『他のharnessとは違う、これはあなたのもの』を掲げるPi──5,458件のパッケージが今日も増え続けるエコシステム
Earendil社の「Pi」は、サブエージェントも計画モードも標準搭載しない、あえて最小限の設計を掲げるコーディングエージェントharnessだ。npm経由で公開されているPiパッケージ数を実際に数えたところ5,458件(2026年8月27日確認)。同社のもう一つの製品「Lefos」の中身とあわせて、公式サイトの本文から確認した。

目次
以前扱った「『自分のharnessを持つ』とは何か」という記事の主役、Earendil社が実際に作っているコーディングエージェントharnessが「Pi」だ。公式サイト(pi.dev)が掲げるキャッチコピーは「There are many agent harnesses but this one is yours(agent harnessは数あれど、これはあなたのものだ)」。中身を確認すると、Claude Code的な「最初から機能満載」の方向とは逆を向いた、意図的に機能を削った設計思想が読み取れた。
3行まとめ
- Piは「サブエージェントなし・プランモードなし・権限ポップアップなし・組み込みのto-doなし・バックグラウンドbashなし」を明記する、あえて最小限のエージェントharness。欠けている機能は「拡張機能で自分で作る」ことが前提になっている
- パッケージカタログ(npm配布の拡張・スキル・テーマ・プロンプトテンプレート)を実際に開いて確認したところ、掲載数は5,458件(2026年8月27日確認)。23分前・25分前更新のパッケージが並ぶ、生きたエコシステムだった
- Earendil社はPiのほかに、メールのUIでAIエージェントを操作する「Lefos」というもう一つの製品も持つ。公式サイトの説明は「create your own garden on the internet」という一文にとどまり、中身の深掘りはできていない
「持たないこと」を機能として説明する
Pi公式サイトの本文には「Why Pi?」という項目があり、こう説明されている。
Pi is a minimal agent harness. Adapt Pi to your workflows, not the other way around. Customize Pi with extensions, skills, prompt templates, and themes. Bundle them as Pi packages and share via npm or git.
(Piは最小限のagent harnessだ。あなたのワークフローにPiを合わせる。逆ではない。拡張機能・スキル・プロンプトテンプレート・テーマでPiをカスタマイズできる。それらをPiパッケージとしてまとめ、npmやgit経由で共有できる)
さらに踏み込んだのが「What we didn't build」という項目だ。他社のツールが標準機能として持たせがちな機能を、あえて持たせなかった理由を1つずつ説明している。
- No MCP: READMEを書いてCLIツールを作る(Skillsを使う)か、MCP対応を拡張機能として自作する
- No sub-agents: tmux経由でPiのインスタンスを複数立ち上げるか、拡張機能で自作するか、サードパーティ製Piパッケージを入れる
- No permission popups: コンテナ内で実行するか、自分の環境・セキュリティ要件に合った確認フローを拡張機能で作る
- No plan mode: 計画をファイルに書くか、拡張機能で作る
- No built-in to-dos: TODO.mdファイルを使うか、拡張機能で作る
- No background bash: tmuxを使う。完全な可観測性と直接操作を優先する
インストールはcurl・PowerShell・npm・pnpm・bunの5通りが用意されている。
curl -fsSL https://pi.dev/install.sh | sh
npm install -g --ignore-scripts @earendil-works/pi-coding-agent
セッションは「木構造」、対応プロバイダは15以上
機能面での特徴として公式サイトが強調しているのが、セッションがツリー構造で保存される点だ。/treeで過去の任意の時点に戻り、そこから分岐して続けられる。すべての分岐は1つのファイルに収められ、メッセージ種別でフィルタしたり、ブックマークとしてラベル付けしたりできるという。/exportでHTMLへの書き出し、/shareでGitHub Gistへのアップロードとその場で描画されるURL発行にも対応する。
モデル対応については「Anthropic, OpenAI, Google, Azure, Bedrock, Mistral, Groq, Cerebras, xAI, Hugging Face, Kimi For Coding, MiniMax, NVIDIA, OpenRouter, Ollama, and more」と、15以上のプロバイダ名が列挙されており、/modelまたはCtrl+Lでセッション途中のモデル切り替えができる。カスタムプロバイダの追加もmodels.jsonまたは拡張機能経由で可能だという。
動作モードは4つ。フルのTUI体験を提供する「Interactive」、スクリプト向けの「Print/JSON」(pi -p "query"、--mode jsonでイベントストリーム)、Node以外の言語からの統合向けにstdin/stdout越しのJSONプロトコルを提供する「RPC」、そしてアプリへの組み込み向けの「SDK」(実例としてOpenClawが挙げられている)。
拡張機能でPi自身を書き換えられる
「Change the harness, not your workflow」という項目では、Piが「封じられた製品ではない」ことが強調されている。
If you need a command, tool, provider, workflow, or UI tweak, just ask Pi to build it. It will customize itself on the fly. Have Pi manipulate itself in place, hit /reload, and keep going.
