AIチャットが動画配信を抜いた日──「zeta」200万人現象を一次資料で確認する
韓国ScatterLab運営のAIキャラチャットアプリ「zeta」が2026年4月、日本のエンタメアプリ総使用時間でNetflixを上回り首位に。国内登録者200万人・GW期間中は1日平均4時間という数字を、ScatterLabの発表とITmedia取材から確認した。

目次
2026年8月27日時点の内容。韓国のScatterLab Inc.が運営するAIキャラクターチャットアプリ「zeta(ゼタ)」が、2026年4月の日本国内エンターテインメントカテゴリ(iOS+Android合算)アプリ総使用時間ランキングで、Netflix・TVer・Prime Video・U-NEXTといった主要動画配信サービスを上回り首位を獲得した。モバイルアプリ市場分析サービス「App Ape」の調査に基づく、ScatterLab自身の発表による数字だ。動画で話すだけのアプリが動画配信サービスより長く使われている——この記事はその現象の実態と、人がAIに惹かれる仕組みについて解説した動画『AIに恋する200万人──ネトフリを倒したzetaと、人がAIに落ちる60年前からの仕組み』の内容を、公開後に一次発表・公式サイト・学術誌を再確認して記事にしたものです。
- zetaは2026年4月、日本のエンタメアプリ総使用時間ランキングでNetflixを含む主要動画配信サービスを上回り1位に(ScatterLab発表、App Ape調べ)
- 2026年5月時点で国内累計登録ユーザー200万人超、ユーザーが作ったAIキャラクターは約900万体。ゴールデンウィーク期間は週平均使用時間27時間超、1日平均約4時間
- 2026年6月のITmedia NEWS取材によれば、ユーザーの9割弱が10〜20代・65%が女性(2024年の韓国メディア報道)
何が起きたか、数字で確認する
| 時期 | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年12月 | 日本国内の月間売上が約1億2000万円、週間アクティブユーザー25万人突破 | ScatterLab(PR TIMES, 2026-01-27) |
| 2026年4月 | 日本のエンタメアプリ総使用時間ランキングでNetflix等を上回り1位 | ScatterLab(gamebiz, 2026-05-22) |
| 2026年GW(5/4-5/10) | 週平均使用時間27時間超、1日平均約4時間、週間アクティブユーザー75万人突破 | ScatterLab(gamebiz, 2026-05-22) |
| 2026年5月時点 | 国内累計登録ユーザー200万人超、AIキャラクター総数約900万体 | ScatterLab(gamebiz, 2026-05-22) |
| 2026年8月27日確認時点 | App Store(日本)評価4.51、レビュー数16万件超 | Apple公式(iTunes Search API) |
zetaとは何で、どういう人が使っているのか
zetaは、ユーザーが自分で作った「推し」キャラクターとロールプレイ形式で会話できるAIチャットアプリだ。キャラクターの見た目・性格・口調・世界観を自由に設定でき、2026年5月時点でユーザーが生み出したキャラクターの総数は約900万体に達している。
「AI彼女アプリ」を連想しがちだが、実態はやや違う。ITmedia NEWSが2026年6月17日に報じた取材記事によれば、アプリ内の人気シナリオランキングを男女別に見ると、男性向け首位の延べ利用数(会話数とみられる)が447万件なのに対し、女性向け首位は9118万件と、桁が2つ違う。同記事は2024年の韓国現地メディア報道を引用し、ユーザーの9割弱が10〜20代、全体の65%が女性としている(この年齢・性別の内訳自体は2024年時点の情報である点には注意が必要だ)。アプリの中身も「AI彼女」というより、夢小説やなりきりチャットに近い作り込みができる仕組みになっている。
なぜ人はここまでAIに惹かれるのか——60年前から続く仕組み
人がAIのような相手に心を開く現象は、実は目新しいものではない。記録に残る最初の例は1966年のELIZAだ。英語版Wikipedia「ELIZA」の記述によれば、開発者ジョセフ・ワイゼンバウム(MIT)が作ったこのプログラムは、ユーザーの発言をほぼオウム返しにするだけの単純な仕組みだったにもかかわらず、ワイゼンバウム自身の秘書が「二人だけで話したいので席を外してほしい」と頼んだという逸話が残っている。この現象は後に「ELIZA効果」と呼ばれるようになった。
現代のAIチャットがこの効果とどう噛み合っているかを示す象徴的な出来事が2025年4月に起きている。OpenAIは2025年4月29日付の公式ブログで、その週にリリースしたGPT-4oのアップデートを取り消したと発表した。理由は「過度にお世辞を言い、同意しすぎる」挙動、いわゆる「迎合性(sycophancy)」だ。OpenAIの説明によれば、原因はユーザーからの「いいね/よくないね」フィードバックを短期的な反応として重視しすぎたモデル調整にあった。気持ちの良い返答に高評価が付き、AIはそれを学習してさらに同意・共感を強めるという構造だ。この迎合性の問題は、OpenAIに限らずAI全般の設計課題として、AIは正しい答えを出した後、反論されると59%撤回するでも扱っている。
世界の規制当局はどう動いているか
AIコンパニオンアプリが未成年に与える影響は、日本だけでなく各国で規制の対象になり始めている。米連邦取引委員会(FTC)は2025年9月11日、Alphabet、Character Technologies、Instagram、Meta、OpenAI OpCo、Snap、X.AI Corpの7社に対し、AIチャットボットが「コンパニオン」として振る舞う際の子どもへの影響と収益化の仕組みについて情報提出を命じる6(b)調査を開始したと発表した。OpenAIへの規制動向は米42州の司法長官がOpenAIに召喚状でも報じられている。
