「AI 2027」を書いた本人たちが、なぜ「AI 2040」を書き直したのか──著者陣の軌道修正を原文で読む
2025年4月に公開され話題を呼んだAIシナリオ「AI 2027」は、2025年11月の追記で「2027年は最頻値であって中央値ではない」と著者自身が釈明した。同じチーム(一部入れ替え)が続けて発表した「AI 2040: Plan A」は、2030年に自動化されたAI研究開発が実現しうるが、国際合意で超知能の到来を2040年まで遅らせるという、予測ではなく提案の書。ai-2027.comとai-2040.comの原文で、何がどう変わったかを確認する。

目次
2025年4月、Daniel Kokotajlo氏ら5人の著者による予測シナリオ「AI 2027」が公開され、話題になった。AI企業の内部を舞台に、2027年にかけて超人的なAIが登場し、人類が破滅的な結末か権力の集中かのどちらかに向かう——というシナリオだ。今回は、この著者陣自身がその後どう軌道修正したかを、ai-2027.comとai-2040.comの原文で確認した。
3行まとめ
- AI 2027の著者陣は2025年11月22日付の追記で「2027年は執筆時点での最頻値(モード)に過ぎず、中央値(median)はもっと長かった」と、当初の書き方が誤解を招いたことを認めている。
- 続編「AI 2040: Plan A」は"予測"ではなく"提案"で、2030年に完全自動化されたAI研究開発が実現しうる中、国際合意によって超知能の到来を意図的に2040年まで遅らせる、という政策シナリオを描く。
- 著者チームの構成は一部入れ替わっており、AI 2027の共著者だったScott Alexander氏が外れ、Ryan Greenblatt氏とBrendan Halstead氏が新たに加わっている。
「2027年」という数字が、どう受け取られたか
ai-2027.comを直接取得すると、トップページのシナリオ本文の中に、2025年11月22日付で追記されたただし書きが挿入されている。原文をそのまま引用する。
"Added Nov 22 2025, to prevent misunderstandings: we don't know exactly when AGI will be built. 2027 was our modal (most likely) year at the time of publication, our medians were somewhat longer. For our latest forecasts, see here."
(訳)「2025年11月22日追記、誤解を防ぐために:AGIがいつ構築されるか、私たちは正確には分かっていない。2027年は公開当時の私たちの最頻値(モード)であり、私たちの中央値はもう少し長かった。最新の予測はこちらを参照」
統計の言葉で言えば、「最頻値」はその分布の中で一番確率が高い1点、「中央値」は分布全体を半分に分ける値だ。両者は本来別の概念だが、「AI 2027」というタイトルと、シナリオの舞台が2027年に設定されていることで、読者の多くが「著者たちの一番の見立ては2027年だ」と受け取った——これに対する釈明が、この追記にあたる。
同じ箇所には別の追記もある。2025年7月に加えられたもので、こう書かれている。
"Added Jul 2025: We've made some updates to the forecast which push the median back 1.5 years while maintaining SC in 2027 as a serious possibility."