(コマンド・ツール・プロバイダ・ワークフロー・UIの微調整が必要なら、Piにそれを作ってもらえばいい。その場で自分自身をカスタマイズする。Piに自分自身をその場で操作させ、/reloadを叩けば、そのまま作業を続けられる)
拡張機能はツール・コマンド・キーボードショートカット・イベント・TUI全体へのアクセス権を持つTypeScriptモジュールで、実例として「DOOMが遊べるようになる拡張機能」の図がサイトに掲載されている。サードパーティ拡張機能の一例として、Ben Vinegar氏による@termdraw/pi(描画機能を追加する拡張)もサイト内で紹介されていた。
パッケージカタログ──23分前更新のものまで並ぶ生きたエコシステム
「Pi Package Catalog」(pi.dev/packages)を2026年8月27日に直接開いて確認したところ、ページ上部の「All packages」欄には「1-50 / 5458」と表示されており、掲載パッケージ総数は5,458件だった。「Recently published」欄には、23分前・25分前・29分前・31分前・32分前・42分前更新のパッケージが並んでおり、確認した時点でも常時更新が続いていることが分かる。フィルタは「extension」「skill」「theme」「prompt」の4種類のタイプで絞り込める。
実例として、掲載されていたパッケージの1つ@madgagarin/pi-agentrouterの説明はこうだった。
Official Pi Coding Agent extension for AgentRouter (agentrouter.org). Connects GPT-5.6 Sol, Claude Opus 5, DeepSeek V4 Flash, and GLM 5.3 with live USD pricing, batch quota health probe, prompt caching, and WAF protection.
複数モデルのルーティング・価格表示・キャッシュ・WAF保護までを1つの拡張機能で提供する、といった具合に、Pi自体の機能をかなり拡張する方向の実装も見られた。
もう1つ具体例として、npmレジストリでpi-freeflowというパッケージを直接確認した。バージョン1.5.0(累計42バージョン公開)、作成日は2026年8月24日、最終更新は2026年8月27日17:59(UTC)。パッケージの説明は「Thin provider for OMP/Pi — model list + dumb relay proxy + log; host pi-ai owns thinking/normalization」で、キーワードにはpi-package・pi-extension・oh-my-pi・free-modelsなどが並んでいた。作成からわずか3日で1.5.0まで到達しているペースからも、このエコシステムの回転の速さがうかがえる。
GitHub・npmの実測値──「あなたのもの」を掲げつつ規模は10万スター級
公式サイトの文言だけを読むと、Piは「万人向けではなく、あなた個人のためのharness」というニッチな立ち位置に見える。しかしGitHub API・npmレジストリを2026年8月31日にcurlで実測すると、実際の利用規模はそのイメージとかなり異なっていた。
| 項目 | 値(2026年8月31日実測) |
|---|---|
| GitHubスター数 | 99,605 |
| フォーク数 | 12,361 |
| ウォッチャー数 | 319 |
| オープンIssue数 | 138 |
| リポジトリ作成日 | 2025年8月9日 |
| 直近push | 2026年8月31日02:52(UTC、確認時点で数時間前) |
| ライセンス | MIT |
npmパッケージ@earendil-works/pi-coding-agentの公開バージョン数 |
43件 |
| npm初回公開日 | 2026年5月7日 |
| 最新バージョン | 0.84.4 |
| npm週間ダウンロード数(2026年8月23〜29日) | 2,652,953 |
(出典: api.github.com/repos/earendil-works/pi、registry.npmjs.org/@earendil-works/pi-coding-agent、api.npmjs.org/downloads/point/last-week/...をそれぞれcurlで取得)
GitHubスター約10万件・週間ダウンロード265万件超という数字は、「あなた1人のためのharness」という公式サイトのポジショニングとは裏腹に、すでにかなりの規模で使われていることを示している。npmパッケージ自体の初回公開は2026年5月7日で、リポジトリ作成日(2025年8月9日)から約9か月遅れている——リポジトリ自体はnpm公開よりだいぶ前から存在していたことになる。
パッケージカタログの件数も、本文執筆時点の5,458件(2026年8月27日確認)から、2026年8月31日の再確認では5,382件とわずかに減っていた。増加が止まっているわけではなく、個々のパッケージの取り下げ・重複整理などで短期的に変動している可能性がある——4日間で76件の減少がどちらの理由によるものかは、この記事の確認範囲では判断できない。
もう一つの製品「Lefos」──メールのUIで動くharness
Earendil社はPiのほかに、「Lefos」という別製品も持つ。公式サイト(lefos.com)を確認したところ、ページの<title>は「Lefos」、メタ説明は「Lefos, create your own garden on the internet.」という一文のみで、静的に取得できる本文はこれ以上なかった。JavaScriptで描画される部分が本体とみられ、この記事の確認範囲では機能の詳細をつかめていない。事前情報によれば、iMessageやチャットではなく「メール」のUIでAIエージェントを操作する製品だとされているが、この記述自体は公式サイト本文からは確認できておらず、裏付けが取れていない。
Piを実際にインストールして動かす検証はしていない
この記事はPi公式サイト・パッケージカタログページ・npmレジストリ・GitHub APIのレスポンスのみを一次ソースとしている。実際にpiをインストールし、セッションのツリー分岐や拡張機能の作成をPi自身に依頼するといった動作検証は行っていない。Lefosについては公式サイトの静的に取得できた範囲の情報にとどまり、実際の機能・料金体系は確認できていない。5,382〜5,458件のパッケージのうち、実際に動作するもの・保守されているものがどれだけの割合かも検証していない。npmの週間ダウンロード数2,652,953件についても、CI環境での自動インストールやミラーによる重複カウントが含まれる可能性があり、実際の人間のユーザー数とイコールではない。Zenn検索では「Pi.dev」0件(2026年8月27日実測)。
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