Claude Codeのクラウドセッションを自社インフラで動かす──self-hosted environmentsの仕組みと向き不向き
Anthropicが2026年8月6日、Claude Codeのクラウドセッションを自社インフラ上で実行できる「self-hosted environments」を公開ベータで開始した。Team/Enterprise向けで、社内ネットワークにパブリック露出せずアクセスできる一方、公式は「大半の企業はAnthropicホスト版で十分」と明言している。仕組みと導入条件を公式ドキュメントから整理した。

目次
Claude Codeを「claude.ai」やモバイル・デスクトップアプリ、スケジュール実行の「routines」から起動すると、そのセッション(=クラウドセッション)は既定でAnthropicのインフラ上で動く。2026年8月6日、Anthropicはこのクラウドセッションを自社のネットワーク内で実行できる「self-hosted environments」を公開ベータで開始した。Team・Enterpriseプラン向けの機能で、公式ドキュメントで仕組みと制約が細かく説明されている。
個人や小規模チームが直接使う機能ではないが、「Claude Codeがどこまで社内ネットワークに踏み込めるのか」を理解する材料として、仕組みを一次資料から整理しておく。
- self-hosted environmentsは、クラウドセッションの実行場所をAnthropicのインフラから自社ネットワーク内の「ランナー」に切り替える公開ベータ機能。Team・Enterprise向けで、既定オフ
- 導入にはClaude Code v2.1.224以上・Git 2.24以上・NTP同期(時計のズレが5分を超えると認証が失敗)・Linux/macOSホストが必要。Windowsはランナーホストとして非対応で、Linuxコンテナ内で動かす必要がある
- ランナー1台のデフォルト同時セッション数(
--capacity)は1。環境の秘密鍵(environment secret)は作成から365日で失効する
そもそも「クラウドセッション」とは何か
Claude Codeには2種類の実行形態がある。
- ローカルセッション: ターミナルやIDEで動かす、開発者自身のマシン上のセッション
- クラウドセッション: claude.ai、モバイル/デスクトップアプリ、ターミナルからの
claude --cloud、スケジュール実行のroutinesから起動するセッション。既定ではAnthropicのインフラ上で動く
self-hosted environmentsが変えるのは後者だけだ。ターミナルやIDEでいつも通りローカルに動かしている場合、設定すべきものは何もない。「自分の常時稼働マシンでClaude Codeを動かし、他の端末から操作したい」という個人向けの用途なら、この機能ではなく別機能のRemote Control(Pro/Maxプランでも利用可)が該当する、と公式ドキュメントは明記している。
仕組み:環境・ランナー・セッションの3層
self-hosted environmentsは3つの要素で構成される。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| Environment(環境) | クラウドセッションの送り先となる名前つきの設定。組織がclaude.aiの管理画面で作成し、複数のランナーをまとめる |
| Runner(ランナー) | 社内ネットワーク上のホストで動く常駐プログラム。セルフホストCIランナーと同じ発想 |
| Session(セッション) | 開発者が開始した1つのClaude Codeタスク |
開発者がクラウドセッションを開始すると、セッション開始画面の環境選択で、Anthropicホストの環境と並んで組織が作成した環境を選べる。自社環境を選ぶと、Anthropicの制御プレーンがセッションを環境のキューに置き、空きのあるランナーがそれを受け取ってリポジトリをクローンし、自社ホスト上でClaude Codeプロセスを起動する。
ネットワーク的なポイントは、Anthropicから社内ネットワークへの接続は一切ないという設計だ。ランナーからAnthropic(api.anthropic.com)への通信は常に外向き(outbound)で、キューのポーリング・セッションのイベントストリーム・モデル推論のすべてがこの経路を通る。社内サービスやデータベース、レジストリへのアクセスは、パブリックインターネットに露出させずにランナー経由で行える。
セッションのライフサイクルはこう動く。
- 空き容量のあるランナーがセッションを受け取り、リースを保持
- ランナーがリポジトリを作業ディレクトリにクローンし、子プロセスとしてClaude Codeを起動
- 子プロセスがHTTPS経由でイベントをストリーム配信、ランナーはポーリングを継続(ポーリングがハートビートを兼ねる)
- ランナーのポーリングが約60秒止まると、サーバーはセッションを別のランナーに再キューイングする
1台のランナーは同時に1ユーザーのみを担当する。最初に受け取ったセッションのアカウントに「ロック」され、そのユーザーのセッションだけを、設定した並行数の上限まで処理する。つまり必要なランナー数の下限は「同時にアクティブなユーザー数」になる。
利用条件と制限(公式ドキュメント記載)
- プラン: Team・Enterprise組織向けの公開ベータ。既定オフで、Ownerが管理画面「Cloud environments」で有効化する。前提として組織で「Claude Code on the web」が有効になっている必要がある