(訳)「2025年7月追記:予測を更新し、中央値を1.5年後ろに押し戻した。ただしSC(超人的コーダー)が2027年に実現する可能性は依然として真剣に検討すべきものとして維持している」
さらに本文中の別箇所では、著者の一人Eli Lifland氏の見立てが「2030年」に修正されたことも明記されている(2025年12月追記)。つまり、公開から半年〜1年強のうちに、著者陣は複数回、時期の見立てを後ろ倒しに修正し続けている。
「最新の予測はこちら」を実際にたどってみた
本文中の「最新の予測はこちら(see here)」というリンクをたどると、著者陣が運営する対話的な予測ツール「AI Futures Model」(aifuturesmodel.com)に着地する。このツールとその元になった技術ブログ記事(AI Futures Project公式ブログ、2026年8月16日付「Q2.5 2026 Timelines Update: Uplift and Revenue」、著者Eli Lifland・Daniel Kokotajlo・Brendan Halstead)をcurlで取得したところ、以下が確認できた。
このモデルが予測しているのは「AC(Automated Coder)」という具体的なマイルストーンの到来時期だ。ブログ記事はACを「そのAIを使わずにコーディングをするより、人間のソフトウェアエンジニアを解雇した方がましだと、最先端のAI企業が判断するようなAI」と定義している。2026年8月16日更新時点の各著者のAC到来予測(中央値)は次の通り。
| 予測者 | AC到来の中央値 | 直前の予測からの変化 |
|---|---|---|
| Daniel Kokotajlo | 2027年12月 | 2028年2月から前倒し |
| Eli Lifland | 2029年3月 | 2029年7月から前倒し |
| Brendan Halstead | 2028年7月 | 今回が初回の予測 |
同じツールの確率分布データでは、AC(Automated Coder)の到来確率が「2027年までに23.4%」「2030年までに59.6%」「2035年までに79.7%」、より上位のマイルストーン「SAR(Superhuman AI Researcher)」の到来確率が「2027年までに15.4%」「2030年までに48.6%」と記載されていた。ブログ記事は「AI 2027の予測を再採点したところ、現実はAI 2027が描いたペースのおよそ70〜90%程度で進んでいるようだ」とも総括している。
つまり、著者陣自身の最新の見立て(2026年8月16日時点)では、当初の「2027年」というタイトルの年よりも、ACという具体的なマイルストーンの中央値予測はやや先——ただしDanielの予測はむしろ直近の更新で前倒しされている——という状態にある。ここでの「AC」は、AI 2027の本文が使う「SC(超人的コーダー)」と関連するが同一の指標として厳密に対応づけられているかは、本記事では確認していない。
「AI 2027」が予測した破局を避ける続編「AI 2040: Plan A」
AI 2027は「超人的AIが実現すれば、人類は絶滅か権力の集中かのどちらかに向かう」という悲観的なシナリオだった。続編にあたる「AI 2040: Plan A」は、この結末を避けるための"処方箋"として書かれている。ai-2040.comを直接取得して確認した、著者陣自身の位置づけはこうだ。
"In AI 2027, we predicted that this would result in either extinction or irreversible concentration of power. Plan A is our positive vision for what should happen instead. [...] Plan A is primarily a recommendation, not a prediction."
(訳)「AI 2027で私たちは、この結果が絶滅か不可逆的な権力集中かのどちらかになると予測した。Plan Aは、代わりに何が起きるべきかについての、私たちの前向きなビジョンだ。[中略]Plan Aは主として提案であり、予測ではない」
この一文が重要だ。AI 2027は「これから起きること」を予測するシナリオだったのに対し、AI 2040: Plan Aは「こうすべきだ」という政策提案のシナリオであり、性質が異なる。
Plan Aの中身を要約すると、次のような時間軸が描かれている。原文から具体的な年号の記述を確認した。
"In 2029, the US and China agree to avoid a reckless race to superintelligence. In 2030, we would have fully automated AI R&D, leading to superintelligence by the end of the year. Thanks to the deal, we avoid this."
(訳)「2029年、米国と中国は超知能をめぐる無謀な競争を避けることに合意する。2030年、私たちは完全に自動化されたAI研究開発を実現し、その年のうちに超知能に至るはずだった。この合意のおかげで、それを回避する」
つまりPlan Aのシナリオでは、技術的には2030年に超知能へ至る道筋があると著者陣は見積もっているが、国際合意によってそれを意図的に2040年まで遅らせる、という筋書きになっている。具体的には、AI研究をすべて公開情報化し、世界各国の複数企業がフロンティアに追いつけるようにし、意図的に「相互確証コンピュート破壊」という抑止の体制に入る、という内容が示されている。
著者チームは、誰が抜けて誰が加わったか
