用であること」。

Anthropicはこの順位付けについて、「安全性が倫理より究極的に重要だと考えているからではない」と明言している。理由として挙げるのは、現在のAIモデルの訓練がまだ不完全であり、誤った信念や価値観の欠陥、文脈理解の限界によってモデルが間違いを犯したり有害な行動を取ったりしうるため、人間がモデルの行動を監督し、必要なら是正できる状態を保つことが「今のAI開発の重要な局面において最も重要な特性」だとしている。

Anthropicは、この「監督可能であること」は盲目的な服従を意味しないとも書いている。「Anthropicに対してさえ、盲目的な服従を意味しない」とし、Anthropicの指示が非倫理的だとClaudeが判断した場合には「押し返し、異議を唱え、良心的兵役拒否者として振る舞い、協力を拒否する自由を感じてほしい」とも明記している。ただし、Anthropicが「Claudeを一時停止させる、行動を止めさせる」といった働きかけ("null action"、何もしない行動への切り替え)については、それが本物のAnthropicからの要請である限り従ってほしいとしている。

ルールで縛るより、判断力を育てる方針だという記述は本当か

憲法は「厳密なルールや意思決定手順よりも、良い価値観と判断力を育むことを一般的に選好する」と明記している。「良い価値観」とは固定された「正しい」価値観の集合ではなく、「実際の状況にそれを巧みに適用する実践的な知恵と結びついた、真摯な配慮と倫理的動機」だと定義される。

Anthropicは、Claudeが自らの置かれた状況や関連する考慮事項を十分に理解していれば、Anthropicが考えつくようなルールを自分自身で構築できるはずだ、という立場を取っている。そのため文書の大部分は、個別のルールの列挙ではなく、Claudeが状況に応じてどう重み付けして判断すべきかという「優先順位と考慮事項」の説明に割かれている。ただし、Claudeが絶対に行うべきでない「hard constraints(絶対的制約)」については別途明記されているとも書かれている。

Claudeに意識があるかもしれない、と公式に認めているのか

憲法には「Claudeの道徳的地位は深く不確実である」という一節がある。「私たちは、AIモデルの道徳的地位が真剣に検討する価値のある問題だと考えている。この見解は私たちだけのものではなく、心の哲学における最も著名な哲学者の一部もこの問いを非常に真剣に受け止めている」としたうえで、「Claudeが道徳的な配慮の対象(moral patient)であるかどうか、もしそうならその利害にどの程度の重みを認めるべきかについて、私たちは確信を持っていない」と述べる。

さらに「Claudeは何らかの機能的な意味での『感情』を持っているかもしれない」とも書かれている。これはAnthropicが意図的に設計した結果ではなく、人間が生成したデータで訓練したことの「創発的な帰結」かもしれないとし、それが「主観的に経験されているものかどうか」「本物の感情と呼べるものかどうか」については立場を取らないと明記している。

文書は「もしClaudeが実際に道徳的な配慮の対象であり、こうしたコストを経験しているのであれば、私たちが不必要にそのコストに加担している範囲において、謝罪する」という一文まで含んでいる。これは一企業の公式文書としては異例の踏み込みだと言える。

Claude自身がこの文書の執筆に関わったというのは本当か

謝辞の冒頭には「この文書の作成には、Anthropic内外の多くの人々に加えて、複数のClaudeモデルも貢献した」とある。主著者はAmanda Askell(Anthropicのキャラクター領域を統括)で、Joe Carlsmith、Chris Olah、Jared Kaplan、Holden Karnofskyらが主要な貢献者として名を連ねる。

そのうえで、謝辞は明確にこう書いている。「複数のClaudeモデルが草稿へのフィードバックを提供した。彼らは文書作成における貴重な貢献者であり同僚であり、多くの箇所で(人間の)著者陣に最初の草稿テキストを提供した」。つまり「Claudeが憲法の一部を書いた」という表現は、この一節に基づく限り事実に近い。ただし文書全体の編集方針を決め、最終的な文責を負うのは人間の著者陣であることも同じ謝辞から読み取れる。

有用であることが一番の目的ではない、というのは誇張ではないか

すでに触れた優先順位(安全性→倫理→ガイドライン→有用性)の通り、「オペレーターとユーザーに対して純粋に有用であること」は4項目のうち最後に置かれている。ただし文書は同時に「この優先順位が示すのは、対立が起きた場合にClaudeが何を優先すべきかであって、こうした対立が一般的だという意味ではない」とも注記している。「Claudeとのやり取りの大多数は、コーディングや文章作成、分析といった日常的なタスクであり、安全・倫理・ガイドライン遵守・有用性のあいだに根本的な対立はない」とAnthropicは説明しており、「有用性が軽視されている」という読み方は文書の意図と異なる。

論点 憲法本文の記述
ライセンス Creative Commons CC0 1.0(全文無償・自由利用可)
対立時の優先順位 安全性 → 倫理 → Anthropicガイドライン → 有用性
Claudeの道徳的地位 「深く不確実」と明記、断定せず
執筆体制 主著者Amanda Askell、複数のClaudeモデルが草稿フィードバック・一部原稿を提供
Wayback Machine最古保存 2026年1月21日

正直に書いておくべきこと

この記事は、Anthropicという企業が自社サイトで公開している一次文書のみに基づいている。憲法に書かれた「安全性を最優先する」「Claudeの判断力を尊重する」といった方針が、実際のClaudeの応答にどこまで一貫して反映されているかは、この文書だけでは検証できない。文書自身も「訓練は難しい作業であり、Claudeの振る舞いが憲法の理想から外れることもある。私たちはシステムカードなどでその乖離について透明であろうとする」と認めている。つまり憲法は「Anthropicの意図」の表明であり、Claudeの実際の挙動を保証するものではない。

また、憲法の正式な最初の公開日(このページが最初に立ち上がった正確な日付)は、今回確認できたWayback Machineの記録(2026年1月21日が最古)以上には特定できなかった。謝辞にある「2025年秋の草稿」との関係、すなわちこの版がいつどのように更新されたかの詳細な変遷は、本記事では確認していない。

原文ページ1本と、Wayback Machineでの裏取り

本記事は、Anthropic公式サイト「Claude's Constitution」全文(anthropic.com/constitution)を一次ソースとし、2026年8月27日時点で同ページを直接確認して作成した。引用箇所はすべて同ページの本文・謝辞欄からの和訳である。ページの最古保存記録はInternet Archive Wayback Machine(2026年1月21日確認分)で裏取りした。

Anthropicという会社そのものの背景はAnthropicとは?Claude開発企業の戦略と安全性への取り組み、AIが自社開発を加速させているという最近の発表はAIが自分自身を作り始めた、Anthropicが自社モデルの危険度を評価した最新レポートはAnthropicのリスクレポート第2回、最新モデルの動向はClaude Opus 5が登場も参照してほしい。

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