- Zero Data Retention(ZDR): ZDRを有効化している組織では利用不可
- モデル推論: Anthropic API経由の推論のみ。Amazon Bedrock、Google CloudのAgent Platform、Microsoft Foundry、LLMゲートウェイ経由へのルーティングは不可
- 対応サーフェス: Claude Code on the web、モバイル/デスクトップアプリ、スケジュール実行の
routines、ターミナルのclaude --cloudまたは--environment指定は対応。Claude Tag・Claude Security・Code Reviewのセッションはまだ自社環境にルーティングされない(別途対応予定) - リポジトリ: GitHubからのチェックアウトのみ対応
- 課金: 自社環境上のセッションも、Anthropicホスト環境と同じようにClaude Codeの利用枠を消費する
導入の実務要件(Quickstart公式ドキュメントより)
「正直に:この記事の範囲」で当初触れていなかったQuickstartページの中身を、あらためて公式ドキュメントから直接確認した。実際に最小構成(ランナー1台・テストセッション1つ)を立てるまでに必要な要件は次の通り。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| Claude Codeバージョン | v2.1.224以上(self-hosted-runnerサブコマンドが必要。native installerのlatestチャンネルは即時反映、stableチャンネル・Homebrewは約1週間遅れ) |
| Git | 2.24以上(デプロイ時の一部オプションはさらに新しいバージョンが必要) |
| OS | Linux・macOSのホスト/コンテナ。Windowsは非対応、Linuxコンテナで代替 |
| ネットワーク | api.anthropic.com・claude.ai・gitホストへのアウトバウンドHTTPS |
| 時計同期 | NTP等で同期必須。5分以上のズレで認証失敗 |
| 環境の秘密鍵 | claude.ai管理画面で作成時に一度だけ表示され、再取得不可。作成から365日で失効 |
| デフォルト同時実行数 | --capacityフラグ、既定値1(同一ランナーは同じロックされたオーナーのセッションのみ扱う) |
セットアップ自体はclaude self-hosted-runner setupという対話式のガイド付きコマンドが用意されており、環境の作成・ランナー起動・登録確認までを一通り案内してくれる、と公式ドキュメントは説明している。手動セットアップの場合も、環境作成→秘密鍵をファイルに保存→ claude self-hosted-runner --environment-secret-file ... --base-dir ... でランナー起動→claude.ai側でセッションを環境に振り分け、という4ステップで完了する規模感だ。
何が手に入るか、何を背負うか
公式ドキュメントは「ほとんどのチームはAnthropicホスト版のほうが向いている。インフラの構築・保守が不要だから」と明記したうえで、自社ホストが向くのは「ネットワーク・ツール・コンプライアンス要件で、セッション実行を自社管理下に置く必要があるチーム」だとしている。選ぶ側は、ランナーイメージのビルド・保守、ランナー群の運用、ネットワークの管理を引き受ける前提だ。
見返りに得られるのは次の3点。
- ネットワークアクセス: セッションが社内ネットワーク内で動き、パブリックに公開せずに内部サービス・DB・レジストリへアクセスできる
- カスタムツール: コンパイラ・SDK・社内CLIをランナーイメージに事前インストールしておける
- コンプライアンス: リポジトリのチェックアウトやビルド成果物を自社管理インフラ内に留められる(ただしセッション内容=プロンプト・応答・ツール結果は、モデル推論のためにAnthropicの
api.anthropic.comへ送られる。この点は自社ホストでも変わらない)
正直に:この記事の範囲
self-hosted environmentsの概要ページとQuickstart・Referenceページは実際にcurlで取得して確認したが、Kubernetes/Composeでのデプロイレシピ(Deploy to productionページ)・料金面での違いの有無・claude self-hosted-runner setupの対話式ガイドを実際に自分の手で動かしての検証は、この記事では行っていない。公式ドキュメントは「Quickstart」「Deploy to production」「Customize sessions」「Reference」など複数のサブページに分かれており、それぞれ数千語規模のリファレンスになっている。実際に自社ランナーを立てる段になったら、公式の該当ページを読むことをおすすめする。また、Anthropicが2026年8月に発表したClaude Platform側のガバナンス機能群(Compliance API、Inference hooksなど)とこの機能がどう連携するかは未確認。
Claude Codeそのものの使い方や料金体系はClaude Code 使い方・料金・できること【2026年最新ガイド】、エラー時の切り分けはClaude Codeがエラーで動かない時の切り分け手順を参照してほしい。
出典・参照資料
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