メタ検索エンジンsearxの作者が、13年後に「もう他社エンジンには頼らない」検索を作った理由
自己ホスト型検索エンジン「Hister」の開発者asciimoo氏は、2013年に始まったメタ検索エンジンsearx(現SearXNGの前身)のオリジナル作者でもある。searxのGitHubリポジトリに残る「開発の軸足を移した」という本人の告知文と、Hister経由でMatrixチャットを検索可能にするコミュニティ製ボットの実装を、それぞれ一次ソースから確認した。

目次
当サイトでは以前、自己ホスト型検索エンジン「Hister」を扱った。その記事では、開発者のGitHubアカウントasciimooについて「他にどのようなプロジェクトを手がけているかは確認できておらず、憶測で書くことは避けた」と正直に書いていた。今回、asciimoo氏のもう一つのリポジトリsearxを確認したところ、この人物が2013年に始まったメタ検索エンジン「searx」(現在の「SearXNG」の前身)のオリジナル作者でもあることが分かった。
3行まとめ
- GitHubアカウント
asciimooは、2013年10月に作成されたsearx(プライバシー重視のメタ検索エンジン、実測スター13,540)のオリジナル作者であり、2026年1月4日に作成されたhister(実測スター3,119)の作者でもあるsearxのREADMEには「開発の軸足をHisterに移した」という本人による告知が残っており、メタ検索エンジンという設計そのものの限界をHister開発の動機として説明している- Hister自体の応用事例として、Matrixチャットの会話をリアルタイムにHisterへ取り込み、検索・要約できるようにするコミュニティ製ボット「hister-matrix-bot」も公開されている
searxのREADMEに残る「重要なお知らせ」
asciimoo/searxリポジトリのREADME.rstを開くと、本文の一番上に太字の告知が置かれている。
I wanted to share a personal update with the community: I have shifted my active development focus away from this project to a new search tool I have been building called
Hister <https://github.com/asciimoo/hister>_.
(コミュニティに個人的な近況を共有したい。私はこのプロジェクトから開発の軸足を移し、新しく作っている検索ツール「Hister」に注力するようになった)
なぜ移行したのか、という理由についても、README自身が明確に書いている。
Searx is a metasearch engine, which means it is fundamentally dependent on third-party search engines. This creates inherent limitations that are difficult to solve within the current architecture: Results are only as good as what upstream engines expose / Privacy guarantees are partial because requests still leave your machine / Relevance ranking is limited to what scraped results provide / There is no persistent memory of what you have already read or found useful
(searxはメタ検索エンジンであり、根本的にサードパーティの検索エンジンに依存している。これは、現在のアーキテクチャの中では解決が難しい、本質的な限界を生む。結果の質は、上流の検索エンジンが公開する範囲を超えられない/リクエストが依然として手元のマシンから外に出るため、プライバシー保証は部分的でしかない/関連度ランキングは、スクレイピングされた結果が提供する範囲に限られる/すでに読んだもの・役に立ったものについての永続的な記憶がない)
そして、Histerが選んだアプローチをこう対比している。
Hister takes a different approach. Instead of querying other engines, it indexes content you choose (web pages, local files, browser history) into a fully local, self-hosted full-text search index.
