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Anthropic、暗号資産マイニング企業と組む新興Voltaと100億ドルの計算資源契約──ノルウェーに133メガワットのデータセンター

TechCrunchが2026年8月4日、Bloombergの先行報道を引く形で、Anthropicが今年設立のAIクラウド企業Voltaと6年間・約100億ドルの計算資源契約を結んだと報じた。VoltaのパートナーはBitdeerという暗号資産マイニング企業で、NVIDIAのVera Rubinシステムを搭載する施設をノルウェーに建設する。

Anthropic、暗号資産マイニング企業と組む新興Voltaと100億ドルの計算資源契約──ノルウェーに133メガワットのデータセンター
執筆・編集:
目次

3行まとめ

  1. TechCrunchが2026年8月4日、Bloombergの匿名情報源を引く形で「Anthropicが新興AIクラウド企業Voltaと約100億ドル・6年間の計算資源契約を結んだ」と報じた
  2. だが取引の当事者であるBitdeer(Volta向けにノルウェーのデータセンターを貸すレッサー企業)自身がSECに提出したプレスリリース(Form 6-K)は、契約相手を終始「a leading AI lab(ある大手AIラボ)」としか書いておらず、Anthropicという社名は一度も登場しない
  3. Volta自身も「特定のAIラボを公式には確認できない」とThe Registerに回答しており、Anthropic側も「コメントを拒否」。つまり「AnthropicとVoltaの契約」という見出しの人名部分は、現時点でBloomberg・TechCrunch・Reutersの匿名情報源のみに依拠している

Anthropicの計算資源調達ラッシュに、新しい名前が加わった。TechCrunchが2026年8月4日午後(PDT)、Bloombergの先行報道を引用する形で「Anthropicが今年設立されたAIクラウド企業Voltaと、約100億ドル・6年間の計算資源契約を結んだ」と報じた。これもAnthropic公式の発表ではなく、Bloombergの匿名情報源に基づく報道をTechCrunchが伝えたものだ。前提を明記した上で、報じられた内容を整理する。

報じられた契約の中身

TechCrunch記事(Lucas Ropek記者、2026年8月4日12:48 PDT掲載)の本文を確認した内容は以下の通り。

項目 内容
契約相手 Volta(2026年設立のAIクラウド企業)
契約規模 約100億ドル、6年間
Voltaのパートナー企業 Bitdeer(暗号資産マイニング企業)
データセンターの場所 ノルウェー
発電容量 133メガワット
搭載チップ NVIDIAの「Vera Rubin」システム(同社の最新鋭AIチップアーキテクチャ)
Voltaの立場 NVIDIAの「Cloud Partner program」(NVIDIAのGPUを自社データセンターで使うAIクラウド事業者の集団)参加企業
Anthropic側の対応 TechCrunchが追加情報を求めて問い合わせたと記事に明記されているが、回答の有無は記事内で確認できない

TechCrunchは、Voltaが以前から「あるAIラボとの契約」について語っていたが、相手企業名は明かしていなかったと補足している。今回の報道で、その相手がAnthropicだったとされる格好だ。

「Anthropic」の社名が出てくるのは報道だけ──SEC提出資料は「a leading AI lab」

この取引の当事者の一つであるBitdeer Technologies Group(NASDAQ: BTDR)は、2026年8月4日付でSECにForm 6-Kを提出し、その添付書類(Exhibit 99.1)としてプレスリリースを公開している。原文をSEC EDGARで直接確認したところ、契約の顧客について書かれているのは終始「a leading AI lab(ある大手AIラボ)」という表現で、Anthropicという社名は文書中に一度も登場しない。

Bitdeerのプレスリリース(Exhibit 99.1)から、規制当局向け提出資料としての数字を抜き出すと次の通り。

項目 SEC提出資料(Bitdeer Form 6-K)記載の数値
契約形態 Bitdeerの子会社Tydal Data Center AS(TDC)と、Voltaの子会社Volta Tydal ASとの16年間のコロケーション・リース契約
基本契約期間の契約金額 約47億ドル(16年間)
延長込みの最大契約金額 約80億ドル(8年延長を含めた24年間)
IT容量 121メガワット(総容量は約133メガワット)
リース単価 1kWあたり月額約202ドル(16年平均)。電力費は別途、賃借人(Volta側)が実費負担
フェーズ1稼働目標 2026年12月31日
フェーズ2稼働目標 2027年3月31日
PUE(電力使用効率) 約1.1、電源は100%再生可能エネルギー
信用補完 J.P. Morgan系列他による総額約13億ドルのレターオブクレジット
技術プロバイダー Dell Technologies
Bitdeer側の出資 Bitdeer関連会社がTydal, Norwayキャンパスの所有権100%を保持。今回の取引でBitdeer株式・ワラントの発行は無し

つまりSEC提出資料に基づく確実な数字は「47億ドル・16年」であり、TechCrunch・Bloombergが報じた「100億ドル・6年」は、Bitdeer-Volta間のこのリース契約とは別の数字で、Volta自身が語る「AIラボとの戦略的パートナーシップ全体の計算資源コミットメント額」を指しているとみられる。The Registerが得たVolta広報担当者のコメント(2026年8月6日更新分)でも「(100億ドルは)出資ではなく、パートナーシップの存続期間全体にわたる計算資源のコミットメントを指す」と説明されている。「47億ドル」(Bitdeer-Voltaのリース契約・SEC提出資料)と「100億ドル」(Volta-AIラボの計算資源コミットメント・報道ベース)は別の数字であり、混同しないよう注意が必要。

