2026年9月6日 日曜日
AI時短ラボ
業界· 約11

日本発「PEP検定」とは──開始1年でシラバスに「AIエージェント」「コンテキストエンジニアリング」を追加した資格の中身

一般社団法人日本プロンプトエンジニアリング協会が2025年4月23日に開始した「Prompt Engineering Professional(PEP)検定」は、2025年9月20日の試験からAIエージェント・コンテキストエンジニアリングを新章として追加し、2026年4月15日時点でユーザー登録数1,000人を突破した。全国47都道府県340以上のCBTテストセンターで受験できる。

日本発「PEP検定」とは──開始1年でシラバスに「AIエージェント」「コンテキストエンジニアリング」を追加した資格の中身
執筆・編集:
目次

日本国内で「プロンプトエンジニアリングの資格」と検索すると出てくる代表格が、一般社団法人日本プロンプトエンジニアリング協会(JSPE)が運営する「Prompt Engineering Professional(PEP)検定」だ。本稿はJSPEが自ら配信したPR TIMESのプレスリリース3本を一次で確認し、開始からの1年で何が起きたのかを整理する。あらかじめ書いておくと、確認した範囲では検定の名称自体が変わった事実は見当たらなかった――変わったのは名前ではなく、出題範囲の中身である。

3行まとめ

  1. PEP検定は2025年4月23日に開始。運営はJSPE(代表理事:黒柳茂、2023年4月設立、東京都世田谷区)で、CBT形式(コンピュータ上で受験する試験方式)、全国47都道府県340以上のテストセンターで受験できる
  2. 2025年9月20日反映の試験から、新章として「AIエージェント」「コンテキストエンジニアリング」を追加。出題範囲は7章・100問構成になった
  3. 2026年4月15日時点でユーザー登録数が1,000人を突破。検定名は開始当初から一貫して「Prompt Engineering Professional(PEP)検定」のままで、名称変更の事実は今回確認した3本のプレスリリースには記載がなかった

開始時点(2025年4月23日)の設計

JSPEのプレスリリースによると、PEP検定は「大規模言語モデル(LLM)を活用した業務効率向上や企業のDX推進を支援すること」を目的に開始された。試験はCBT(Computer-Based Testing)方式で、「全国47都道府県に340ヶ所以上あるテストセンターで受験可能」と明記されている。

シラバス(開始時点)は次の6分野で構成されていた。

  • 生成AIの基礎知識
  • 大規模言語モデル(LLM)の基礎理解
  • プロンプトエンジニアリングの基本概念と技術
  • 生成AIツールの効果的な活用法
  • 実務における生成AIの応用例
  • 生成AIモデルのカスタマイズ手法・倫理・リスク管理・法律上の考慮事項

代表理事は黒柳茂氏(早稲田大学理工学部卒、日本マイクロソフト・フェイスブックジャパンを経て2023年にJSPEを設立)。試験問題の作成・監修には、北海道大学大学院の川村秀憲教授(人工知能・マルチエージェントシステム研究)ら産学の専門家が関わったとされている。

2025年9月18日──「AIエージェント」「コンテキストエンジニアリング」を新章追加

開始から約5ヶ月後の2025年9月18日、JSPEは検定のアップデートを発表した。プレスリリースの見出しは「『Prompt Engineering Professional検定』に、『AIエージェント』と『コンテキストエンジニアリング』を新章追加」。要点は次の通り。

  • 試験切り替え日程: 2025年9月20日から新シラバスでの出題に切り替え
  • 新章の追加: 「AIエージェント」「コンテキストエンジニアリング」を新たな学習項目として追加
  • 新出題範囲: 1章からこの新設7章までを含めた範囲から100問を出題

プレスリリースは追加の背景について「AIエージェントの台頭や複雑なワークフローにおいては、コンテキスト(文脈)を踏まえたエンジニアリング能力が今後ますます重要になる」と説明している。これは、2025年前後から「プロンプトエンジニアリング」という言葉自体が「コンテキストエンジニアリング」というより広い概念に置き換わりつつあるという、業界全体の議論の流れと軌を一にした動きと言える。学習資料は無料で公開されており、誰でも閲覧できるとされている。