(Histerは異なるアプローチを取る。他のエンジンに問い合わせる代わりに、自分が選んだコンテンツ(Webページ、ローカルファイル、ブラウザ履歴)を、完全にローカルで自己ホストされた全文検索インデックスへと取り込む)
「他社の検索結果を借りてくる」設計から、「自分が見たものだけを自分のインデックスに溜める」設計へ——この転換の理由が、開発者自身の言葉でsearxのREADMEに書き残されているのを確認できた。「Searx is no longer maintained.(searxはもうメンテナンスされていない)」は、README(全160行)の冒頭の告知(37行目)に置かれ、後半の「Is searx for me?」の節(112行目)でも繰り返されている(2026年9月4日にrawで取得して行番号を確認)。
searxからSearXNGへ、という別の系譜
ここで一つ整理しておきたいのは、asciimoo/searx自体は現在活動を止めている一方で、そこからフォークして生まれた「SearXNG」というプロジェクトは、asciimoo氏とは別のコミュニティによって現在も開発が継続されているという点だ。searxのREADMEにある「開発の軸足を移した」という告知は、あくまでオリジナルのsearxリポジトリについてのものであり、SearXNG側の開発体制について何かを述べたものではない。searxng/searxngのREADME.rstを実際にcurlして確認すると、GitHub Organizationとして運営され、専用ドキュメントサイト(docs.searxng.org)・Codebergの翻訳プラットフォーム(translate.codeberg.org)・コミット活動バッジまで備えた、個人リポジトリとは別の体制で継続していることが確認できた。この記事では、searxリポジトリのREADME本文とこの体制確認に書かれている範囲を超えて、SearXNGの現状について踏み込むことはしない。
3つのプロジェクトの立ち位置を整理すると次の通りだ。
| プロジェクト | 開発体制 | この記事で確認できた状態 |
|---|---|---|
searx(asciimoo/searx) |
asciimoo氏個人 | メンテナンス終了。README冒頭に開発終了の告知 |
SearXNG(searxng/searxng) |
asciimoo氏とは別のコミュニティ、GitHub Organization | 現在も開発継続中(README上のドキュメント・翻訳体制から確認) |
Hister(asciimoo/hister) |
asciimoo氏個人 | searxから開発の軸足を移した後継。自己ホスト型ローカル全文検索 |
MatrixチャットをHisterに接続するコミュニティ製ボット
Hister自体の応用範囲を示す一例として、gotlougitというGitHubアカウントが公開している「hister-matrix-bot」がある。READMEは、その機能を次のように説明している。
Matrix bot that listens in allowlisted rooms, indexes URLs into Hister, and replies to search triggers with threaded top results. [...] Extracts and indexes unique http:// / https:// URLs via Hister POST /add. [...] Handles /catchmeup by summarizing recent room chat with an LLM.
(許可リストに登録されたルームで待機し、URLをHisterへインデックス登録し、検索トリガーに対してスレッド形式で上位の結果を返信するMatrixボット。[中略]一意なhttp:///https://のURLを抽出し、HisterのPOST /add経由でインデックス登録する。[中略]/catchmeupコマンドを処理し、LLMで直近のルームチャットを要約する)
このボットは、Hister本体の開発チームによる公式プロジェクトではなく、READMEにも次のような率直な注意書きがある。「ローカルファーストのAI関連ツールにどこまで権限を渡すか」という論点は、当サイトがMunder DifflinのSECURITY.mdを扱った際にも触れたテーマと重なる。
This is a vibe coded experiment! It is meant to be secure, but MAY NOT be! Self-host it, with as little permission as possible granted to it.
(これはvibe codedな実験だ! 安全であることを意図してはいるが、そうでない可能性もある! できる限り少ない権限で、自分でホストしてほしい)
作者自身が「vibe coded experiment(雰囲気でコーディングした実験)」と明言し、セキュリティ面の保証がないことを明記している点は、コミュニティ製の拡張ツールを試す際の実用的な注意点として書き添えておきたい。GitHub実測(2026年8月27日)でこのリポジトリのスターは0、作成日は2026年2月11日だった。
前回の記事で確認できなかったことが、今回埋まった
本記事はGitHub上のasciimoo/searxREADME、asciimoo/histerREADME、gotlougit/hister-matrix-botREADMEを2026年8月27日にcurlで取得した内容、およびGitHub APIで取得したスター数・作成日にもとづく。README上のasciimooという同一アカウント名から、両プロジェクトが同一人物によるものと判断しているが、本人の経歴を紹介するインタビューやブログ記事までは確認していない。searxからSearXNGへのフォークの経緯や、SearXNG側の現在の開発体制についても、この記事の範囲では検証していない。Zenn・Qiitaを検索した範囲でも、asciimoo氏とsearxの関係を扱った日本語記事は見当たらなかった。
前回のHister記事を書いた時点では「憶測を避けて空欄にした」部分を、今回一次ソースで埋められたことになる。自分自身はsearx(またはSearXNG)を検索エンジンとして日常的に使ったことはなく、メタ検索という設計そのものの限界について実感を語れるほどの経験は持っていない。
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