ai-2040.comのクレジット欄で確認できる著者は、Thomas Larsen、Romeo Dean、Brendan Halstead、Eli Lifland、Ryan Greenblatt、Daniel Kokotajlo氏の6名だ。AI 2027の著者(Daniel Kokotajlo、Scott Alexander、Thomas Larsen、Eli Lifland、Romeo Dean氏の5名)と比べると、Scott Alexander氏が抜け、Ryan Greenblatt氏とBrendan Halstead氏が新たに加わっている。
Scott Alexander氏はブログ「Astral Codex Ten」で知られる著名な書き手で、AI 2027の文章面での知名度に一定の貢献をしたとみられる人物だ。その人物が続編で外れている理由は、今回確認した両サイトの原文からは特定できなかった。
「AGI いつ 2027 日本語」という検索
日本語圏での需要を確認する材料として、Googleサジェストで「ai 2027」と入力すると「ai 2027 論文」「ai 2027 要約」「ai 2027 シナリオ」「ai 2027 とは」「ai 2027 日本語」といった、説明・要約を求める語が並ぶ(2026年8月27日確認)。「ai 2027 日本語」という検索が存在すること自体、原文の丁寧な日本語解説がまだ手薄であることを示唆している。「ai 2040」でも「ai 2040年」「ai 2040とは」「ai 2040 plan a」と同様のパターンが見られる。
著者交代の理由と最新の予測年は特定できなかった
- 「AI 2040: Plan A」の詳細な政策提言(検証体制・透明性計画・計算資源governanceの具体案)は、この記事では扱っていない。 サイト内には多数のサブページ(Verification Plan、Transparency Plan、Compute in Plan Aなど)があり、今回はトップページの要約部分のみを確認した。
- 「AC(Automated Coder)」という指標が、AI 2027本文の「SC(超人的コーダー)」やタイトルの「2027年」と厳密にどう対応するかは、この記事では検証していない。 「最新の予測はこちら」のリンク先(aifuturesmodel.com)と2026年8月16日付のブログ記事は読んだが、ACとSCの定義上の異同を突き合わせる作業は行っていない。両者は同じAI Futures Projectの枠組みの中の指標だが、名称が違う以上、単純に「タイトルの2027年」と「ACの中央値2027年12月」を同一視するのは早計である可能性がある。
- AC・SARの確率分布データ(2027年23.4%、2030年59.6%など)は、Danielの個人フォーキャストのグラフに紐づく数値であり、Eli・Brendanを含むチーム全体の合意値ではない可能性がある。 この点をツール側の表記だけから完全に切り分けることはできなかった。
- Scott Alexander氏がなぜAI 2040の著者陣から外れたのかは、公開情報からは特定できなかった。 推測で書くことはしない。
- AI 2027・AI 2040のシナリオそのものの妥当性(技術的な実現可能性、時期の見積もりの精度)について、この記事は評価を下していない。 著者自身が書いた文言を、そのまま紹介するにとどめている。
出典・確認した一次情報
- AI Futures Project, "AI 2027"(2025年4月3日公開、
ai-2027.com)。curlで直接取得し、2025年7月・11月・12月の各追記文と、「最新の予測はこちら」リンクの遷移先URLを本文中で確認。 - AI Futures Project, "AI 2040: Plan A"(
ai-2040.com)。curlで直接取得し、著者クレジット、Plan Aの位置づけ(「予測ではなく提案」)、2029〜2040年の時間軸の記述を本文で確認。 - AI Futures Model(
aifuturesmodel.com)。curlで直接取得し、AC・SARの到来確率データと、Daniel・Eli・Brendan各氏のAC中央値予測を本文中の埋め込みデータから確認。 - Eli Lifland・Daniel Kokotajlo・Brendan Halstead「Q2.5 2026 Timelines Update: Uplift and Revenue」(
blog.aifutures.org、2026年8月16日)。curlで直接取得し、AC(Automated Coder)の定義と「現実はAI 2027のペースの70〜90%程度」という総括を本文で確認。
すべてのURLは2026年8月29日にcurl -A "Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_15_7)"で直接取得・確認した。
出典・参照資料
- 二次資料AI Futures Project, 'AI 2027'(2025年4月3日公開、2025年11月22日追記) ↗
- 二次資料AI Futures Project, 'AI 2040: Plan A' ↗
- 二次資料AI Futures Model(本文が「最新の予測はこちら」とリンクする、著者陣の最新の対話的フォーキャストツール) ↗
- 二次資料Eli Lifland, Daniel Kokotajlo, Brendan Halstead 'Q2.5 2026 Timelines Update: Uplift and Revenue'(AI Futures Project公式ブログ、2026年8月16日) ↗
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