2026年4月15日時点──登録者1,000人突破

さらに約7ヶ月後の2026年4月16日付プレスリリースでは、2026年4月15日時点でPEP検定のユーザー登録数が1,000人を突破したと発表された。プレスリリースは対象者について「プログラミング経験の有無を問わず、営業、企画、事務、マネジメント、開発職など幅広い職種」と説明しており、個人受験だけでなく「団体受験、一括管理機能、ボリュームディスカウント」など法人向けメニューも用意されているとしている。

同リリースにはJSPEの活動実績として、月例オンラインセミナーの継続開催、ネットワーキングイベント「JSPE Community Nexus」(2025年12月4日、恵比寿で開催)なども紹介されている。

PR TIMESで確認できたJSPEの発表を時系列で並べる

冒頭で参照した3本のほかにも、JSPEのPR TIMESアカウントには関連する発表が複数あった。番号を遡って確認できた範囲を時系列に整理する。

日付 発表内容
2025年4月23日 PEP検定開始
2025年9月18日 「AIエージェント」「コンテキストエンジニアリング」新章追加(試験切替は9月20日)
2025年12月18日 『日経トレンディ』2026年1月号『生成AI最強プロンプト21』特集に代表理事・黒柳茂氏が個人として企画協力
2026年4月15日 『日経トレンディ』2026年5月号にPEP検定そのものが掲載/ユーザー登録数1,000人突破(同日付で2本)

日経トレンディ掲載の中身──前回確認できなかった号数が分かった

前回の調査では「日経トレンディ」というタグの存在は確認できたものの、具体的な掲載号・内容までは追えていなかった。今回、該当する2本のプレスリリースを個別に確認したところ、実は性質の異なる2回の掲載があったことが分かった。

1つ目は2025年12月18日付、『日経トレンディ』2026年1月号の特集「生成AI最強プロンプト21」。この回はPEP検定そのものではなく、代表理事の黒柳茂氏個人が、リサーチ・データ分析・アイデア出しといったビジネス活用向けプロンプト技法について、生成AIの有識者としてコンテンツを提供したという内容だった。

2つ目は2026年4月15日付、『日経トレンディ』2026年5月号。こちらは誌面の「AI・IT資格 難易度マップ」という企画の中で、PEP検定という資格そのものが「非エンジニアにも開かれている一方で、一定の専門性と実務性を備えた資格」として位置づけられたという内容だった。同リリースはPEP検定を「生成AIへの指示設計・評価・応用スキルを体系的に測定する、日本初のプロンプトエンジニアリング認定試験」と自称している(「日本初」の裏付けとなる比較調査の出典は同リリースには示されていない)。同リリースはまた、シラバスの倫理・リスク管理章の内容として、AIバイアス・プライバシー保護・透明性・ハルシネーション対策・セキュリティリスク・著作権・個人情報保護法といった論点が含まれることも明記している。

「名前を変えた」という話は確認できなかった

今回確認した3本のプレスリリース(2025年4月23日・2025年9月18日・2026年4月16日)を通じて、検定の正式名称は一貫して「Prompt Engineering Professional(PEP)検定」のままだった。組織名(JSPE=一般社団法人日本プロンプトエンジニアリング協会)についても、3本を通じて変化は見当たらなかった。もし「1年足らずで名前を変えた」という情報に触れた場合、それはPEP検定とは別の資格・別の団体の話である可能性がある(実際、PR TIMESの同キーワード検索結果には、別団体が運営する「生成系AI検定」など類似名称の資格が複数ヒットしており、これらとの混同には注意が必要だ)。

