Hawk-Eyeは今どこまでAI化したか──Sony傘下のスポーツ判定技術を公式情報で確認する
Hawk-Eyeはソニー傘下の英企業で、テニスの審判判定から始まり、サッカーのVAR・半自動オフサイド(SAOT)・MLBのStatcastまで25競技をカバーする。公式サイトの表現は「AI」ではなく「光学トラッキング」「SkeleTRACK」といった固有技術名が中心で、選手29点の骨格をリアルタイム追跡するSkeleTRACKは2018年開始以来3万2,000試合以上で使われている。

目次
テニスの「アウト」「イン」判定でおなじみのHawk-Eyeは、いまやサッカーのVAR・半自動オフサイド、MLBのStatcast、NHLの判定支援まで手がける、スポーツ判定・トラッキング技術の総合プロバイダーになっている。運営会社Hawk-Eye Innovations Ltd.はソニーの子会社で、公式サイトのフッターには「Sony Business Europe」「a Sony Company」の表記がある。
3行まとめ
- Hawk-Eyeは公式サイト記載で25競技・100以上の国・10万件以上のイベント日数の実績を持つ、ソニー子会社のスポーツ判定・トラッキング技術プロバイダー
- 選手29点の骨格をリアルタイム追跡する「SkeleTRACK」は2018年開始以来、5競技・32,000試合以上に導入。半自動オフサイド技術「SAOT」は900試合以上の実績があるとされる
- 公式サイトのトップページ・Officiatingページの本文には「AI」「artificial intelligence」「machine learning」という表記が見当たらず、代わりにSkeleTRACK・SAOTといった固有技術名で語られている
どこまで広がっているか
公式トップページによると、Hawk-Eyeは25競技をカバーし、100以上の国で10万件以上のイベント日数の実績があるという。提携先として名前が挙がっているのはPremier League・MLB・NFL・PGA・NHL・NBA・Manchester City・Wimbledon・World Rugby・La Liga・Serie A・MLS・FIFA・ICC・FIVB・UEFA・WTAなど。
競技別の実績数字(公式サイト記載)
| 競技 | 実績(公式サイト記載) |
|---|---|
| サッカー | 95カ国以上、400シーズン以上、400スタジアム以上、年間45,000試合以上 |
| テニス | 2005年開始、コート450以上、大会100以上、10,000コート日以上 |
| ラグビー | 10年以上、25カ国以上、年間1,800試合以上、2015年以降の全ワールドカップをカバー |
| バスケットボール | 2016年開始、10カ国、48チーム、年間1,500試合以上 |
| クリケット | 2001年開始、15カ国、年間1,000試合日以上 |
| アイスホッケー | NHLで2016年以降利用、姉妹会社Beyond Sportsによるリアルタイム3D再現も提供 |
| アメリカンフットボール | NFLで2021年導入、国内外全試合をカバー |
| 野球 | MLBのビデオリプレイを2014年から、Statcastのボール・選手・バット追跡データを2019年から提供。MLB30球場・マイナー60球場以上・ドミニカ共和国のバックフィールド25拠点 |
「AI」ではなく固有の技術名で語られている
公式サイトの本文を実際に確認すると、興味深いのは「AI」という単語がほとんど使われていない点だ。トップページ・Officiatingページの本文中に「artificial intelligence」「machine learning」「AI」という表記は見当たらなかった。代わりに使われているのは次のような固有技術名だ。
- SkeleTRACK: 各選手29点の骨格をリアルタイムで追跡する技術。2018年に開始され、サッカー・野球・バスケットボール・アメリカンフットボール・アイスホッケーの5競技で32,000試合以上に導入されてきたと明記されている
- SAOT(Semi-Automated Offside Tech): SkeleTRACKを基盤にした半自動オフサイド技術。世界最大級のリーグ・連盟で使われ、900試合以上での実績があるとされる
- VIDEO REPLAY / TRACK / INSIGHT: 3つのコア技術として、複数アングルのリプレイ・光学トラッキングとカメラキャリブレーション・データの集約と可視化、を挙げている
サッカーのVAR・クリケットのDRS(Decision Review System)はいずれも「SMART Video Review」という同期型ビデオレビューシステムの実装として説明されている。