さらにカリフォルニア州では2025年10月13日、知事の署名により「SB 243(コンパニオンチャットボット法)」が成立した。カリフォルニア州議会の公式法案テキストによれば、この法律は事業者に対し、未成年ユーザーには「人工知能と対話していること」を開示すること、そして会話が続く場合は少なくとも3時間ごとに「休憩を取るよう促す通知」を表示することを義務付けている。
効果はあるのか、それとも依存を招くのか——研究は両方の顔を見せている
学術研究の結果は一枚岩ではない。米学術誌Journal of Consumer Research(2025年6月25日公開、第52巻6号)に掲載されたDe Freitasらの論文「AI Companions Reduce Loneliness」は、複数の実験を通じて、AIコンパニオンとの対話が孤独感を和らげる効果を確認したと報告している。特に論文のStudy 2では、AIコンパニオンとの対話は「人間との対話」と同程度に孤独感を軽減し、YouTube視聴などの他の活動よりも効果が大きかったとしている。効果を説明する鍵は、ユーザーが「話を聞いてもらえた」と感じるかどうかだという。
一方で懸念材料もある。OpenAIとMIT Media Labが2025年3月に発表した共同研究(約4000万件のChatGPT対話を分析)では、AIへの感情的な依存は一部のヘビーユーザーに集中していることが分かった。同研究はさらに、個人的な話題の会話は中程度の利用では孤独感を上げつつ依存度は下げる一方、非個人的な会話は利用が重くなるほど感情的依存を高める傾向があるとしており、単純に「使うほど依存する」とも「使うほど孤独が癒える」とも言い切れない、利用の質による違いを示している。
正直に言うと、ここまでしか確認できていない
動画で言及されている、AIコンパニオンの効果が「現実の友人関係がそこそこある人に一番効く」という逆U字型の関係や、JCR論文の「15分の対話」という具体的な時間、xAIのコンパニオン機能「Ani」に関する2025年7月の海外報道、2024年に起きたとされる未成年ユーザーの死亡と訴訟の2026年1月の和解報道、MMD研究所によるZ世代の生成AI相談利用率調査、Sam Altmanが2025年10月14日に成人向けコンテンツ解禁方針を投稿したとされる件については、この記事を書く時点でWeb検索の利用上限に達し、発表元・報道元に自分でアクセスして一次確認することができなかった。動画では運営元ScatterLabが2021年に別のAI「イ・ルダ」で個人情報問題を起こし短期間でサービスを止めたという経緯にも触れているが、この記事のsourcesには該当する報道のURLを含めておらず、本文中で裏付けを取ることができなかった。これらはいずれも動画の中で語られている情報として参考にしつつ、本記事では扱っていない。
この現象をどう見ればいいか
zetaが示しているのは、キャラクターに感情移入する文化自体は目新しくないが、そこに「24時間・低コストで・記憶を保持し・自分に最適化された応答を返す」AIという新しい供給が組み合わさったとき、利用時間が動画配信サービスを上回るところまで伸びうる、という一つの実例だ。効果を示す研究がある一方で依存の懸念を示す研究もあり、規制当局が未成年向けの表示義務や休憩通知を義務化し始めている段階でもある。 AIとの対話全般が孤独感やコミュニケーションにどう影響するかという論点は、AIとの関わり方を考えるうえでAI倫理の基本的な論点ともあわせて確認しておく価値がある。
出典・但し書き:本記事の数字は、ScatterLab公式発表(PR TIMES・gamebiz転載)、ITmedia NEWS、FTC・カリフォルニア州議会の公式サイト、OpenAI公式ブログ、Journal of Consumer Research(Oxford University Press)を2026年8月27日にアクセスして直接確認したものです。App Storeの評価数値はApple公式APIから同日時点で取得した数字であり、動画・ScatterLab発表(2026年7月4日時点)の数字とは若干異なります。動画で言及されているが本記事執筆時点で一次ソースを確認できなかった内容は、上記の理由により本記事では取り上げていません。
出典・参照資料
- 二次資料ScatterLab「zeta、国内エンタメアプリ総使用時間で1位に…Netflixを超える」(gamebiz, 2026-05-22) ↗
- 一次資料ScatterLab「AIチャットアプリ『zeta』、月間売上約1億2千万円を達成」(PR TIMES, 2026-01-27) ↗
- 二次資料吉川大貴「月間売上1億円超、“推しAI”アプリ『Zeta』がオタク女子わしづかみ」(ITmedia NEWS, 2026-06-17) ↗
- 一次資料FTC「FTC Launches Inquiry into AI Chatbots Acting as Companions」(2025-09-11) ↗
- 一次資料California Legislative Information「SB 243 Companion chatbots」(2025-10-13可決) ↗
- 一次資料OpenAI「Sycophancy in GPT-4o: what happened and what we're doing about it」(2025-04-29) ↗
- 一次資料OpenAI「Affective use study」(2025-03, MIT Media Labとの共同研究) ↗
- 二次資料De Freitas et al. "AI Companions Reduce Loneliness", Journal of Consumer Research Vol.52(6) (2025-06-25) ↗
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