変わったのは検定名ではなくシラバスだった

  • 「検定の名称が変わった」という当初の想定は、本稿で確認した5本のプレスリリースの範囲では裏付けが取れなかった。変わったのはシラバス(出題範囲)であり、名称ではない
  • PEP検定の合格率・平均点・受験料といった数値は、今回確認したプレスリリース本文には記載がなく、本稿では扱っていない。運営団体の公式サイト(prompt.or.jp/prompt.or.jp/pep)にも直接アクセスを試みたが、いずれもJavaScriptで描画されるサイトのためcurlではページタイトル以外の本文が取得できず、料金・合格率のページが存在するかどうかも含めて確認できなかった
  • 「生成系AI検定」など類似名称の別資格・別団体との関係性(提携の有無、競合関係かどうか)は確認していない
  • 「日経トレンディ」への掲載については、2025年12月18日付(2026年1月号・代表理事個人の寄稿)と2026年4月15日付(2026年5月号・PEP検定自体の掲載)の2本を新たに確認し、号数・内容とも特定できた
  • 2026年5月号の掲載記事でPEP検定が「日本初のプロンプトエンジニアリング認定試験」と自称している点について、この主張を裏付ける比較調査・先行資格の有無の調査は、JSPE自身のプレスリリースにも本稿にもない

関連記事

シェア: ポスト はてブ

出典・参照資料

AIニュースの解説を動画でも

YouTubeでは注目ニュースの背景を解説し、Xでは新着記事をお知らせしています。

コメント

まだコメントはありません。最初のコメントを書いてみませんか?

AIについて聞きたいことはありますか?

質問箱で無料で受け付けています。回答は公開され、他の方の参考にもなります。

質問箱を見る →

新しい記事をメールで受け取る

AIの新しい発表を、出典付きで整理して届けます。

関連記事

LayerXが作った「GTMエンジニア」という仕事──営業組織にもエンジニアが要る時代の記事画像
業界09.05読了11

LayerXが作った「GTMエンジニア」という仕事──営業組織にもエンジニアが要る時代

出典 ─ 株式会社LayerX(Talentio)
「年収3000万円」のプロンプトエンジニアは今どこにいるのか──Anthropicの採用ページを2026年8月27日に確認したの記事画像
業界09.04読了13

「年収3000万円」のプロンプトエンジニアは今どこにいるのか──Anthropicの採用ページを2026年8月27日に確認した

出典 ─ Open Roles
Sierraの「Agent Strategist」──「去年はほぼ存在しなかった職種が、今は最も急成長中のチーム」の記事画像
業界09.03読了13

Sierraの「Agent Strategist」──「去年はほぼ存在しなかった職種が、今は最も急成長中のチーム」

出典 ─ Sierra Blog
Anthropic社内の『GTM Claudification』チーム──自社の営業をエージェント化する求人票を読むの記事画像
業界09.02読了14

Anthropic社内の『GTM Claudification』チーム──自社の営業をエージェント化する求人票を読む

出典 ─ Anthropic採用ページ「AI Engi
Sierraが業界ごとに『専任AIエージェント戦略職』を置く理由──求人票の実例プロジェクトから読むの記事画像
業界09.02読了14

Sierraが業界ごとに『専任AIエージェント戦略職』を置く理由──求人票の実例プロジェクトから読む

出典 ─ Strategist, Agent Deve
Sierra Agent Studioとは何か──求人票から見えた機能の中身の記事画像
業界09.01読了19

Sierra Agent Studioとは何か──求人票から見えた機能の中身

出典 ─ Product Manager, Agent
「人間を雇うな」と200万ドルの看板を出したAI営業スタートアップが、初めて人間を雇ったの記事画像
業界08.31読了14

「人間を雇うな」と200万ドルの看板を出したAI営業スタートアップが、初めて人間を雇った

出典 ─ Artisan公式ブログ(Jaspar Carmichael-Jack、2026年5月3日公開・2026年8月更新)
GPT-6 Astra公式ガイド「Using GPT-6 Astra」全体解説──癖5つと対処法11本、公式が「強く推奨」したのはプロンプトを足すことではないの記事画像
活用09.06読了33

GPT-6 Astra公式ガイド「Using GPT-6 Astra」全体解説──癖5つと対処法11本、公式が「強く推奨」したのはプロンプトを足すことではない

出典 ─ OpenAI Developers