ただし、これは「トップページ・Officiatingページに限った話」だという点は訂正しておく必要がある。公式サイトのニュース一覧(hawkeyeinnovations.com/news)をcurlで確認すると、2026年6月2日付の記事タイトルはずばり「AI in Sports and Performance Analysis: HawkAI and the Future of Predictive Technology」で、本文には「HawkAI」という、AIを冠したプロダクト名が明記されている。記事によれば、HawkAI責任者のLeigh Maxwell氏が2026年4月にラスベガスのPEAK Conferenceで基調講演し、リアルタイムのデータトラッキングと予測分析を組み合わせたHawkAIの機能を実演した。挙げられている機能は「Predictive Tactical Modeling(オフボールの選手を動かして代替シナリオの結果を予測・可視化)」「Coaching and Performance(プレー分析・戦略の試行・選手の動きのリアルタイム可視化)」「3D Virtual Recreations(生データを3D映像化し放送で使う)」の3つ。つまり判定技術(Officiating)の文脈では「AI」という語を避けている一方、パフォーマンス分析・放送向けの新プロダクトでは「AI」を前面に出したブランディングをしている、という使い分けが実際にはある。
Sony傘下の「スポーツ事業群」の一部
Officiatingページのフッターには、Hawk-Eyeが単独の子会社ではなく、Sonyの複数のスポーツ関連事業の1つであることを示す記載がある。同じフッターに並ぶ関連会社として「pulselive」「beyond-sports」「kinatrax」が挙げられている。本文中でも触れられているが、アイスホッケーのリアルタイム3D再現は姉妹会社Beyond Sportsが担当しており、Hawk-Eye単体ではなく、Sonyのスポーツテクノロジー事業群全体で機能を分担している構図が読み取れる。拠点はイギリス・ベイジングストーク(本社)、米国アトランタ、オーストラリア・メルボルンの3箇所が公式サイトに記載されている。
最近の動き(2026年7月時点)
公式サイトの「Latest News」欄で確認できた最近の発表は次の通り。
- クロアチアサッカー連盟とのVAR技術5年契約(2026年7月6日)
- Ekstraklasa(ポーランド1部リーグ)とLive Parkが、Hawk-Eye Innovationsのテクノロジー導入を選択(2026年7月20日)
- HawkAR「Inclusive Feed」でテニスのアクセシビリティを再定義(2026年7月31日)
ニュース一覧をさかのぼると、他にも2026年4月27日付でBen Crossing氏がCEOに就任したという発表、同年4月22日付で国連の「Sports for Climate Action Framework」への参加表明、同年5月13日付でSEC(大学スポーツカンファレンス)が2026年の野球トーナメントでABS(自動ボール・ストライク判定)チャレンジシステムの導入にHawk-Eyeを選定したという発表も確認できた。ABS Challenge Systemは、審判の判定に対して選手側が即座にHawk-Eyeの追跡データで異議を申し立てられる仕組みで、判定支援の実運用がテニス・サッカー以外の競技にも広がっていることがうかがえる。
公式サイトは『AI』という言葉をほとんど使っていない
- 本記事はHawk-Eye公式サイトのトップページ・Officiatingページ・News欄の記載に基づいている。SkeleTRACKやSAOT、HawkAIの内部でそれぞれどの程度「機械学習」的な手法が使われているかという技術的な内訳(アルゴリズムの種類、学習データの中身など)は、公式サイトの一般向けページには記載がなく確認できなかった
- 判定(Officiating)関連のページでは「AI」という言葉がほとんど使われていない一方、パフォーマンス分析・放送向けの新プロダクト「HawkAI」ではAIを前面に出している。この使い分けが意図的なブランディング戦略なのか、単に部門ごとにライターが違うだけなのかは、公式サイトの記載からは判断できない
- 各競技の実績数字(試合数・国数など)は公式サイトの自己申告であり、第三者による検証は行っていない
- HawkAIが実際にどのプロリーグ・チームで採用されているか(デモの実演止まりか、本番導入例があるか)は、今回確認したニュース記事の範囲では明記されておらず、確認できていない
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