Volta広報も「特定のAIラボは公式には確認できない」と回答

The Register(2026年8月5日掲載、8月6日17:17 UTC追記)が直接取材したところ、Volta広報担当者は「(顧客が)特定のAIラボであることは公式には確認できない(can't officially confirm the specific AI lab in question)」と回答したという。Anthropic側もThe Registerの取材に対し「コメントを拒否(declined to comment)」したとされる。Reuters(Yahoo Finance配信)も同様に「Reuters has not been able to independently verify the report(Reutersはこの報道を独自に検証できていない)」と明記した上で、Bloombergの報道を紹介する書き方をとっている。

まとめると、「AnthropicがVoltaと契約した」という同定は、Bloomberg・TechCrunch・Reutersが共通して引用する匿名の関係者情報のみに基づいており、契約当事者(Bitdeer・Volta)のいずれも社名を公式には確認していない。

Voltaという会社について分かったこと

The Register・Bitdeer公式資料を確認した範囲で、Voltaの会社概要は次の通り。

  • 創業者兼CEOはRicard Boada氏。「Compute has become a new infrastructure asset class(計算資源は新しいインフラ資産クラスになった)」とコメントしている
  • シード・Series Aで合計約3億ドルを調達し、評価額は24億ドル。Andreessen Horowitz・NVIDIA・Altimeter Capital・Azora(インフラ投資会社)がリード、Michael Dell氏のファミリーオフィスも参加
  • 資産運用会社Azoraとは別に、AI「ファクトリー」向けの50億ドル規模のインフラ融資プログラムも発表している(Reuters配信記事による)
  • NVIDIAの「Cloud Partner program」参加企業で、Vera Rubin VR200 NVL72システムを導入予定
  • 自社を「the world's first fully vertically integrated AI infrastructure platform(世界初の、完全に垂直統合されたAIインフラ基盤)」と位置づけ、施設のファイナンス・建設・運用までを一体で手がける点で、NscaleやCoreWeaveといった既存の「ニュークラウド(neocloud)」企業とは資金調達モデルが異なると自社では説明している
  • ノルウェーのプロジェクトは、Voltaが掲げる「北米・欧州で1ギガワット超」という開発パイプラインの第一弾と位置づけられている

「暗号資産マイニング企業がAIデータセンターを作る」という構図

この契約の特徴は、AIクラウド企業であるVoltaが、暗号資産マイニング企業のBitdeerと組んでデータセンターを整備するという点にある。暗号資産マイニング業界は、GPU・電力インフラ・冷却技術のノウハウを持つ企業が多く、AIブームに伴って計算資源事業へ転身する動きが世界的に見られる。Bitdeerがどのような役割(施設運営、電力調達、資本参加など)を具体的に担うのかは、TechCrunchの記事本文では明記されていない。

Anthropicの計算資源調達ラッシュの一環

TechCrunchは記事の中で、Anthropicが「ここ数ヶ月、クラウド提携ラッシュ状態にある」と位置づけ、SpaceXやAmazonとの計算資源契約も最近発表されたばかりだと補足している。競合他社との計算資源の奪い合いが激しくなる中、Anthropicが調達先を分散させている動きの一つとして今回のVolta契約を位置づける書き方だ。

なお、同じTechCrunchのページには「Anthropicが計算資源獲得競争を継続、Nscaleと450億ドルの契約」という見出しの関連記事も表示されていたが、これは本記事執筆時点(8月27日)のTechCrunchサイト上の最新記事一覧に含まれていたもので、Volta契約とは別件・別時期の報道とみられる。本記事はVolta契約のみを対象とし、Nscale案件の内容までは検証していない。

「Anthropic」の同定そのものが、まだ裏付けを取れていない

  • 本記事で最も弱い部分は「相手がAnthropicである」という同定そのものです。 SEC提出資料(Bitdeer Form 6-K)は「a leading AI lab」としか書いておらず、Volta広報も社名を確認せず、Anthropicもコメントを拒否しています。Bloomberg・TechCrunch・Reutersの匿名情報源が一致してAnthropicだと報じている、という状況までしか本記事では確認できていません。
  • 元になったBloombergの原文記事は有料壁のため本記事では直接確認できていません。本記事はTechCrunch・The Register・Reuters(Yahoo Finance配信)・Bitdeer公式SEC提出資料を参照先としています。
  • 8月27日時点および本記事更新時点(8月29日)で、Anthropic公式ニュースルームにVolta関連の発表は見当たりません。
  • 「Anthropicが計算資源をどのように調達しているか」の全体像を描くには、SpaceX・Amazon・Google等との契約もあわせて見る必要がありますが、本記事はVolta単体の報道内容に絞っています。

Anthropicの企業としての全体像はAnthropicとは?Claude開発企業の戦略と安全性への取り組み、MicrosoftのAzure独自チップとの提携協議はAnthropicがMicrosoft独自チップ「Maia 200」でのClaude推論を協議中を参照。

この記事は2026年8月29日時点で、TechCrunch・The Register・Reuters・Bitdeer公式SEC提出資料を確認して書いたものです。

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